いま
目が覚めた。
ゆっくりと身を起こすと、開きっぱなしのノートパソコンが目の前にあった。どうやら机の上に寝てったようだ。今日までにレポートを提出しないといけないのに。
時計を見ると、もう9時は回っていた。
一時限目はもう間に合わないだろう。
でも、まぁいいか。別に必要のないやつだし。
トーストをかじり、今日の予定を確認する。
今日はバイトがない。遊ぶ予定もない。
とどのつまり暇である。
彩からメールが来ていた。恐らく寝坊の事だろう。
申し訳ないが、今既読をつけるのはやめた。
適当な服を着てバックを持ってややけだるけに玄関へ向かう。
「行ってきます。」
誰もいってらっしゃい、なんて言ってくれないのに。
アパートの鍵を取り出そうとすると鍵と共にかわいらしい兎のキーホルダーがチラリと視界をよぎった。もうだいぶ汚れた。今度洗濯しなきゃ。
外へ出ると、夏の新緑が眩しい。
ふと、目に入った気がした。
こんな時間に学生はいるはずない。
再びスマホに目を落とした。
母親が買い与えた最新機種のスマホを、未だに使いこなせていない。せめて使うとしたらヤフーぐらいだろう。ラインは尚文と彩しかしないし。
他に何もしないし、写真も撮らない。
もう何も撮らない。
そう決めたから。