♦ 壊れそうなセカイー龍と勇者ー
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お立ち寄りくださりありがとうございます。
こちらの作品集は菜乃がせっせと?笑
考えて作ったプロンプトにより生成したAIイラストを物語の挿絵に使用しています(=´▽`=)
※AIイラストの苦手な方はお気を付けください。
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「なぁ」
「ん?」
――この時、無意識に自分の行く末を察していたのかもしれない。
「あの暗い雲の下と、綺麗な湖の間に行ってみたい、とか思ってさ」
「へぇ……って、いや。行けるわけないだろ。空を飛べるわけじゃあるまいし」
「あぁ、だよな」
ハハッと笑う姿を変な奴だと冷めた目で見た仲間は、ふと空を見上げる。
その視線を追うと、湖の上にかかる雲の裂け目から、まっすぐに伸びる暗雲の帯が見えた。
――『死を呼ぶ漆黒の龍』……か。
「さーて、今日の依頼完了だ。雲行きも怪しくなってきたし、そろそろ帰るぞ」
「悪い、ちょっと寄るとこがあるから、先に帰っていてくれないか」
「寄るって……この辺りで、か?」
背中に、ジッと睨まれ怪しまれる鋭い視線を感じ負けそうになりながらも平常心を装い、いつもの声と明るい笑顔で応えた。
「大丈夫だって。日が暮れるまでには帰る」
「……分かった。気をつけろよ」
「サンキュ。また後で――」
最期に握手をした手は、自然と互いに強く握りしめていた。そして一番信頼する大切な仲間は、街が心配なのだろう……足早にこの場を去ってゆく。
(そうだ。もっとずっと、遠くまで行ってくれ)
これまで共に笑い命を懸け戦い、過ごしてきた大切な仲間たちへ向けた感謝の気持ちを、この一言に込め小さな声で呟いた。
「ありがとう。信じてくれて」
以前はわいわいと賑やかに、八人いた最高の仲間たちも、今や戦えるのは二人きり。
細めた苦渋の瞳で見つめる先には、いつだって頼りにしてきたその後ろ姿。それを見えなくなるまで目を離すことなく、その間は身体の中心に意識を集中させた。
(皆と一緒に乗り越えてきた日々が、糧となり、力となる)
しばらくすると、予感通り空は薄暗く重苦しい雰囲気が漂い始める。
広く深い空は今にも泣きだしそうな闇色へと変わっていき、その光景を皮切りに、溜めていた力を全力で発動させた。
(皆の無事を、未来の安寧を、心から願う)
「さようなら……皆」
この世界すべての人々を……とはいかないが、この戦いで犠牲を出すことだけは回避したい。そのために、空間転移するためのカード(魔法)と力を残し、取っておいたのだから。
“ヒュオオオォォォー……!!”
「頼む。あともう少しだけ……」
(焦るな、大丈夫だ。間に合う、必ず上手くいく)
当然、刻む時は止められず、待ってなどくれない。その思いは届くことなく、遠い大空から聞こえてくる、突風と翼の羽ばたく音にかき消されるようだ。次第に近付く音、視界に捉えた姿で、ついにその時がきたのだと解った。
準備は万全、魔法展開は考えていたとおり成功した、皆の空間転移も間もなく完了するはずだ。
「あとは」
“ゴゴオオォォォッ! ドォォーン!!”
(来た)
巻き上げられる砂埃から身を守るように、腕を盾にすると目を瞑った。それでも、龍から発せられるギラギラとした黒い輝きは、まぶた越しに伝わってくる。
『キュィィィイグワァァーーーーッ!!』
「ぅクッ……」
(すごい鳴き声だ。耳が引きちぎられるくらいに痛い)
間違いなく、あれは夢で見た――。
「漆黒の……死を呼ぶ、龍」
その声と突風が吹いた瞬間、目の前に現れた大きな龍は、震えるほどに美しい瞳と、恐怖心を掻き立てるような輝きを放つ。気配か、それとも人の匂いか? 自分の存在はすぐに気付かれた。
『グォウン? ナンダ、オマエ』
「ただの人間だ」
『ギャアゥオォォ……闇ガ来ル、オマエ、逃ゲナイノカ?』
「逃げるだって? ハハ……逃げるわけがないだろ」
――圧倒される……あまりにも。
(何を弱気になっている。命に代えても、この世界を護るんだろう?)
