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番外編1 休暇の準備

後ほど番外編2を投稿する予定ですが、そちらにはほんの少しだけ百合表現がありますので苦手な方はご注意下さい。

番外編1~2については見ずとも本編に影響は無いと思いますので、どうしてもという方はブラウザバックを推奨します。

 僕とアカリさんの戦いが終わった日、寮に帰ってから遊びに出かける予定を立てていた。普段あまり出かける事が出来ないアイの希望を叶える形で予定を立てているけど、アカリさんの要望もところどころに入ってくる。僕はあまり要望が無いというか、まだこの世界の観光とかそういった事に詳しくないので基本お任せだ。


「今遊ぶのも良いけど、どうせなら次の長期休暇に向けた準備とかしておかない?」


「次の長期休暇って言うと夏ですよね?」


 この世界の学校にも夏季休暇という概念は存在しているので、確かに今のうちから予定を立てておくのは有りかもしれない。アイの研究所に長期休暇が有るかどうかは分からないけど、事前に計画しておけば休みを取るのも難しく無いはずだ。


「海に行くにも山に行くにも、色々と準備が必要でしょ?今のうちから道具を揃えたり、計画を立てておこうよ」


「山だったらキャンプ道具、海だったら水着とかですか?それも良いですね」


「あ、でもユウリは大丈夫?私達は平気だけど、長期休暇に家族との予定とか有ったりしない?」


 そういえばそうだった。家族への連絡も全くしてない訳じゃないけど、密にしているというほどでも無い。これまで長期休暇で家族旅行という事はしていなかったけど、今は補助金も出ているし学費も掛かっていないので、どこかに出かける計画を立てていてもおかしくない。


「先に確認しておきますね」


「うん。まぁ水着とかなら別に海に行かなくても使い道はあるし、長期休暇とか関係なしに買いに行ってもいいけどね」


 アカリさんの言うこともごもっともだけど、僕としても折角なら2人と一緒にお出かけしたい。ただ1人は社会人ではあるけれど全員未成年だ。その点も含めて、きちんと両親には話しておいた方が良い。


「保護者が必要なら私からシイナに頼むから、その辺の話もして大丈夫だよ」


「うん、ありがとう」


 僕は両親に休暇の予定についてメッセージを入れる。時間的にもまだ仕事中なのは分かっているので、向こうから折り返し連絡をしてもらうようにお願いしておいた。


「とりあえずユウリの予定が分かるまで話は保留ね。その間に……シイナが何者なのか聞かせてもらっても良い?」


 アカリさんは既にシイナさんの事を呼び捨てにしている。むこうもそうして欲しいと言っていたし、アイもそう呼んでいるので構わないんだろうけど、僕としてはもう少しだけ時間が欲しい所だ。


「警戒するのも分かるけど、シイナは本当に良い人よ。私が保証する」


「それは勿論アイの事も信じてるし、実際に話した感じでシイナが悪い人じゃないっていうのは分かってる。そういう事じゃなくて、何であんなに戦闘慣れしてる人が普通の官僚みたいなポジションに居るのかなって」


「それは僕も思ってた。元々軍人だったのかなとか思ったけど、そんなキャリアがある年齢にも見えなかったし」


 流石にアカリさんは、そういう事に関しての嗅覚というか察知能力が凄い。でもアイはとぼける様子は無いけど、歯切れのよい返事はしてくれなかった。


「私にはその戦闘慣れしてる様に見えるっていうのがよく分かんないんだけど、確かに強いよ。魔法だって多分私と同等以上に使いこなせるし、まだ見たことは無いけど多分接近戦も出来る筈」


「ふーん……まぁその辺は仲良くなってから少しずつ聞いていけば良いか。戦うタイミングとかあれば良いんだけど」


「そんな機会あるんですかね?あ、連絡来ました。お出かけもオッケーみたいです。でもどこかで1回は帰省しておきたいですね」


「その辺の日程はおいおい決めて行こう。後は海に行くか山に行くか、それとももっと違う事をする?」


「アカリさん、思ったんですけど海はまずくないですか?アイを連れて行ったら、絶対ナンパされますよ。なにせこの身体ですし」


 僕とアカリさんの視線がアイの身体に突き刺さり、アイは思わず両手で身体を隠している。いくら隠した所で、僕たちは何度も拝んでいるので意味は無い。


「偽装魔法があるから大丈夫だよ!」


「それもそっか……というか、どっちにしろ偽装するなら水着を買う必要も無いのでは?」


「いや、偽装した所でアイの可愛さは変わらない。ユウリも一緒にナンパされると、あたしが我慢出来ないから山にしよう」


 流石に僕みたいなちんちくりんをナンパするようなやつが海にいるとは思えないし、僕よりも2人の方が可能性は高い。勝手なイメージだけど、海よりは山の方がそういう軽い人が少ない気がするので、山でキャンプする事に決めた。


 という訳で、自動的に明日の予定も道具探しの為の買い物をする事になる。実際に今すぐ買うかは別として、値段やサイズ感などは確かめておいた方が良い。


「それじゃあちょっと遠出になるけど、そこのモールよりもっと大きい所に行ったほうが良いね」


「それなら私が住んでる所の近くに良い場所があるの。ついでに明日はうちに泊まっていったら丁度良いんじゃない?」


「いいね。アイの部屋も見てみたいし」


「あ、ちょっと恥ずかしいな……ちゃんと片付けて来たっけな?」


「普段皆して僕の部屋に押しかけてくるのに、アイだけ逃げようとか思わないでね」





「うわーすっごい広い」


「ユウリ、迷子にならないようにね」


 翌日僕たちは、アイが住んでいる場所の近くにあるショッピングモールに来ていた。寮からはアイがタクシーという名の護送車を手配してくれたので、僕たちも相乗りさせてもらってきた。帰りは電車を乗り継ぐことになるけど、この世界ではまだ乗ったことが無いのでそれも1つの社会勉強になる。


