第7話 鉱山
今回のクエストはジャスミンと一緒に鉱山へ向かい武具を作るための素材集めだがこの鉱山は足元がガタガタで踏み外しやすい。
大人数で鉱石を探すのはかなり危険であり、ジョセフとジャスミン、ジンジャーの3人で鉱山を登ることにした。
「ジョセフ様、私も一緒に行きたいです!」
「リサはマリー達と一緒に馬車の中で待機してほしい、もしも王女様の身に何かあったら君のご両親に申し訳が立たない」
「私達は婚約者なのにどうして別行動なのか納得できないです!」
ジョセフは待機してほしい理由をリサに説明するもふくれ顔で駄々をこねており困ったものだ。
「リサ、ジョセフの言う通り一国の王女に何かあってはいけません、私からもお願いします」
「ジョセフ様と同じでテレサも私が王女だからって特別扱いするんですか?」
テレサはリサの反論に何も言えずに黙り込んでしまった。
「しょうがないなぁ…でも危ないと思ったらすぐにテレサ達のところに戻るんだぞ」
リサは顔をパーッと微笑ませ「やったー」と両手を上げた。
(ホント、13歳の王女様とはいえまだ子供だな、こんな華奢な体した女の子を危険に晒すのは躊躇ってしまうがまぁ、ジャスミンやジンジャーというお姉様達とも一緒に同行するわけだからなんとかなるだろう)とジョセフは安心していた。
ジョセフ達は馬車で待機しているテレサを待機させ、鉱山へ登り始めた。
鉱山はゴツゴツと踏み外せばすぐにでも落っこちそうなくらい危険で足を踏み外せば遭難することは間違いなしで一人で行けば遭難してしまいそうだった。
ここは何度も登山経験のあるジャスミンに任せて必要な素材を集めて陸奥守吉行を複製してもらわなければとジョセフはジャスミンに任せていた。
「今回必要な鉱石はもう少し上るんだけどあたし実はこれ以上登ったことがないからどんなことが起きるのか分からないけど大丈夫かしら?」
「まぁ、別に何とかなるんじゃない?私は勿論ついていくよ」
ジャスミンもどうやら今回ジョセフ達にクエスト依頼した理由を言い、ジンジャーはいつも通りニコニコとしながら了承したけどもし遭難してもマリーの詮索魔法で探してもらえるから安心して登ることにした。
あれから鉱山を軽く150~200メートル程登ったがまだまだ先なのか気になったジョセフはジャスミンに「少し休憩しないか?」と尋ねた。
「そうね、さっきから歩きっぱなしだしここで体力を温存しておくのも悪くないわね」
5~10分ばかし休憩をして登山を再開。
それからも登っては休憩を繰り返し、とうとう到着したのかジャスミンは急に立ち止まった。
「ここまで登れば素材も沢山取れるはずだわ、みんな、ピッケルを出して」
ジャスミンの指示でピッケルを大きなカバンから取り出した。
「この辺りには普通の鉄とは違う鉱石が沢山あるからそれを袋に入れられるだけ採取して」
早速ジョセフ達は作業を開始し、普通の鉄とは違う鉱石を採取し袋の中に入れていた。
ある程度鉱石を採取し終えた後、ジョセフ達は鉱山を下山することにした。
「ジョセフ、今回は素材集め手伝ってくれてありがとう、おかげで速く取ることがわ」
「金貨20枚で刀を作ってもらいたいから手伝っただけだよ…」
そんな会話をジョセフはジャスミンとしながら慎重に下山していった。
「もうっ、ジョセフ様ったら、私という婚約者がいながら婚約してない女の人とイチャイチャと会話なんかして破廉恥ですわ…」
「リサッチ嫉妬しすぎぃ〜、一夫多妻が認められてるのに独占欲強ぉ~い」
「ムムムっ、ジンジャーさん、からかわないでください!」
なんだか後ろにいるリサから凄く殺意丸出しの視線で見られているが他の女子と会話しているのがそんなに気に入らないのか、かなり不服そうでそれを隣で見ていたジンジャーがリサのことをいじり始めた。
(やべぇ、リサがこんなに独占欲の強い女の子だなんて知らなかったよ、これはリサが大きくなったら俺束縛されそうで怖い…ヤンデレというかメンヘラ要素日増しに強くなってるよ……)ジョセフはリサの強すぎる依存性に不安を感じ浮気だけはしないよう肝に銘じた。
