ご都合主義は突然に
なろうで投稿してみたくて書いてみました!
短い駄文ですが読んで頂けたら嬉しいです!
「許して!イザベラお姉様!」
「…は?」
唐突に許しを請われるイザベラは混乱した。
目の前にいる男爵令嬢のカロリーナとは何の接点もないと言うのに。
「私達は、愛し合ってしまったの…」
「…ああ」
その一言でイザベラは思い出していた。
婚約者であるあのバカ王子の事を。
かねてより婚約が決まっていたイザベラは世の中の道理はそういう物だと思っていた。
年端もいかぬ赤子の頃から顔も見知らぬ相手との婚姻は決まる。
若い女性にしては珍しく特に恋愛や結婚に対して夢を持ち合わせていなかったイザベラは些かドライ過ぎる程にその現実を受け入れていた。
ただ婚姻相手が我が身を滅ぼすような馬鹿でなければいいと。
そんな最低限の条件だけを相手に求めていた。
が、相手は予想に反して大バカ者の王子だった。
「カロリーナさえいれば、僕はもう、何もいらない!」
そう婚約者のイザベラの前で声高に宣言したのはバカ王子ことアレクサンドルだった。
カロリーナの膝の上でごろにゃんと甘える様はもはや王子としての威厳を捨てていた。
イザベラは扇で顔を覆いつつ呆れた様子でアレクサンドルを見下ろす。
「…婚約者のいる前で、そのような振る舞いは如何かと存じます…」
「なら愛妾にすればいいと言うのか?!カロリーナと僕は純愛だぞ?!」
「だから…そうではなく…」
何を言った所で無駄だとイザベラは察した。
このバカ王子には国の存続ではなく目の前のカロリーナとの愛欲しか見えない。
早々に彼に見切りをつけたイザベラは公爵家の父に王子との婚姻は荷が重いと辞退する相談をした。
幸いな事に王子との婚約を希望する者はいくらでもおりまた王子側もイザベラとの婚姻を断ってきた為にその縁談は破談となるのだった。
しかし王子との婚約破棄をしたイザベラは皆から傷ものと揶揄される事となる。
「いっそ、気楽でいいわ」
「…それは…結構な事ですね」
自宅の庭で休んでいると茂みから何者かが現れた。
「貴方は、誰?」
お父様の客人かしら?イザベラが一人ごちそう思うと男は失礼にも名を名乗らずこう発言する。
「傷ものになったご令嬢を見に来ました」
「なっ…!」
「あの有名な王子とのご婚約を破棄されたそうですね」
アレクサンドルは婚約者のイザベラに目もくれずとある男爵令嬢にご執心と噂の的だった。
巷では彼が王位を継承する事を疑問視する者もおり比較的まともな第二王子を支持する勢力との対立も話題の種となっている。
「噂に違わずお美しい」
そう言うと男は恭しくイザベラの手の甲にキスをした。
彼女が目を丸くしていると
「理知的で先見の明がある、貴女のような女性を捨てるなんて…愚かな男だ」
男はイザベラの手を握りそう話す。
「お気持ちは嬉しいですけど…貴方はどなた…?」
「私はエティエンヌと申します、貴女と懇意にして頂いてる公爵家の男ですよ」
(あの眉目秀麗で風変わりと噂のエティエンヌ様…?)
「近いうちにまた会う事もございましょう…それでは、失礼。イザベラ様」
次に行われたサロンで彼に遭遇したイザベラはエティエンヌから絶え間ないアプローチを受けていたのだった。