第25話
麗奈は話題をコロコロと変えながら学生生活のエピソードを楽しく話した。
現社の先生の講義は退屈な事、最近の化粧品のブーム、流行りのメイクをしている友達の彼氏がバンドマンな事、公園の近くのお好み焼き屋に学生達がよく屯している事。
「今日そのお店に来てた面子の中に、最近雰囲気の変わった友達がいるんですよ」
「ほぅ、そうなのかい」
カルラは少しだけ時代かかった相槌を打つ癖があるので、祖父に接している様で自然と笑みが零れる。
「てっきり好きな人が出来たとか、そういう話かなーと思ったんですけど···」
「麗奈ちゃんの予想と違っていたんだね」
彼女は「そう、そうなんです!カルラさんってエスパーですか?」と強く頷いた。拳を握り真剣な彼女とは裏腹に、カルラは年の功だと自動販売機の向こうでからからと笑う。
「見えない世界が見える様になったって言ってました」
「それは···その子はとても難儀だね」
「カルラさんはその話信じるんですか?」
「麗奈ちゃんはお友達の話を信じなかったのかい?」
さも当然の様に返すカルラ。
叱られてもいないのに彼女は決まりが悪くなった。もごもごと口を動かし次の言葉を探す。
「信じなかった、というよりも興味がなかったかもしれないです」
ふむ、と沈黙が落ちる。先程までの楽しい空気が嘘の様に気まずく感じた。
向こう側で寂しそうに何かをカルラは呟く。
言葉がよく聞こえなかった麗奈はベンチから少し身を乗り出して彼の様子を伺おうとした。
「どうかしました?」
「いやいや、大丈夫だよ。気にしないでおくれ」
少し慌てる様にカルラが告げるので、彼女は「そうですか?」と、ベンチに座り直す。
「でも、私達が生きていた時代と今の時代の子は、やっぱり違うのかもしれないなぁ」
「カルラさんの生きていた時代···ですか?」
「空を見てごらん」
彼に言われて夜空を見上げると、其処にはいつもと変わらない暗闇と遠くに輝く小さな星が見えるのみ。
何か変わったものでもあるのだろうか、と麗奈は首を捻るが特段代わり映えした様子はない。
「星や月はいつも変わらない様に見えていて少しずつ変化をしているんだよ。······昔の人達はそういった変化を丁寧に受け入れていたんだ。例え目に見えた大きな変化がなくてもね」
夏の暑かった時期に比べると今見上げている空は少し変化があるのだろうか。
星座が季節によって変わっていく事は、高校の科学の時間に習った記憶がある。昔の人達が沢山の知識を身に付けて、観察して、今に繋がっている授業だと当時は感動したものだ。
今は目の前に積み上げられる課題や生活でいっぱいいっぱいで、そういう気持ちを御座なりにしていたかもしれない。




