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境界線の先の僕らにしか見えない隣人  作者: 伊勢海老
【第二章】赤い糸のおまじない
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第36話

その日、祐介は講義が四限までだったので、夜からシフトの入っているアルバイトまでの時間潰しに、サークル棟にある歴史研究会の部室で長テーブルに頬杖を突いてぼんやりと時間を過ごしていた。


『佐倉、何してんのかな···』


サークル活動のミーティングに欠席すると連絡を受けた日からキャンパス内でも、部室でも佐倉の姿を見掛けない。

真面目に活動をしている彼を知っている祐介は、もしやまた厄介な事に首を突っ込んでいるのではないかと一抹の不安を覚えた。


麗奈と交流が深まった去年の夏の終わりに、【アパートの事件】の解決に一役買った佐倉と話がしてみたいと紹介を迫られて、なし崩しに彼女に彼を紹介して以降、噂が広がり一人歩きしているらしく彼の元に【そっち】の悩みを持ち込む者が増えているのだ。


その悩みの大半は相談者の気にし過ぎなのだが、一つ一つに生真面目に対応する彼は時間を削られる事が多くなっていた。

噂を曲解して、占いか何かと勘違いしてきた女生徒の恋の悩みは流石に丁重にお断りしていた様だが···。


噂の元凶であろう麗奈は悪気はなかったらしく、表舞台に立つ事が本意ではない彼に謝罪した事を両人の口から直接聞いている。


今回もそんなところだろうと当たりを付け、御人好しな彼に半ば呆れ、半ば感心して祐介は溜め息を吐く。以前、彼から余計な事には首を突っ込まない方が良いと忠告されたが、その言葉をそのまま返してやりたいところだ。


「こんにちはー」


よく知る声が聞こえたと思うと、返事の間を待たず部室の扉が開かれた。


「あれ、祐介一人?佐倉くんは?」


祐介の他に誰も居ない部室を見回すと、麗奈は勝手知ったるといった風に祐介の近くまで歩み寄った。


「佐倉なら一昨日から見てないよ」


「マジ?」


その返答は予想外だったのか、麗奈は気まずそうに頬を掻くと祐介から目を逸らす。その様子を見逃さなかった彼は「何か知ってんの?」と彼女に問う。


「サークルの先輩が佐倉くんに相談したい事があるって言われて彼を紹介したんだけどさ、その先輩も昨日から欠席してるらしいんだよね···」


言葉を濁しながら話す麗奈が「ヤバいかな?」と心配そうな表情を浮かべる。


何時もなら相談者の気にし過ぎな事が多いから心配要らないんじゃないか、と答えるところだが、言い知れぬ嫌な予感が祐介の胸の内に渦巻いて上手い答えを返す事が出来なかった。

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