入学式
桜が満開に咲き乱れる中、富士岡中学校の校門を僕はくぐった。
今日は入学式と説明会のあと部活動見学があり、希望者は体験入部もできるらしい。
校門をくぐると朝練をしている部活がいくつかあり、それを見ながら体育館へと向かって行く。
強豪であるサッカー部、陸上部や野球部などが練習をしている。
陸上部の1人がダッシュを繰り返している。
ダッシュの姿を見ていた僕は不思議とその姿に魅了されていた......というのは大袈裟だが、その姿はまるで風そのものの様だった。
桜が風でヒラヒラと舞い落ちる中を、すり抜けるように駆け抜けていく姿を僕は少しの間、眺めていた。
もちろん、僕が入るのはサッカー部のつもりだが、この学校では2週間の体験入部期間があるので、陸上部も体験してみてもいいかなと思ったりもしている。
クラス発表や説明会などが終わり、体験入部が始まった。
僕は着替えると先輩の説明を聞き、軽いアップをする。
アップをしながらザッと周りを見て人数を確認する。
およそ50人前後だろうか、今年の入学者が300人ちょっとだから6人に1人がサッカー部へと入部するつもりのようだ。
2人1組でのパス練習が始まりそれぞれがペアを作り出す。
僕は相手を探している1人に声をかける。 「相手がいなかったら僕とやらない?」
ひょろながいと表現するのが妥当な男の子はしどろもどろになりながら頷く。 名前は小西優馬君というらしい。
小西君は身長が僕を含めた他の生徒よりも特に高い。
本人に聞いてみると、身長は160cmを少しオーバーしていて、小学生の時はいきなりサッカー部へと入部させられたらしい。
「高崎君はサッカー部に入部するつもりなの?」
手で投げたボールを胸でトラップしながら小西君は僕に聞いてきた。
「ここの学校はサッカー部が強豪だからね、一応、前のクラブチームではFWでストライカーだったからね」
「ふーん、そうなんだ」
「小西君もサッカー部に入部していたんだよね?ポジションどこだったの?」
「僕も一応FWだったんだよね、エースストライカーとかではなかったんだけど」
いくつか言葉を交わしながら僕と小西君は2人でパス練習やトラップ練習をした。
2人組のパス練習やトラップ練習が終わると教師の人が体験入部の終わりを告げると帰宅するように促し始めた。
僕は帰り支度を整えると明日からの授業への期待を持ちながらも疲れを感じながら家に帰った。