最初の命令です!
「アレンはその溢れんばかりの力を生かせる王国武術防衛協会。ルシウスはその知識を生かせる王国教育自治協会。ルナードはその人当たりの良さを生かして各地を回る王国支援協会。マーリンはその素晴らしい世界観を存分に作れるように王国芸術協会。そしてユーリは王国農牧協会。それぞれの教会に所属し1年はもちろん、他の同期と同じく新人教育を受けること。」
私の言葉にいちいち、え?とかあ?!とか声を上げる王子たち。
うるせぇ、私だって好きでお前らを配下に置くわけじゃないわい!
これは私なりの防衛。
『ファンタジア』のエンディングは、主人公が選んだ国王以外の王子は、『王子』の役職を失って一旦ただの国民になってしまう。
つまり私が国王になった場合も例外ではなく、5人全員が国民になる。
私の目的は〈レイチェルを幸せにすること〉。
そのせいで彼らが必要以上に不幸になったら後味悪いし……
レイチェルを幸せにしたくてこんなことしてんのに、復讐なんかされてレイチェルに何かされたら元も子もない。
だから私はこのゲームの設定を利用することにした。
せっかくオタクなんだから知ってる情報は全部使わなきゃね!
『ファンタジア』は簡単に言うと、1週間の間に5回王子に国王の仕事をお試しでさせて、その達成数=好感度になるシステムだ。
キャラクターごとにそのノルマが最初の週は1ずつだが、毎週増えていき、最終週は5回全部を1人の王子にやらせることになる。
つまりその最後に仕事を全て任せた王子が最終攻略対象。
その5人の全員のルートを攻略するといわゆるハーレムルート……つまり全員で国を納めるという一妻多夫エンドが解放される。
さっき見た感じだと王子達のレイチェルへの好感度は同等。
つまり、一妻多夫エンド手前状態なのだ。
だから彼らがレイチェルに仇なすことは恐らくないと思うけど、今私の選択はハーレムエンドの時とは真逆のことをしてるわけで。
だから万が一のことを考えて、できるだけ平和に収まるように手を打った。
それが、個人ルートを攻略した際、残りのキャラクターが後に与えられる役職に無理やりすぐにつかせること。
さっき彼らに命じたのがまさにそれで、公式曰く本人が王子でなかったならなりたいと望んでいた、実は王子より向いている天職なんだとか。
だからこれを命じられて面食らってはいるし最初は嫌がる素振りはするが、後には幸せに暮らせる。
公式の攻略本に書いてたからこれは間違いない。
ついでに家庭教師にして帝王学やら何やら教えて貰えたらこっちのもんよ!
我ながらよく思いついた。
この作戦で私はレイチェルを守る。
レイチェルを、絶対にこのクソ男共から守ってやる。
レイチェルは私の嫁だ。
いや、私がレイチェルで、レイチェルが私なんだけども。
いやでもレイチェルの体に私がいるんだし、2人でひとつで生きてくんだから、もうこれは実質結婚だもん(?)
「よって、これより私、レイチェル・テイラーが国王としてこの国を治めることにいたしたします!」
私の声に国民は大喜び。大歓声を上げて、国王レイチェルの誕生を称えてくれる。
こうして私の新ルート……〈主人公独身(中の人と結婚)ルート〉がスタートしたのだった!