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境界線の先の僕らにしか見えない隣人  作者: 伊勢海老
【第一章】徒歩15分のアパート
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第14話

「道祖神のおかげかもしれないな」


祐介のSOSに駆け付けた佐倉と無事に帰路を辿っている最中に彼がボソリと呟いた。


逃げ込んだ神社の入り口にあったものだろうか。朧気な記憶の中の、それは少し変わった形をしていたかもしれない。

地蔵との違いはよく分からないが、其処にあった事は僥倖と言えるだろう。


日はすっかり暮れてしまい、闇色に染まる街並みを二人で歩く。


佐倉の家の最寄り駅から彼の家までの道中で地蔵尊と道祖神の違いをこんこんと聞かされ、げんなりしていた祐介は、ふと先程の礼を述べていなかった事に気付いた。

自分よりも幾らか背の高い佐倉を見て、照れ臭いながらも口を開く。


「さっきは来てくれてありがとう。···助かった」


どのみちアルバイトが終わったら佐倉の家にお邪魔する予定だったので「情けない事言うな」と、突っぱねられる事も覚悟していたのだが、彼は二つ返事で祐介が身を潜めていた神社まで迎えに来てくれた。それがどんなに心強かっただろう。


「他の奴に連絡出来なかったんだろ?」


茶化す様に佐倉は言う。その表情は苦笑いを浮かべてはいるが、少し寂しそうに見えた。

そんなつもりはなかったが、まるで彼を誰かの代わりにしている様な気持ちになり少し気まずい。


確かに、今朝やアルバイトの最中、誰かに連絡をしようと思った時でさえ「幽霊を見た、助けて」とは言えなかった。


目には見えないモノが【見える】というのを他者に伝える事は恐ろしい。

「頭がヘンになった」「カルトに傾倒している」等、心無い言葉を言われるかもしれないかもしれない、と怖かった。

佐倉は勇気を出して伝えてくれたのに。


先程も延々と道祖神はこういう所にあるとか、役割等の注釈を詳しく伝えてくるのは暗に祐介の身を心配しての事だったのだろう。

祐介の心此処に有らずな対応が、友人としての距離が遠いものと捉え傷付いてしまった様だ。


改めて気付かされたが、彼は本当に昨夜の事に責任を感じていたのだ。


それとは裏腹に自分は「佐倉は悪くない」等と告げておきながら対処をせずに彼に甘えてばかりではないか。

これでは一方的に佐倉に責任を追わせているだけだ。


祐介は自らの情けなさに悔しくなり顔を歪めた。大きく息を吸い、腹の底から声を出す。


「ごめん!!」

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