どうする?国王発表!
召使いに言われた通り王子たちがゾロゾロ歩き出す。
待って、ほんとに無理。
オレサマ、皮肉屋、女ったらし、宇宙人、腹黒。
そんな五人の中から……レイチェルを託せる相手を選べと………?
(無理無理無理!!!ぜっっったいに無理!!!!!誰にもレイチェルは任せらんない!!!!!)
頭をぶんぶんとヘドバンの如く振り乱して必死に頭を働かせる。
周りの目は痛いけどそんなこと知ったこっちゃねぇ。
どうにかしてレイチェルを、推しを救わなくては!
いやいくらレイチェルっていっても結局お前なんだからーお前の好きな男選べば良くないー?って声が聞こえる気がするけど黙れーい!
そんな簡単な話じゃないのよこれは!!
「王妃様、扉を開けます。」
まずい、もう時間だ。
バルコニーに出なきゃ。
一刻、一刻と選択の時は迫る。
国民の割れんばかりの歓声が私を迎える。
「皆の者、今日は待ちに待った国王発表の日である!」
ひぃぃ、やばいよ、なんか始まりの言葉みたいなの大臣みたいな人が言い始めちゃった!!
え、これ終わったら私、言わなきゃいけないの?
新しい国王……選ばなきゃいけない………?
(どうしよう、せめて一番マシな奴を………いやダメだ1番マシも何も全員が全員ヤベェやつなんだった!!!)
考えろ、考えろ。
どうにかしないと推しが、レイチェルの人生がめちゃくちゃになる。
いや今は私が成り代わってるからある意味私なんだけど……そんなことどうだって良い!
だって、よく考えて見てほしい。
そんなこと言ったら全ての乙女ゲーム、主人公にプレイヤーが成り代わってるようなもんだろがい!
第一ゲーム側の用意した主人公の考え(選択肢)を2個か3個の中から選んだ程度で、それがプレイヤー自身で掴み取った未来!自分の人生!なぁんて勘違いする方が愚か者よ!
我々プレイヤーは主人公の体をお借りして、その人生を疑似体験してるに過ぎない……
プレイヤーの選択も、結局は主人公が迷ったうちの選択の1つ。
プレイヤーの選んだ人生は、結局のところ主人公の人生でしかないのだ!!
しかもレイチェルは私の推しぞ?
私にとってはこれ、推しの人生ぞ?!
いくら中身が私でもこれは!!推しの!!人生!!!
オタクが自分の意見通してまで、推しを不幸にする訳ないじゃろがい!!
確かに中身は私だけど、でもこれからも見た目はレイチェルなわけで。
私の好きなレイチェルの人生に関わる選択権を、今、私が持ってるってことはゲームと変わりない。
推しの、大好きなレイチェルとして生きるなら、出来るだけ素晴らしい、レイチェルにふさわしい人生にしてあげたいって思うのがオタク心ってもの。
優しくて可愛くてかっこいい……大好きな推しが毎日笑えるような、幸せだと思えるような人生を選択することが今の私に、オタクの私に出来る唯一のこと。
だから考えなきゃ。
考え抜かなきゃ。
推しは、レイチェルは。
どうしたら幸せなのかを!
「繰り返すが、『王妃が選んだ者が次の国王』……そう神託が出ておる。王妃の決定が絶対であると心せよ。……では王妃様、新国王の発表を!」
やばい、やばいやばい。
国民の大きな拍手が聞こえる。
バルコニーの手すりまで出ると、お城の庭に集まった国民たちの姿がよく見えた。
みんな誰が次の国王か、期待に満ちた目で私を見ている。
どうしよう、どうしよう………
「さあ、王妃様。何を躊躇うのです。誰もあなたの決定に意義を唱える者はおりません。さあ、安心して新国王の発表を!!」
押し黙る私に大臣さんが急かすように声をかけてくる。
振り向くと5人のキラキラ顔面クソ野郎どもも私を見つめてきている。
やめて、そんな見ないで今必死に考えてるんだから!
早く、早く考えなくちゃ。
何とかしてレイチェルを……私の推しを守らなくちゃ!
あのオオカミ共から国王、つまりはレイチェルの夫なんか選んでたまるか。
あんな奴らにやるぐらいなら………私が結婚する!!!
「……あ。」
そこで私の脳裏に最高のアイディアが閃いた。
そうだ、簡単なことじゃないか。
『王妃』の選んだ者が『自動的』に、『次の国王』になる。
国王決定に関して『王妃』の言う事に意義を唱えるものは『絶対いない』。
そうだ、王子の中に国王に……レイチェルの夫に相応しい者がいないなら。
結婚、などしなければいいのだ。
「………新国王は」
私は覚悟を決め、まっすぐ前を見た。
「新国王は、レイチェル・テイラー。この私です!!」