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短編

わたしの洞に朝が満ちる

作者: ケー/恵陽

ウォンマが夏フェスで以前提出したお話です。本館であるサイト、月明かり太陽館にも重複投稿しております。

 一番古い記憶は血生臭いものだ。

 血だまりの中に眠りこける己の姿。周囲には大きな塊があり、その肉を食らったことを覚えていた。塊の大きさは動物というには異様に巨大すぎた。その血肉を口にした瞬間体の奥が熱く燃えた。

 忘れることのできない記憶となったそれを抱えて、私は今日も人を装って生きている。

 けして来ない朝に絶望しながら、生きている。



 ミランダの朝は遅い。

 太陽が中天へ差し掛かったころ、ようやく深紅の瞳は外界の姿を映す。小さな森の奥でひっそりと暮らすミランダは御年七百歳を少し超えたところだ。しかし姿は十代の若々しさを保っている。

「ミランダー、起きてるー?」

 軽いノックだけで、家の扉を勝手に開けて入ってくるのはお隣さんであるルースだ。隣と言っても森ひとつ隔てているが、それでもお隣さんであることには違いがない。数日置きにやってきては、食料品を持って来たり、暇をつぶしにきたりする。くるくる変わる表情と、跳ねた髪が特徴のかわいい女の子だ。

「おはよう、ルース。昨日も来たな。どうした?」

 日を空けずに来ることはあまりない。首を傾げれば、わかりやすく眉を下げる。

「……おばあちゃんがミランダに会いたいって」

「ジルベールが? 弱っているのか」

 人とは違う寿命をもつと厄介なものだ。ミランダは泣きそうになるルースを宥めながら状況を聞き出す。命に別状はないらしいが、体調を崩して熱が出たらしい。気持ちが弱っているのだろう。それだけならばよい。ミランダはそっと息を吐き出した。

 いつも置いて行かれるのはミランダの方だ。

 どんなに親しくなっても、一緒に年を重ねることもできない。

 それでも友達なのだ。大切な人なのだ。ミランダには見送ることしかできない。それでもすこしでも共に生きていたい。

「ミランダ、ごめんね……」

「何がだ。呼ばれているなら、会いに行くよ。ジルベールもわたしに会えば、落ち着くさ」

 命に別状はないというのならば、本当に気持ちの問題だろう。ミランダは支度をすると、ルースと共に家を出る。



 結論から言って、ジルベールは何の問題もなかった。

 確かに少し熱があったが、会いたいと願ったのはこうでもしないと会いに来ないという愚痴を聞かせるためであった。ミランダはほっとしながらも、ジルベールの文句に口を尖らせる。

「なんだ。心配しておったのに」

 ミランダの反応は予想されていたようで、するりとジルベールに躱される。

「そりゃ、ありがとさん。でも来ないあんたも悪い。年々出不精になってきて、あたしらが居なくなったらどうするつもりだい。隣人はもっと大事にするもんだ」

 ニヤニヤと笑う友に居心地の悪さを感じる。八つ当たり気味にルースを睨めば、苦笑と共に謝られる。ジルベールからどう言えば来るか、教えられていたらしい。お茶とお菓子の準備をするルースに何とも言えず、ミランダは無言になるしかなかった。

「でも、本当にあたしらが居なくなったらどうするつもりだい」

 真剣な表情に変わった。

「そう心配せずともよい。昔は隣人がいない時だってあったんだ。森で菜園でもやりながら、のんびり暮らすさ」

「でも……」

「ジルベール、心配するな。私が強いことはよく知っているだろう?」

 ミランダの体はなかなか大きくならない。生まれて数百年経ち、漸く十歳ほど体が成長した。加えて数日食べなくても死ぬことはない。それは彼女の血肉が魔を含んでいるためだ。強大な魔力はミランダの細胞のひとつひとつにさえ行きわたっている。防御などしなくても普通の人間になど傷つけられるものはない。そして、魔力を持つということは魔法が使えるのだ。

