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境界線の先の僕らにしか見えない隣人  作者: 伊勢海老
【第二章】赤い糸のおまじない
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第30話

「···やっと見つけた」


呼吸を忘れていた様で、ハッと喉が音を立てて目を覚ます。寝汗が絞れば滴りそうなくらい身体を濡らしていて気分が悪い。

最悪な気分でぐったりと身体を起こすと、首筋にピリッと痛みが走る。


何の夢を見ていたのか正確には覚えていないが、最後に聞こえた言葉だけが妙に脳裏に焼き付いていた。


射し込む朝日に板井はうんざりと目を細めると、寝惚けた気分を洗い流そうと洗面所に向かう。


ラックから下ろし立てのタオルを取り出し鏡を向く。

其処に立っている自身の首筋には、先程の痛みの原因であろう爪の様な四つの筋が走っていた。


寝惚けて掻いてしまったのだろうかと、顔をしかめて四つの筋を擦る。


冷たい水で顔を清め、昨夜一緒にいた女に「おはよー!」と連絡を入れた。

冷蔵庫に入っているミネラルウォーターをコップに注ぎ喉を潤していると、朝早いにも関わらず彼女から返信が返ってくる。


何通かのやり取りの中、無意識に絵文字を入力している自分に馬鹿馬鹿しくなり適当な画像を送り付けて無意味な会話を終えた。


一日の始まりを告げる挨拶が飛び交うキャンパスを、首筋を隠す為に薄いタートルネックのニットにジャケットを着込んだ板井は、朝一番の講義を受ける為に歩く。


彼はいつも襟元が開いている服を着ているので、何かを察知した顔見知りがすれ違い様に「また女かー?」とニヤニヤと野暮な野次を飛ばすのを片手をひらりと上げて受け流していると、またピリピリと首筋が傷んだ。


その夜、板井は珍しく女が捕まらなかったので所属しているサークルの飲み会に顔を出す事にした。

サークルの人間には手を出さない信条を持つ彼にとって、くだらない無意味な時間だが暇を持て余すよりはマシだと判断したのだろう。


久し振りに顔を合わせる面子に愛想笑いを浮かべると煙草に火を付け、目の前の人間達と言葉を交わす。


サークルの人間達も板井が女性関係に難ありな事をよく知っている為、遠回しに近況を聞きたがっているのがよく解った。


仕方なく、最近ベッドを共にした女とのエピソードを一部話したり、何処が出会いが多いのかを所々切り取りながら話す。

話は大いに盛り上がるが、周りにいいようにされている様な気分で彼としては面白くなかった。


少し怖がらせるつもりで昨夜の熊のぬいぐるみの事を話すと、女の子は甘えた様に「こわーい」と言い、男共は「やべーやつ引っ掛けたんだろ」と笑う。


そんな中、後輩の麗奈だけが少し怖がりながらも「本当ヤバかったら言って下さいね、最近そういうのに詳しい知り合いが増えたんで」と言ったのが印象に残る。


彼は内心、たかだか熊のぬいぐるみだろ、と思いながら、口では「その時はお願いするよ」と答えた。


その後、思いもよらない出来事が起こり、彼はすぐに麗奈に懇願する事になる。

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