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境界線の先の僕らにしか見えない隣人  作者: 伊勢海老
【第一章】徒歩15分のアパート
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第21話

日記は思いの外あっさりと見つかった。


始発電車に乗り込んで祐介の自宅に向かった二人が「これでそのまま其処に置いてあったら驚きだよな」という話をしていた矢先の事である。


玄関に乗り込むと祐介の所有している靴が全て出されていた。

彼女の無言の主張。それは事の真相を知ってしまった祐介に、もっと早く気付いてあげられたらと、自責の念を抱かせるには充分過ぎるアプローチだった。


佐倉に肩を叩かれ、気を取り直して彼女が日記をしまっていた台所の戸棚を開くが、引っ越しをして来た際に無作為に置いた荷物に視界を阻まれる。


ベッドの近くに置いているローテーブルを持ち出し足場の代わりにすると幾分ましになったので、手前の荷物からリレーの様に佐倉に渡す。

暫く開けていなかったので埃が凄い。朝日を反射させてキラキラした埃が舞い、祐介の少し長い前髪に容赦なく注ぐ。


「マジか···、あったよ!」


ローテーブルの足元が荷物だらけになった所で、おおよそ2年分の埃をたんまりと被った彼女の日記を発見した。


人が亡くなったので特殊清掃が入った事も想定をしていたが、彼女は早い段階で発見されたのか、···はたまた業者の手抜かりか。何にせよ日記を見つける事が出来て良かった。


女性の日記を読むのは申し訳ないが、手がかりである以上は仕方ない。祐介と佐倉は頷き合うと、カサカサに水分の飛んだ表紙を捲る。


---

○月×日

今日は入社して初めての研修日。

早速上司に怒鳴られた。結構理不尽な事で怒るって有名みたい。あの人の部署に配属されたくないな。


○月△日

同期の飲み会に誘われて参加。

松岡くんは家が近いみたい。


○月○日

あと一週間で研修終了。

バタバタしてて日記がなかなか書けなかった。

あっという間だったけど、心配して連絡をくれたお母さんに感謝だなぁ。

---


日記の最初の方は何の変哲もない、ごくごく普通の女性の日記そのものだった。

運の悪い事に折り合いの良くない上司の部署への配属、同期との他愛のないやり取り、プライベートの友人関係。なんだか急に悪い気がして頁を捲る指を早める。


---

△月×日

課長のパワハラがひどい。

私だけじゃなくて、母子家庭だからってお母さんの事まで悪く言うなんてあり得ない。


△月○日

何時も私の事を励ましてくれる松岡くん、格好良いなぁ。同期の子に相談したら彼女はいないみたい。


△月◎日

お母さんから野菜届いた、これで美味しいご飯が食べられる!課長なんか知るもんか!


△月△日

松岡くんに告白された。

嬉しかったけど、いきなり触られて怖かったから逃げちゃった、明日からどうしよう。

---

---

×月○日

気落ちばかりで日記を書いてなかった。

もしも私が死ぬ事があったら、お母さんに届くのかな。もしもなんてなければいいけど。


×月△日

毎日松岡くんが家にくる。

家の外で何を言ってるの?怖い。


×月◎日

今日は駅からつけられてた。会社では普通なのに。


×月×日

お母さん、助けて。

---


最後は飛び飛びとなっていた日記は其処で終わっていた。

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