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境界線の先の僕らにしか見えない隣人  作者: 伊勢海老
【間章】自動販売機
24/42

第24話

夜が更けてくると一人、また一人と席を立つ人間が増えてきたので、大学近くの商店街にある学生御用達のお好み焼き屋での暇人達の集まりは御開きの雰囲気となる。


各々は自転車、電車等、それぞれの帰宅手段を用いて帰路に着く。

いつも深夜まで遊んでいる麗奈は必ずタクシーを使う様にしていたが、今回は日付が変わる前の解散だったので珍しく歩いて帰る事にした。


商店街の突き当たりは大きな寺と公園が隣接している。大学の直ぐ近くで借りているマンションに帰る為には、此処を突っ切らなければならない。

迂回するにも一度商店街の入り口まで戻ってから、商店街の外側にある道路を再び同じくらい歩かなければならないので面倒なのだ。

彼女は商店街の入り口に向かって歩いていく同期達を見送ると反対側に一人歩き出す。


商店街の切れ目から公園の目印となる大きな池が見えたので、そのまま目印の方へ。


池に沿った道を歩けば、丁度池の中間地点辺りに自動販売機がポツンと外灯に照らされていた。それを挟んだ両サイドにはベンチが備え付けられている。

まだ暫く歩かなければならないので、お茶を買ってベンチで一息入れる事にした。


季節は秋に移り変わろうとしていて夜風がひんやりと心地好い。活気のある店の中で暑くなっていた心と身体がゆっくり落ち着いていくのが分かる。


暫く夜空を見上げて麗奈はぼんやりしていると、不意に自動販売機を挟んだ反対側から声を掛けられた。


「こんな遅くにお嬢さんは散歩かな?」


距離があるにも関わらず、低く独特の声が不思議に麗奈の耳に響く。どうやら声の主は男性の様だが姿を見ようとしても自動販売機が邪魔をして叶わない。

足元が少しだけ出ていて、変わった形の靴を履いている事だけが確認出来た。


「さっきまで大学の友達と遊んでて、今は帰りです」


「ははは、元気があって結構だね」


人の良さそうな声に安心して麗奈は胸を撫で下ろす。変な人ではなさそうだ。


男は「カルラ」と名乗り、この近くに住んで長い老体だと言う。

相手が同じ学生身分でない事を知ると、なんとなく気楽なもので麗奈の口からは次々に世間話が出てきた。


話題を変える度に相手が大袈裟に驚いたり、感動したりするのでつい調子に乗ってしまう。彼は相槌を打つのが上手いので乗せられてしまうといった方が正確かもしれない。

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