「それに森に入り込む輩なぞおらぬだろう」

 ミランダの住処である森は小さくとも有名である。魔女の暮らす森として。

「いや、最近逆に力試しに来ようとしている者がいると聞いた。気を付けていた方がいいよ」

「それは初耳だな」

 普段は冒険者たちに避けられている森だ。間違って訪れた者たちも、ミランダのことを知ると逃げて行った。噂を聞いているのだろう。

 森の外でのミランダは、短期で獰猛、手の付けられない魔女様だ。強い魔法を使って、森に侵入した人を喰ってしまう。そういう噂を流したのはミランダ自身だ。まさか逆に人を呼び寄せるとは思っていなかった。

「とにかく気を付けて。世の中には変わったやつらもいるからさ」

「そうだな。気にかけておこう」

 謝辞を述べながら森への警戒を強くすることを決める。

 それからジルベールとルースと三人で他愛のない話でひとしきり盛り上がると、ミランダは森へ帰っていった。半ば無理矢理の呼び出しだったとはいえ、ミランダも楽しく時が過ごせたことに満足していた。心の奥が熱を持ったような感覚は久しく味わっていないものであり、気恥ずかし気持ちにもなった。だがそれにも増して、楽しかった。

 森の家に着いたときには既に闇の世界にまみれていた。暗がりであろうが、ミランダの視界に問題はない。寧ろ明るすぎなくてよく見える。だから異変にもすぐ気づいてしまった。

「ハッ!」

 家に入ってすぐに繰り出された剣を、一歩後退することでなんなく避ける。

 そのまま二撃目に移ろうとしたので、後退した体を今度は前に踏み出して相手の足を払う。そうすればころりと転げる。どうやら相手は人間の男のようだ。杖を召喚し、男の喉元に突き付ける。

「お前は誰だ? 何の理由をもってわたしに害を成すか」

 問い詰めるが男は杖に視線を固定したまま硬直している。このままでは拉致があかないので、杖を少し上に動かした。すると男の体が床に俯せになる。動こうとしているようだが、無様な呻きが聞こえるだけでまったく起き上がれる気配はない。

