選考会
「そろそろステージの選考会をやるんだろう? いつやるんだ?」
と桜城が言った。俺はキーボードを叩く手を止め、振り返った。
生徒会室には俺を含めて桜城と時流の三人だけ。
「あれ? 昨日案内出すよって時流に伝えたけど?」
「聞いてないぞ。時流そうなのか?」
「フフ、言ってませんからね。そうですよ」
「まったく。報連相はしっかりしてもらわないと」
「わざとです」
「ぐっ……まあ、便りがないのはないのは無事な知らせ。準備は順調そうだな」
「おかげ様で」
気ががかりないと言えば嘘になる。もちろんそれは、我が地域調査部のバンド参加だ。
「前にも言ったが、実力不足はしっかり落としてくれ。文化祭を素人のカラオケ大会にしてはいけない」
「わかってます」と返事をする。会議の時のも言っていた通り、今年の文化祭のステージに立てるのは、部活や学外活動を積極的に行っており、さらに実力がある人間でなくてはならない。
「あら? そしたら会長は出られませんね」
時流が楽しそうに言った。どういうことだろう。参加申込書に会長の名前なんてなかった気がしたが……。
「お、おれは出る気なんてないぞ」
会長が凄く焦っている。
「参加者名簿を拝見したところ、学内バンドに見知ら名前がありました。調べさせていただきましたが、あら不思議。なぜか会長のお名前がバンドのメンバーさんから出てきました」
「ぐ……。……が……頑張ってれば……いいじゃないか。それに! 実力もちゃんとある……はずだ」
ああ、あのバンドのことかと思った。
学内のバンドであるが、一名うちの学校の生徒でない人物がいた。時流に相談したところお腹を抱えて笑い出したのを覚えている。いつもはクールな副会長が、こんな風に笑うのかと驚いたものだった。
会長の名前だったのか。偽名を使ったのだろう。時流の反応的に、その時点で目星が付いていたはずだ。じゃなければ、あんな大笑いはしない。
「平等に審査いたしますからね」
「そこはお手柔らかに頼むよ……」
「ダメです」
時流にピシャリとした言葉を返され、桜城はがっくりと肩を落している。その様子を見ている時流は本当に楽しそうだ。会長いじめが趣味と言われても驚かない。
「ところで、地域研究部の申し込みがありましたが、レンさんも参加されるのですか?」
「いえ、俺は参加しません。部員の女子達が参加します」
「残念、審査を甘くしてあげましたのに」
「それなら出ればよかったかな」
「レンさんから見てどうですか? 選考会は通りそうな実力ですか?」
「ボーカルだけなら間違いなく通ると思います。演奏は……努力中です」
「ふふ、楽しみですね。会長はああいう風に言ってますが、違う分野に挑戦する気持ちは否定はしません。しょせん学校の文化祭です、多少の遊びがあってもいいと思います。将来の糧になれば」
「そうだよ。もしかしたら、将来俺はすごいアーティストになるかもしれん」
桜城は元気を取り戻したようで、胸を張って会話に入って来た。
「不可能です。これ以上ふざけてますと、今度カラオケに行った時に歌わせませんよ?」
「ぐぬぬ……」
「会長、歌へたくそだからね~☆」
「そう見えないですが……」
ちょうど小鞠と一ノ木が帰って来た。
「今ならステージの下見オッケーぽいよっ☆」
「案内状もこれで全員に渡したかな」
「ありがとうございます」
ステージの準備と、昨日渡しきれなかった選考会の案内状の配布を二人にお願いしていた。選考会まで日がない。佐藤芳佳達は上手演奏できるのか……。心配は尽きなかった。
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