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結果発表

 合格でした。


 何がと言われるかもしれないが、もちろんステージ選考会のことだ。結果は先に。これこそが社会人としてもっとも大事なことだと思う。


 部室で結果を伝えたところ、リアクションは様々だが、もちろんみんな喜んだ。


 「ま、選考会で落ちるわけないわよね」


 鼻から落ちるとも微塵も思っていない佐藤芳佳。


 「練習したからのー」


 なんかよく分かってないけど喜んでいる樹木。


 「本番……あーなんか怖くなってきた。どうしよう太田さん!」


 「どうしよう市井さん」


 珍しく太田さんもワチャワチャと混乱している。そして、後方彼氏面のアルファは「分かっていたぜ」と言いながら大きく頷いていた。


 この合格を手に入れるためには―――俺の血の滲むような暗躍行為が―――ということは別になかった。


 副会長である時流いわく

 

 「レン君が文化祭実行委員会として頑張っているのに友達を落とすわけありませんよ」


 とのこと。どうだ! 俺のおかげだ! なんていうのは冗談だ。 


 実際、仕事ぶりを評価してもらえるのは嬉しいが、佐藤芳佳達の頑張りで合格と言って欲しかったこともあった。なので、俺は時流に、


「もし俺がいなかったらどうでしたか?」


 と聞いた。この答えが事実を述べる訳ではないのは十分分かっているつもりだ。


 「ギリギリ合格ですね。ちょっと演奏が拙いけど、頑張りは見えたから。あとボーカルは素人とは思えないくらい上手だったわ。カラオケだったら余裕の合格だったんじゃないかしら」


 その言葉を引き出せただけで十分だった。


 だからこそ俺は、みんなの前で自信を持って合格と伝えられたのかもしれない。言い方を変えれば、「ボーカルは良いけど周りが足を引っ張っているよね」という辛口批評なのだが、佐藤芳佳は声優として歌うプロなのでこれは当然の感想だと思う。


 逆にボーカルが評価されなかったら佐藤芳佳が可哀想で仕方がなかったと思う。



 とにかく文化祭では彼女達の演奏が見ることができることになった。


 特に市井さんは、本来は文化祭で何も思い出がないような会話をしていた。たしか「文化祭の片付け大変だったね」みたいな会話があったのだけは覚えている。


 それが舞台に立ち、バンドの一員としてパフォーマンスすることになった。


 『ひまわりでいず』での市井さんは楽しんでいない、という思いから強引に変化させた市井さんの学生生活はここまで来てしまった。


 実際、今の市井さんはこの状況をどう思っているのだろうか。楽しんでいるのだろうか。


 まあ、そんなことを考えるのは無駄なことだ。俺は市井さんが楽しいと思う日常を選択してきたつもりだ。


 「本番も頑張ろうね!」


 市井さんの笑顔は一ノ木さん達とおしゃべりしていた時と同じものだ。俺が心の底から惹かれた笑顔だった。


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