その完璧とも言える龍の姿に、一瞬だが怯みそうになった自分を心の中で強く戒める。龍にではなく、そんな自分に負けてはいけないと。
『ニンゲン、コノセカイ、我ガ消ス』
知っている。
この世があまりにも汚染されていること、それが原因で現れた。
(自分たちの世に、原因がある。それは重々理解している)
――それでも。
「悪いが、そうはさせない」
(たとえ、この世界の大半が腐っているとしても)
“シュン――――キィィン”
『グォォウ……聖剣……オマエ、勇者カ? ココマデ救エナイセカイハ、破滅ダ……滅ビル』
「何者だろうが関係ない。ただ大切な人たちが生きるこの世界を護りたい。まだ、可能性はある」
『オマエノ命、消エルダケ』
「望むところだ」
しばしの沈黙が訪れる。
その時間、一番に思い出したのは、故郷にいる妹のこと。
(もう、何年も会っていない……無事に、元気にしているだろうか)
「だが二度と、帰れそうにない」
そうだ、自分はどうなっても構わない。
しかし愛する者たちを……妹がどうかいつまでもあの太陽のような笑顔で日々を幸せに生きられるようにと、そう思う。
――『お兄様! これを』
――『御守りです。無事に帰ってきてくださいね』
(そう、必ず帰ると約束した……それが今、唯一の心残りだろうか)
妹からもらった蒼色に輝く石の付いたペンダントを、ギュッと握りしめる。そして心の奥で、本当は傍でずっと妹を見守り続けたかったと目を瞑った。
諦めた再会に決心がつき、フッと笑いが出てしまう。その様子を見てのことか、龍は不思議そうに笑んだ心理を聞いてきた。
『オマエ……怖クナイノカ? オワリノ見エタ、コノセカイ二、ナニガアル?』
「あぁ、確かに。今は何もないかもしれない……でもな」
(まだこの世界には、復活の希望が)
「明るい未来が――ッ!」
――我が聖剣よ、此処へ力を示せ。
“キラ――――ッ!!”
『キュィィイグワァーーッ!!』
答えた言葉が気に入らなかったのか、はたまた聖剣の光が嫌だったのか。龍は再び耳を刺すような鳴き声を聞かせ、漆黒からじわりじわりと色を変えてゆく。その光景を瞬きひとつせずに見つめ、聖剣を構えたこの手には緊張でにじむ汗。敵う相手ではないと理解するには十分過ぎる威圧感だった。
(クッ! ここで、このぐらいで負けるわけにはいかない)
一度落ち着くために深呼吸をする。
ゆっくりと瞬きをし、決意の眼光を空へ向けた瞬間――手に持っていた聖なる剣から力が溢れ出し、『ポゥ』と優しく柔らかな光を帯びて煌めき始めた。
(――!?)
「なッ……剣が……どういうこと、だ」
ハッとし空を見上げると、目の前に現れていた龍は漆黒ではなくなり、その色を変化させている。姿を変えた龍からは、先ほどまでの敵意や威圧感は微塵も感じられなかった。
『オマエノ持ツ、嘘偽リナキ心、ソノ身ニ、誓エ。我ノチカラヲ、貸シテヤロウ』
「まさか――(この龍は!?)」
『ドウスル? ヒトノ子ヨ』
初め見た瞬間――あの『死を呼ぶ漆黒の龍』だと、疑わなかった。
「……光?」
だが、その真は信じられないことに。
『我トノ共生、ソノ身ヲ以テ、セカイハ救エヨウ』
自分の故郷に残る伝説。古き書物に記され、描かれていた――『光色の飛龍』の姿、そのものだった。
✻ ♦ ✻
人の闇なる心からそれは始まり、やがて不可思議なモノを生み出し世の中が蝕まれていく。
そんな中、いつかの平和な歴史に想いを馳せる八人の勇敢な人々が未来を繋ぐために立ち上がった。だが、突破口を見いだせずに戦い続け、次第に力尽きてゆく仲間たち。残った戦える者は二人となる。
依頼を受け向かった先の戦いで聖剣を手にした日から、主人公である勇者は夢を見るようになった。
――『死を呼ぶ漆黒の龍』の、夢を。
そうか、この世界はもうすぐ終わろうとしているんだと悟った勇者は、それでも自分の力でなんとか破滅を食い止める方法はないかと模索し、命に代えても世界を守るとの誓いを心に刻む。
そしてついに、自分にしか使えない聖なる魔法があることを見つける。
絶対に家族や仲間を死なせない。
その思いから一人で――『死を呼ぶ漆黒の龍』へと立ち向かおうと決意するが、しかし……驚くことに、真の姿へと変化し現れたのは、世界修復の助けとなるやもしれぬ龍――『光色の飛龍』であったのだ。
果たして、人間自身が壊していった世を、立て直すための力を持てるか。そして突如、姿を現した光色の飛龍に、勇者の抱く世界への愛と精一杯の誠意や想いは伝わるのか。
――――力を貸す。
そう告げ勇者へ手を差し伸べた龍の思惑と、その代償とは……。
To be continued...?
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と、まぁ(*´▽`*)
こんな感じで、描いています。
未完結の一話読み切りですが……
楽しんでいただければ幸いです♪
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お読みくださりありがとうございましたぁ
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