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境界線の先の僕らにしか見えない隣人  作者: 伊勢海老
【第二章】赤い糸のおまじない
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第42話

「私に何かご用意ですかぁ?」


麗奈に呼び出された花島は、妙に間延びをした話し方で佐倉と祐介に問うた。

以前に一度、佐倉が相談を断ったという事もあり、彼女はじとりとした目線を向かいに座る二人に向けている。


「以前は申し訳ありませんでした。ずっと気にかかっていて、心苦しく思っていたんです」


柔和な笑みを浮かべて彼女に語り掛ける佐倉。外面の良さは役者顔負けだ。

ああいうタイプが一番困ると、言っていた事を祐介は胸に仕舞い込んで黙っている事にする。


花島は心配されていたという言葉に満更でもなさそうな表情をすると「ふぅん」と呟いた。


「それで、その後の流れは如何ですか?」


お昼時の学食はざわざわとしていて囁き声を巧妙に隠すにはうってつけ。これ幸いと、彼は早々に本題を切り出す事にした様だ。


「それ、それねぇ。もういいの。何か急に冷めちゃってぇ」


「おや、それは不思議ですね。あんなに熱心に慕っていらっしゃったのに」


「でしょお」


わざとらしく目を見開いてリアクションをする彼を尻目に祐介は「それっていつ頃ですか?」と然り気無く問い掛ける。


「んー、正確には分からないけど一週間前くらいからなぁ」


時期も一致している。

黒と見なして良いだろうが、いまいち彼女の発言はちぐはぐでピースが欠けている様に祐介は感じた。何かが足りない気がするのだ。


「ふむ、···少し鑑定させて頂いても宜しいでしょうか?」


スピリチュアルな事が好きらしい彼女に、佐倉は最もらしい言葉を選んで投げ掛けた。対する彼女は嬉々として申し出を受けている。

種は分かっているので茶番を演じる必要性を感じない祐介は、静かに流れを見守る様に腕を組む。


「今までは恋愛を楽しんでいたのに、最近めっきりではないですか?」


「うん。いまいちトキメキがなくて好きな人が出来ないのぉ」


手相を見る様な、脈を測るような形で彼は彼女の手の平を見つめて周囲から囲んでいく様に話を運んでいく。


「疲れやすく、溜め息が多くなりましたよね?」


「それもあるかも、ちょっと疲れやすいみたいで···」


「あんまりやる気が出ないの」と、緩くパーマの掛かった髪の毛を、佐倉が触れている反対の手で掻き分けると伏し目がちに彼女は苦く笑った。

恐らくその表情は飾らない素のもので、彼女の本質は傷付きやすい乙女な事を物語っている。


【赤い糸のおまじない】は呪詛であった。傷付きやすいであろう彼女にどうオブラートに包んで事実を伝えるのか、此処が正念場になりそうだ。

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