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境界線の先の僕らにしか見えない隣人  作者: 伊勢海老
【第一章】徒歩15分のアパート
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第10話

2時間後に昼を一緒に摂る約束をして、調べ物があるという佐倉と別れ、祐介は駅前の引っ越しの際に世話になった不動産屋に訪れた。


「いらっしゃいませー。どうぞ此方にお掛け下さい」


まだ若いスタッフが声を掛けてきたので以前担当をしてくれたスタッフを呼び出す様に伝える。

久し振り会った彼は顔を覚えていてくれたらしく、暫く世間話で盛り上がる。


どう話そうものかと考えあぐねていると、紹介した物件の住み心地はどうだ、と嬉しそうに相手から現状に触れてきた。

この機を逃せない。笑顔の彼には申し訳ないが、本題を切り出す事にした。


「で、どうだった?」


ランチタイムでガヤガヤと客が賑わう中、佐倉は食後の珈琲を傾けながら祐介に問い掛ける。


祐介の確認した範囲では、心理的瑕疵物件ではあるが事件性はなく【女が殺された】という事実はなかった。

前の入居者も住んでいる期間は短かったものの、問題の訴えがなかったので個人的な都合という形で処理された様で事前通告する必要性はないと判断されたという訳だ。


その話に驚いた素振りも見せずに、佐倉はホッチキスで纏められた紙の束を取り出すと何枚か捲った後に祐介に手渡す。


それは新聞のコピーの様で【女性会社員自殺】の見出しの小さな記事が印刷されている。よく読んでみると約2年程前の記事で内容はパワハラで悩んでいた等、会社の体制を批難するものだった。

どうやら佐倉は祐介と別れた後に区民図書館に赴き、アパートのある地域に絞って過去の新聞を当たっていたらしい。


老人の言っていた事をヒントにして事件性のあるものから、ないものまでの若い女性の死亡記事をピックアップしたのだという。

差し出された記事以外は全て事件性のあるもので、恐らく此れが当たりであろう事がわかった。


世の中に知らされている事実が【自殺】だとすれば老人の言ってた【殺された】とは何だったのだろうか。


可能性の一つは、彼が狂人でアパートに入居する女性を快く思っていない為に牽制しているかもしれないという事。

もう一つは考えたくはないが、彼は殺人の現行犯を知っている、若しくは彼自身が殺人を犯してしまった可能性だ。


考えれば考えるほど仄暗いものが胸を渦巻き、分からなくなってきた。

佐倉と議論を交わしているうちに時間は過ぎて行きアルバイトに向かうリミットを迎えてしまう。

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