 まったく迷惑な男である。

 仕方がない、とミランダは指を鳴らす。すると男は呼吸が楽になったことに気づいたようで、ミランダに顔を向ける。だが体を動かすことは許されなかった。

「お前は誰だ?」

 再度問いかけるとキッと睨まれる。

「お前こそ誰だ! この森には年老いた婆さんが一人で住んでいると聞いたんだ! なんでお前みたいな娘がいる?」

 眉を潜めて、ミランダは男の頭を叩く。

「婆さんとは……。確かにわたしは七百歳を超えておるが、どこでそんな噂が広まっておるんじゃ」

「ななひゃく……!」

 目をこれでもかと開いた男に、苦い顔で先を促す。

「それで、何故森に入ったのだ。よもやその婆に会いに来ただけではないであろう?」

「違う! ……その、俺は竜の弟子が居ると知って会いに来たんだ。その弟子にしてもらいたいと思って……。あんたが竜の弟子だろう?」

 今度はミランダが目を丸くする番だった。

「今の世に竜、ときたか」

 かつては権勢を誇っていた竜はもう居ない。地上に姿を見せることをしなくなった。

「強くなりたいのか」

「ああ」

「どうして強くなりたいのだ」

「どうしてって……と、とにかく強くなりたいんだよ!」

 面倒だと思いながら、ミランダはとりあえず男の拘束を解いた。動いたところで彼女には簡単に倒すことができる。

「まあいい。では、好きにするがよい。わたしに迷惑はかけないでおくれ」

「え?」

 男を放置して、寝室に鍵をかけるとミランダはさっさと眠ることにする。放っておかれた男はあまりの展開に呆然とするしかなかった。



 すっきり目覚めるといつもの如く甕の中の水で顔を洗おうと寝室から出る。だが出た瞬間何かに躓いた。足元を見て思い出す。

「ああ、そういえば……」

 昨夜見知らぬ男に襲撃されたのだった。

「お前、二度も俺を踏みつけやがって……」

 睨みつけてくる男に、あからさまに顔を顰める。

「何故まだおるのだ」

「お前、竜の弟子だろう!」

「そんなもの知らぬ。さっさと去れ」

 渋面を作るがミランダはそのまま男を放置した。それより自分のことをいつも通りしたかったのだ。ルースからもらった卵にシソの葉を絡めて巻き、兎肉と野菜を炒めたもの。そしてパンをつける。卵とパンをかじると横から唸り声が響いた。

 男がいた。

「お前、狩りに行かなかったのか」

 家の扉自体には鍵をかけていなかった。ふるふると首を揺らす男に嘆息する。次いでパンと兎肉の炒め物を少し皿によそってやる。ミランダと皿を交互に見て、恐る恐る男は口をつける。途端、目を輝かせた。

「うまいか?」

 今度は縦に首をブンブン振る男に、ミランダはちょっと笑った。先刻までの警戒心は何処へいったのか、男は急に機嫌よく語り始めた。

「あんた意外といいやつだな! 俺はロワナ。あんたは?」

 変わりすぎるロワナの態度に戸惑う。しかし悪いやつではないのだろう。餌付けされただけでコロッとなつかれるとむず痒い気持ちになった。

「……ミランダだ」

 名乗ると煌めくロワナの笑顔が降ってくる。

「ミランダ! そっか、よい名前だな」

 屈託のないロワナにむず痒さが増した。内心の動揺を悟られまいと、ミランダは平静を保ってみせる。

「それより、結局何をしにきたのだ」

 昨夜から続く質問にまだ答えてもらっていない。しかし問いかければ、今度は響くように答えが返ってきた。

「……答えたんだけどなあ。強くなりたい。竜の弟子に会って、俺を弟子にしてもらう。それだけだよ」

 ただしすべてを語るわけではないらしい。ミランダにはどうしようもなかった。どうしたいのか、どうすればいいのか、ロワナの考えがわからない。

「では、お前はどこで竜の話を聞いた? どうやって此処まで来た? 一人ではなかろう」

 竜などというものはもうおとぎ話の中にしかない。森で暮らしていることを秘密にしているわけではないから、住人がいることは知られているかもしれない。ただどんな人が暮らしているかは、広まっていないはずだ。

 森も小さいとはいえ慣れていないと迷う。同じ場面ばかりにしか見えない景色に戸惑うことだろう。その中をどうやって来たのか、ロワナはミランダの家まで訪れている。

「嘘を吐くと為にならぬぞ」

「……嘘ではないよ」

「隠し事も嘘の一つと言えよう」

 笑みを湛えたまま告げれば、ロワナは困った表情になる。垂れ下がった眉にミランダは心の中でも口角を上げる。

「厳しいなあ。でも俺が一人で来たのは本当だよ」

「強くなりたいというのは何故だ」

「そんな複雑な理由はない。ただ俺は……俺は、竜の弟子になれなかったから。強くあったなら弟子になりえたのかと思ったらそれしか追い求めるものがなかっただけだ」

 竜の弟子、とやらになるには相当な努力が必要らしい。ミランダは自分には関係がないはずだと眉間に皺を寄せた。

「竜の弟子になりたいのか」

「ああ。もう、なれないけどな」

 なりたいと言いながら、ロワナはゆるゆると頭を振り俯いた。

 純粋な疑問でもってミランダは首を傾げた。竜を捜して弟子にしてもらえばいいのではないか。そのために強くなりたいと今申したのではなかったのか。

「ミランダは知らないのか」

 ロワナは心底哀しそうに呟いた。

「竜はもういないんだ。最後の竜はもう死んでしまった」

「……いない? もう一匹もいないのか?」

 まさか、とミランダはロワナを見返した。かすかな期待を寄せたものの、それはあっさりと首肯されることによって裏切られた。

「最後の竜の弟子が残っている以外、他にはもういなくなった」

 急激に体の力が抜ける。最後の竜をミランダはおそらく知っていた。知ったのは、その竜が死んでからだ。けれど弟子になど会ったことがなかった。弟子がいたのならそれこそ竜を助けてほしかった。