「やっぱり都会は広いね」


「この周辺は特にそうね。研究所の近くっていうこともあって、最新の技術とか魔法の恩恵がすぐに反映される場所なの」


「つまりアイの力でここは成り立ってる訳だ。お姉ちゃんは鼻が高い」


「それは大げさ過ぎるよ。でも実際に自分が作った魔法が良い形で使われていて、それを目の当たりに出来るのは嬉しいかな」


 アイは余程気分が良いのか、聞いてもいないのにあちこちの設備に使われている魔法について細かく説明してくれた。観光ツアー並に詳しい説明が聞けて有り難いんだけど、そろそろ目的のお店に行かないと時間が無くなってしまう。ただでさえ広いモールを隅々まで解説してもらうには、今日一日では到底足りない。


 それから3人で寝泊まり出来るサイズのテントや、アウトドア用の調理道具等様々な商品を見て回った。形や性能などピンキリで、とても素人には選びきれず、店員に初心者用のオススメセットを見繕ってもらう。


 僕が持ってる知識は、キャンプというよりも冒険に必要なサバイバル知識ばかりだ。下手をするとダンジョンに潜るかのような装備になりかねないので、口出しはしなかった。


「これで総額が……まぁまぁするね」


「私が買うよ。2人よりもお金は持ってるからね」


「くっ、流石社会人……まぁ学生が一式揃えるのは無謀か」


「急いで買わなくてもいいんじゃないですか?シーズン前になったらセールとかありますよね?」


 店員に選んでもらっておきながら申し訳ないけど、この場で即決購入という事はしないでおく。その後は適当に移動しながらモール内を見て回ると、アカリさんがとある店の前で歩みを止めた。


「ねぇ、やっぱり水着も見ていこうよ。海に行かなくても、プールには行くかもしれないでしょ?」


「それは確かに……」


「でも姉さん、本当は私達に水着を着せたいだけでしょ?」


「ちが……くない。そりゃ可愛い妹とユウリの水着姿なんて見たいに決まってるし」


 アカリさんの下心は今に始まった事では無いし、僕たちもそれが嫌な訳では無いので結局お店に入ることにした。下心があると言っても、3人であーだこーだ言いながら選んでいくのは楽しい。


「姉さん、流石にこれは……」


「アカリさん、やりすぎです。表に出しちゃいけないやつですよこれは」


「ごめん。アイが着るとまさかここまで破壊力があるとは……」


 アイは色々と凄いので、似合う水着の傾向が僕たちとは全く違った。そんなこんなで、アイはなるべくフリル等の装飾で身体を隠すようなものを、アカリさんは競泳水着の様な身体のラインをしっかりと見せつけるものを選んでいた。


「いや、そんなありきたりなボケは要りませんて」


 1番ちんちくりんな僕はスク水を手渡されるけど断固拒否する。でもまだ子供だというのは否定できない事実なので、可愛い模様が入った水着を選んだ。


「うへへ、夏が楽しみだ」


「アカリさんキモいです」


「姉さん……」


 そうして僕たちは買い物を済ませて、アイが住んでいるマンションに向かう。アイは小さな部屋だと言ってたけど充分広く、何なら僕たちの部屋よりも大きいかもしれない。1人だと絶対に持てましていると思う。


「一応このマンション、研究所の社宅扱いだからね。住んでる人も研究所の関係者と、その親戚しかいないの」


「へー、ここにアイが……」


「リビングで寛いでて。私はちょっと部屋を片付けてくるから」


 アイに言われた通りリビングで寛ぎながらも、やっぱり部屋のあちこちを見渡してしまう。そうしてキョロキョロしていると、いつの間にかアカリさんが居ないことに気付いた。


「おやおや?アイ、これは一体何かな?」


「ちょっ、姉さん!リビングで寛いでてって言ったのに!」


「リビングだけじゃなくて、自分の部屋もちゃんと片付けておかないとダメだよ?あらあらこんなに散らかして。これはこっちに仕舞っておけば良い?」


「あ、勝手に開けないで!もー、待ってってば!」


 どうやら姉妹で色々とやっているらしい。流石に僕はそこまで失礼な事は出来ないので、大人しく待つことにする。


 少ししてようやく出てきた2人は先程の元気はどこへやら、すっかり大人しくなっていた。ほんの少し顔が赤いけど、何かあったんだろうか。まぁアイの慌てっぷりからも、何となく察しは付くので聞かないでおいてあげよう。年頃なんだから知られたくない事の1つや2つあるだろう。


「晩御飯はどうする?近くのお店に食べに行く?」


「そうね。そうしましょう」


「え!?今日はアイの手料理が食べれるんじゃなかったの!?」


「それじゃあ冷蔵庫に作り置きがあるので、姉さんはそれで良いですね。ユウリは何か食べたいものある?」


「あ、待って置いてかないで、あたしも連れてって!何でも奢るから!」


 いくら姉妹とは言えアカリさんは少しやりすぎてしまったので、これぐらいの仕打ちも仕方ないだろう。ただそれでも優しいアイはすぐに許してあげたみたいで、手料理は明日作ってくれる事になった。僕だって食べたいんだからまぁ当然だ。


 それともちろん今日の晩御飯はアカリさんの奢りなので、それなりに良いお店に入る事にする。アカリさんは気が気じゃないといった感じでご飯を食べていたけど、おかげで僕とアイは大満足の1日になった。

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