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境界線の先の僕らにしか見えない隣人  作者: 伊勢海老
【第二章】赤い糸のおまじない
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第41話

「生き霊だ」


佐倉は祐介の座っているダイニングテーブルまで素早く寄ると脳内で導きだした結論を告げた。


「さっき言ってた術者の生き霊が一人歩きしてるって事?」


「確証はないが、メカニズムが呪詛と生き霊の二重構造になっていたと考えると筋が通る。術者の想いが強すぎて身体から抜け出たんだろう。あとは麗奈さんからの連絡待ちだ」


板井の首の傷や悪夢、佐倉に相談する前の現象は呪詛、その後の現象は、板井の気配が読めなくなって暴走した生き霊の仕業だろうと祐介に説明した佐倉は「あー、すっきりした」と背伸びをする。


変わらずマイペースな彼を、祐介はすっかり冷めてしまった珈琲に口付けながら、からかう様に笑って言う。


「甘いもの食べたから、糖で頭がよく動いたんじゃないか」


「そうかもな。今回は祐介に助けられてばかりだ」


今夜は泊まっていけと言う彼の言葉に甘えてる事にした祐介。シャワーを浴びている間に寝室に用意されていた客用布団に潜り込む。

ベッドの上で専門書を読んでいる佐倉に就寝の挨拶すると、微睡んでいく意識に身を委ねた。



耳元で聞こえた覚えのある着信音で意識が覚醒する。


祐介は寝起きでぼぅっとした身体を布団にから起こさぬまま手探りで枕元の携帯を取ると、電話が誰から掛かってきているのかを確かめる事無く通話ボタンを押す。


「はい···」


『もしもし、祐介?寝てた?』


麗奈だ。携帯を耳元に当てたまま、がばりと勢いよく上半身を起こした。

正直に答えるのも気恥ずかしいので、言葉を濁して問題ない旨を伝えると、電話越しに彼女が笑った気がする。


『昨日のあの件の話で手掛かり掴んだから早い方が良いかなって思ってさ』


「もう?早いね」


『こう言っちゃアレだけど、板井先輩って女性関係派手でしょ?好きで好きで仕方ないって人に区切ると数も限られてくるのよ』


祐介は空いている方の手で髪の毛を撫で付けながら彼女の話を聞くと先を促す。


『まぁまぁ、焦らないで。本当の事言うとね、板井先輩に熱を上げてる子って一人しか居なかったの。二人とも面識はあると思うよ』


頭の中で同じ講義を取っている女生徒や、サークルのメンバーを一考するが、皆普通の女の子で呪詛に手を染めそうな子の心当たりが浮かばない。暫く無言で考える。


『花島さんよ』


答えが出ない事を察して早々に告げられた女性の名前に祐介は目を見開いた。


花島響子。その人物は、以前、佐倉の元に噂を曲解して来て占い紛いの事を求めた女生徒だ。

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