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境界線の先の僕らにしか見えない隣人  作者: 伊勢海老
【間章】自動販売機
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第23話

「祐介さぁ、なんか急に変わったよね」


大学は夏期休暇に入って、学生達は課題もありながらも漫然と時間を過ごしていた。


自然と学部を共にする同期の集まりが催され、暇を持て余した者同士が身を寄せ合う。

結果として、何時も顔を合わせる事が少ない面子とも言葉を交わす機会が増える。


同じ高校出身の麗奈は高い位置で括った茶色いポニーテールを揺らすと、グラスを片手に久々に顔を合わせた祐介の隣を陣取った。


キャミソールに薄手のカーディガンといった彼女の姿に祐介はどぎまぎするが、なんとか冷静を装い「そうでもないよ」と苦く返す。


「いーや、絶対変わったって!だって前は誘いがあれば大体参加してたのにさ、最近は結構ハッキリ断ってるじゃん」


良くも悪くも高校生の時分の祐介は、居ても居なくても良い人間だった。

付き合いは悪くないし、集まりに参加をするとソコソコ盛り上げてくれる人数合わせにぴったりの存在で、御多分に漏れず麗奈も世話になっていた口だ。


少し前、夏期休暇に入った直後にBBQをする計画を立てていた麗奈だったが、当日に突然予定をキャンセルした友人がいた。

高校生の時からの習慣で祐介に連絡を入れたが、先約があるという理由で誘いを断られてしまう。それは彼女からすると青天の霹靂だったらしい。


「しかも違う学部の子と仲良くしてるしさ」


「···サークルが一緒なだけだよ」


「夏休み前は一緒に登校してくる事も多かったじゃん」


「よく見てるね」


興味津々の彼女は一歩も引かない。

なし崩しに祐介は初夏の事件を伝える事になる。


始めは目をキラキラとさせて、うんうんと頷き続きを促していた麗奈だが、祐介の真面目に心霊体験をしたと語る様子に次第に胡乱な表情となった。


「高校の時はそんな事全然言ってなかったじゃん、ナニソレ大学デビュー?」


最後まで話終えた祐介に彼女は苦笑いを送る。そんな反応は予想していた様で、祐介の表情は至って平静だ。


「信じてくれとは言わないよ。どう取るかは自由だから」


「ふーん」


浮いた話の一つや二つ聞けると思っていた麗奈は予想の斜め上をいく返答をした祐介への興味をすっかり無くすと、立ち上がりワイワイと盛り上がる人の輪に戻っていった。

今度は彼女と祐介がどの様な話をしていたかを気にする男性陣に囲まれる事となる。


とどのつまり若い男女というものは、色恋の話が基本的に好きなのだ。

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