「ミランダ~」

 と、扉が開かれる。常に開かれている家の鍵をこの時ばかりは掛ければよかったと思わずにいられなかった。のんきにやってきたルースは緊迫した室内の様子に次の言葉を失くす。

「ルース……」

 戦慄くミランダの様子にルースは驚いた。駆け寄り、大人びた表情を浮かべるミランダがいないことに気づくと、子どもをあやすように彼女を抱きしめた。そして原因であろうロワナを睨み付ける。

「ミランダに何するのよ! てか誰!」

 予想外の闖入者にロワナは顔を顰める。

「……ロワナだ。竜の弟子に用がある」

 ルースの腕が強くなる。ミランダは少しだけ落ち着きを取り戻した。

「ミランダに何かする気?」

「違う! ただ会いたかったんだ」

「何故?」

 鋭い声が飛ぶ。

 一瞬ロワナが息をのんだ。竜の弟子に会って、強くなりたかった。それ以外の理由があるのだろうか。

 ミランダがじっと見つめていることにロワナは気づいたらしい。

「俺は竜の弟子の血筋なんだ」

 腰に帯びた剣を持つと、ミランダに視線を向ける。ロワナの剣はぼろぼろだった。刃こぼれと錆の浮かぶ。しかし昨夜はそんな状態であるなど思えなかった。普通に剣の先はミランダを斬ろうとしていた。そこに刃こぼれや錆は見えなかった。

「この剣は竜の弟子だった祖父のものだ。俺が譲り受けた。だが、見えるだろう。錆が浮かんだこの状態を。竜に近しいものでないとこいつは臍を曲げる。戦う時だけは辛うじて力を貸してくれるんだけどな」

 自嘲するような笑みを浮かべ、ロワナは剣をミランダに差し出した。

「持ってみろ」

 戸惑い、ルースを振り返ると頷かれた。何故か剣を持つことには異論がないらしく、ルースは励ますようにミランダの背を撫でた。

 ゆっくりと柄に手を這わす。赤黒く沈んだ色の柄は鈍く輝いている。竜の鱗が輝く様によく似ている。

「……あ」

 思わず取り落としそうになるミランダの手をその上からロワナが握りしめる。

「だから言っただろう。俺じゃ臍を曲げるんだ」

 ミランダが手に取った途端輝き始めた刀身はまるで喜んでいるようだった。そして嘘のように刃こぼれも錆もなおっていく。

「ミランダが気に入ったらしい」

 剣を返すと、今度は輝きも消え、錆が浮き始める。

「おーい……」

 少し泣きそうになりながら、鞘にしまっていく。

「強くなればこいつも認めてくれるらしいんだ。だから俺は強くなりたい。そしてできれば竜の弟子に師事したい」

 そう言ってミランダを窺う。

 正直ミランダは困惑していた。ルースはロワナを観察している。まだ少し警戒しているが、少し信用したらしい。だが問題はそこではないのだ。

「ロワナ、わかっているのか? わたしは竜の弟子ではないのだが」

 その言葉にロワナはおろかルースまでもが目を丸くする。何故二人がそんな顔をするのかわからぬミランダは眉尻を下げるしかなかった。

「もしかしてミランダは知らなかったの?」

「何をだ」

 ルースは口を開いたまま固まった。

「竜の弟子っていうのは、そのまま竜を師匠に迎えた人じゃないのよ」

「そうなのか?」

 知らなかった事実にびっくりすると、ルースとロワナは頭を抱えた。

 ミランダはただどうしたらいいのか、二人を眺めるしかなかった。



 竜という生き物は不思議なもので、こうと決めたらそうしかいかない。融通のきかない頑固者らしい。特に種族が滅びに向かうと知っていながら、彼らは躊躇しなかった。愛情を傾ける相手に文字通りすべてを渡す。そして受け取った相手は竜の知識も力も寿命譲り受けるのだ。

