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プロローグ

田舎道の夜というのは不思議なもので。

本当にだーれもいない。

聞こえるのは虫の声とたまーに犬と猫の鳴き声のみ。


いやぁ、平和平和。

平和すぎておかしくなりそー。


家から1番近いコンビニ……と言っても徒歩30分かかる所。

その長ーい距離をか弱い乙女……っていっても、まあもうすぐアラサーニートなんですけど?とにかく、1人で歩くなんて危ないこと極まりない!


なので私はイヤフォンも無しに、大好きなゲームのテーマソングをガンガンにながら家路についている。


違うから。これは防犯ブザー的な役割であって、布教活動とかでは断じてないです、はい。


音楽だけでも暇なので、スマホアプリで新しいWeb漫画がないか歩きながらチェックする。


歩きスマホやめろって言う人いると思うから言っとくね?

うるせぇ黙れ。


田舎だからぶつかる相手もいねぇんじゃボケ。


「んー、いーのないなぁ」


いくらスクロールしても興味を引かれるタイトルがない。


【○○したら転生しちゃいました!】

【転生したら○○だった!】

【○度目の転生で○○する!】


まあ、エトセトラ………


画面をスクロールする度必ず1度は目にする、この、最近お決まりのタイトルと設定。


にしても最近多すぎやしねぇか?!


よくある話過ぎてつまんないの。

もっと面白いストーリーは無いわけ?


夜の田舎道を歩きながら溜息を着く。


ニート歴早3年。

いい加減親のスネかじりにも限界が来た。


ゲームとWeb漫画三昧の日々にもだいぶ飽きてきたしなぁ。


「……でも。」


手に抱えている、ド派手な……見るからにゲームのグッズだとわかるエコバッグ。

そこから除くラストワンの紙が貼られた大きな箱に思わずニンマリする。


「君だけは別だよおおぉレイチェルぅぅう♡ぜーーーーったい飽きないからねぇぇえ♡♡」


袋を抱きしめて夜道をクルクル、ダンスでも踊るように回りながら歩く。


気づけばそこは道路の真ん中。

そしてタイミングよく……私にとっては悪く………車のライトとクラクションが響いた。


あ、終わった。

私の人生終了。


なーんてつまらない人生。

よくある幕引き。

最悪ですわ。


うわぁよくある話だけど星空めっちゃ綺麗ー。

あと、死ぬ直前って本当にスローモーションなのね。


普段よりのんびりなスピードで地面にたたきつけられた私の目に映ったのは、同じくのんびりスピードで袋から飛び出した最推し……『レイチェル』のフィギュアと、割れてひかるスマホ画面に浮かぶ『転生モノ』のWeb漫画。


いつもなら絶対見えない細かいものまで見えるなんて、人間の最後の力って凄いのねぇ。


(これが『よくある話』、なら。目を覚ましたらどこかに転生してるのかなぁ。)


ぼんやりとした頭で、なんでか私は絶望一つせずそんなことを考えた。


(悪役令嬢はやだなぁ。便利じゃない時代もやだし……そうだ、どうせなら。好きなゲームのモブとかになりたいな。レイチェルと同じ空気とか吸えたら………最、高………)


遠くなる意識の中。

本来なら闇しか見えないはずの閉じたまぶたの裏に……真っ白な光が拡がっていく感覚がして。


何故かそこに、最推しの姿が見えた気がした。

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