鉱山を無事下山し終えた頃にはもう日が暮れており、待機していたテレサはジョセフ達の帰りをしっかりと待っててくれていた。
「無事に帰って来たんじゃん、信じてたよ、ジョセフ君達が戻ってくれるのを」
「ありがとう、鉱石は無事に採取できたよ」
マリーはニコニコとしながらジョセフに抱きついてきた。
マリーの胸がジョセフの体に当たっており、ジョセフはリサが眉間にしわ作って顔怒ってる様子を見て慌ててマリーを引き離そうとする。
「ちょっ、いきなり抱きつくなって、俺はそう言うのは苦手なんだよ」
「とか言って満更でもないんでしょ?リサちゃんがいるからってかしこまっちゃって」
マリーはニヤニヤとジョセフをからかいだした。
「ジョセフ様は私の《《モノ》》なんですから誘惑しないでください!」
リサは嫉妬した様子でジョセフの腕に抱きつきながらマリーに威嚇し始めた。
(それにしてもやっぱりリサの胸って歳のせいだからなのかやっぱりマリーと比べちゃうと小さいんだよなぁ、マリーの胸はとても柔らかく婚約者ならもっと堪能したいところだが一歩間違えたら強姦未遂の冤罪をかけられ制裁を受けそうだな……)ジョセフは心の中で恐怖していた。
「ねえ、ジョセフ様、さっきマリーさんの胸と私の比較していたでしょう?」
そうだった、リサは相手の真実を見抜いたりと心を読める能力があったことをすっかり忘れていた。
「い、いや…別に…」
「私だってあと何年かでジョセフ様を納得させられる大きさになりますもん!」
「だから胸の話なんてしてないだろ…」
ジョセフは言い訳がましくも話を逸らせようとしているが全く聞く耳持たずだ。
(俺のヒロインはどうしてこうキャラの濃ゆいのばかりなんだよ、日本にいた頃毎日ハーレム生活充実出来たらなんて思ってたあの頃が懐かしいよ…)そんな風にジョセフは日本にいた頃を懐かしむ。
「拝啓昔の俺、君は近いうちに神様の手違いで異世界に転移させられますけどハーレム生活に期待しないで下さい、色々と苦労しますので…」
ジョセフは小声で過去の自分に異世界に希望を抱くなと言いたそうに呟いていた。
鉱山で必要な素材も揃い、ジャスミンに名刀陸奥守吉行をベースに刀をオーダーメイドすることにした。
ジャスミンをメンバーに加えることを条件に金貨20枚で作ってもらうという約束ではあったのだが、ジョセフは日本刀の作り方をSNSやテレビで見て覚えてる範囲の知識を取り出した用紙にこの世界の文字で記してその用紙をジャスミンに渡した。
「う~ん、刀を作る際に叩いた鉄を何度も折り曲げるって作業を20回繰り返しってところがかなり手間のかかりそうな気もするんだけどホントにその製法あってるの?」
ジャスミンは渋った顔をしながらジョセフが渡した用紙を見せながら尋ねる。
「それで合ってるよ、俺のいた国では何度も鉄を折り曲げることにより柔軟性のある折れにくい刀に仕上げることができるんだ」
何故日本刀が世界で一番切れ味がよく、折れにくいと言われてるのかわかる範囲で説明すると日本刀は、いわゆる西洋の剣と違い叩き斬ることよりも少数相手を確実に切り裂くための武器であり、日本人は一本の刀を仕上げるのにかなり複雑な工程を重ねることで非常にしなやかで頑丈な仕上がりにすることができるのだ。
このような製法は世界でも珍しかったからなのか、日本刀は外国人にもかなり定評があるのだ。
西洋の剣は日本刀と違い、溶かした鉄を流し込んだり、鋼を熱し叩きのばす、又はその二つの製法を合わせた方法など多種類であるそうだ。
そこで切れ味に関してなのだが日本刀は反りがあることにより切りつけると刃が滑り切り裂くことが可能で、強い切れ味を発揮する日本刀は何人もの相手を斬ると油で切れ味が落ちるとされている。
一方で西洋の剣の切れ味に関してだが斬るというよりは突くことに真価が集約されているわけで切れ味が日本刀より劣る分強く相手を叩きつけることによって斬ることが可能なのだ。