 竜の弟子とは、竜から全てを委ねられたもののことをいう。

「そんな……」

 ミランダはこれまで自身を疎んできた。人とは違う力を持ち、共に老いていくことを許されないのは竜の血肉を口にした咎だと思っていた。

「そっか、ミランダが竜の弟子になったのは幼い頃だと聞いていたけど知らなかったのね」

「ルースは知っていたのか」

 申し訳なさそうに頷く彼女を、ただ呆然と見つめた。

「ミランダは覚えている? 私のお婆ちゃんのお婆ちゃんのそのまたずっとずっと先の最初に会ったお婆ちゃん。ミランダが助けて共に森を傍に暮らし始めたこと」

 ミランダの記憶力は生憎とよい。切っ掛けさえあれば、昨日のことのように思い出せる。

 竜の血肉を噛みしめ、腹を満たした。そのことによって得た知識はミランダの幼い部分を隠してしまった。身体能力さえも高くなったミランダは一人で生きていくことにも支障がなかった。魔法を使って獣を狩り、果実を摘み、一人暮らしていた。

 そんな時、出会ったのがルースとジルベールの遠い祖先であるプエルだった。大きな獣に襲われていたところを助けたのだ。助けた後、プエルにお礼を言われてミランダは泣いてしまった。

 一人はさみしかった。

 一人は――とてもさみしかった。

 一緒に暮らすことはできない。けれどそれから二人は縁を持つことになったのだ。プエルだけではない。彼女の娘のキラルとも、その孫娘のルシールとも、縁の続く限りの娘たちと傍で暮らしてきた。思い出すと当時の感情がミランダの心に溢れ出る。ルースと目が合うと、自然とミランダは微笑んだ。

「傍にいてくれて、ありがとう」

 ルースの手をとる。力を込めれば、その分応えてくれるものがある。

「ロワナ、お前はまだ竜の弟子の弟子になりたいか」

 黙って待っていてくれたロワナに顔を向ける。彼はルースと握った手をじっと見て、それからミランダの姿を目に映した。労わるような視線にむず痒くなる。

「なりたいよ。けど、それ以上にやりたいことができた」

「そうか……」

 ロワナから竜の弟子について聞けるならば、とミランダは少しばかり思ってもいた。しかし都合のいい話だったようだ。少し残念に思いながら、答える。

 だが何故かロワナはにやりと笑う。そして手を差し出してきた。

「この手をとってくれ。俺の剣はお前を認めた。だが俺のことも認めてみせる。ミランダ、竜の弟子の弟子じゃない。俺をミランダの弟子にしてほしい」

 まっすぐ向かってくる視線は眩かった。

 竜の弟子だと言われた。

 その弟子になりたいと言っていた。

 そう言った同じ口からミランダの、という言葉が飛び出した。

 ミランダは人ではない自分を疎んでいた。恥じていた。後ろ向きな気持ちが占拠していた心は、いつの間にか明るいものに変わっていた。



 閉じきったカーテンの中、寝室を後にする。

 暗い夜が嫌いだった。やさしい朝は願ってもあらわれなくて、ルースたちに一時慰められるだけ。

 だが一人で布団にくるまる日々はもう終わったのだ。健やかな寝息がかすかに隣の部屋から響いてくる。今日からは一人ではなくなった。共に歩むと言ってくれた人がいる。支えていると知った人たちがいる。常よりも早く目覚めたミランダの顔は明るい。

 閉じきったカーテンを開けば、もうすぐ夜明けの時刻である。

 ミランダに朝が訪れる。



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