日本刀は切れ味七で力強さ三程度の割合だとするならば、西洋の剣はその反対と考えるべきだと思うのだが、西洋の剣は日本刀と違って刃が潰れても戦闘を継続することができるため長期戦での戦いでは有利であることは確か。
それでもジョセフが刀を選ぶ理由はジョセフのギルドメンバーにはマリーというチート魔法使いがいるため殆どが短時間で戦闘が終わるからだ。そして、ジョセフが日本刀のデザインが好きだからでもある。
とは言ったものの基本的にクエストの関係上、ジョセフは剣自体そんなに使用する頻度が少ないため刀なんか増やしても意味があるのか疑問に感じることも多々あるが沢山持ってて損はないだろう。
カン、カン、カンッ、早速ジャスミンが指示書通りに刀の製作を始めていた。
刀を作る際に使用している材質は砂鉄を原料とした玉鋼、この世界で採れる特殊な鉱石等を使用しており叩いては折り曲げ、火の中に入れるを何度も繰り返していた。
ジャスミンも初めての製法でかなり苦戦している様子が伺えた。
「この作業を何度も何度も繰り返しているけどこれを何回繰り返したらいいのかしら…」
そんなことを言いながら黙々と作業をこなしハンマーで熱した鉄を叩いてた。
刀の製作には1週間程度はかかるというので俺はジャスミンの店を後に仲間達の元へ戻ることにした。
「ジョセフ様、一体何処に行っていたんですか?」
「すまん、武器屋で刀の特注を頼んでたんだよ」
リサがかなり心配している様子だったため、武器屋にいたことを説明した。
「武器の特注をしていたのか、それならそうと言ってくれればよかったのに…ジャスミンもお前の無茶な注文で困っていただろう…」
「ああ、結構困っていた様子だったな、今までと違う製法で刀を作ってくれるみたいだから」
「全くお前ってやつは……」と言いたそうなテレサはかなり唖然とした様子で肩を竦めていた。
「刀とか特注してもらってるんだ?私も作ってもらおっかな~」
ジンジャーはそんなことを軽々しく言っていた。
「それよりも今回のクエスト依頼なんですけど、何を探しましょうか?」
「そうだな、そろそろ本格的に討伐クエストとかも増やしていきたいがどれも上位ランクの冒険者でないと受けられない案件ばかりだろうし今回も簡単なのか見つけていくか」
ジョセフ達は冒険者ギルドに向かうことにし、掲示板に貼ってあるクエスト依頼の案件を探してみるもあまりいい条件のクエストはないようだ。ジョセフ達のランクが低いから仕方がないことではあるのだが。
「こんなのはどうかしら?」
マリーが張り紙に貼ってあった案件を見せる。
「ん~っ、遺跡の調査かぁ~、これしか良さそうなのないしこれにしよっか」
ジョセフ達はそう言いながら受付に遺跡調査の案件を持っていきクエスト依頼を受ける手続きを行った。
「遺跡の調査を受けたいのですがいいでしょうか?」
「遺跡の調査ですね、分かりました。規約は用紙に書いてある通りですのでよく目を通してから行ってください」
受付に依頼手続きを申し込み、依頼完了することになり、ジョセフ達は今回のクエスト内容を再度確認した。
最近発見された遺跡に魔物が生息していないか、財宝が眠っているかを確認するのが今回の目的か、遺跡ってことは未知なるものが沢山待ち構えてる可能性もありそうだから気を緩めずに慎重に行動していくしかないのだ。
「え~っとここから遺跡からだとかなりの距離があるけど馬車だと2~3日くらいってところか、往復6~7日くらいだから、刀ができてる頃には帰れるってことか」
馬車に荷物をまとめ、ジョセフ達は乗り込み、馬を走らせた。
馬車での旅というのは車や電車みたいに快適ではないがこうやって自然を眺めたり、野宿で楽しく会話することができたりと悪いことばかりではない、ただ風呂がないから川や池の近くにあってくれれば体を洗えるのだが、ジョセフ以外のメンバーが女子であるため野宿はやっぱり少し苦手のようだ。