僕の知らないひまわりでいず④
一週間というのは早いものだ。文化祭の準備でバタバタしていることもあるが、社畜時代以来の時間の速さを感じる。
「さっさと起きろよ、お兄ちゃん。芳佳がそろそろ来るぞ」
という、全く可愛げのない言葉を偽の妹から浴びせられることにより、僕は目を覚ましたのだった。
時計を見れば12時近い。確かにそろそろ起きる必要がある時間ではあった。佐藤芳佳とお昼を食べる約束をしていた。
昔の社会人用語で言えば花金、最近では金玉キラキラ金曜日が近いかもしれない。家でのんびりと映画を見ていた時だった。
『6巻読んだよ。明日会える?』
というメッセージが入った。
読んだよ、というのはもちろん漫画版の『ひまわりでいず』の事だ。
花火大会での約束もあり漫画を貸していた。アプリでは読めないので紙媒体の物を直接渡したのだ。(ファイルの受け渡しは佐藤芳佳が嫌がった)。
アプリ形式で配信されていれば話は早いのであるが、流石にこの世界に近すぎる作品は影響を与えかねないということで樹木が配信版を消しているらしい。
自分も最新11巻まで読むのに時間がかかったが、佐藤芳佳に関しては6巻を読むことに1ヶ月程度の時間を要したことになる。
とにかく、さっさと着替えをしなくてはいけない。すいぶん慣れた間柄とは言え、寝ぐせにパンイチ(パンツ一枚)での出迎えは問題がある。佐藤芳佳が主人公であるならラッキースケベに該当するのだろうが、そんなサービスは『セクハラ』という言葉で否定される。女性にラッキースケベはないのかもしれない。
何回朝を迎えても、髭を剃る必要がない幸福に勝る物はないと実感する。ちゃちゃと支度して、はいオッケー。まさに20秒で支度完了だ。
その時だった。玄関の呼び出し音が鳴った。一応インターフォン越しに来客者の確認はする。
「おはよう。市井です」
「はいはい、佐藤芳佳か。今行くよ」
「えー! なんで分かったの?」
「最近の市井さんは名乗らないんだよ。きたよ~って言うだけ」
「なるほど~。勉強になる」
インターフォンを切り玄関に向かった。
***
天気は快晴。9月になったとは言え、まだまだクソが付くくらい暑く、蝉も元気に繁殖活動をしている。地球温暖化うんぬんかんぬん。うんぬんかんぬん。最近はSDGs?がうんぬんかんぬん。面倒くさいので割愛。ラノベ的な一人語りは僕には向いていない。
佐藤芳佳の私服は相変わらずかわいい。その言葉で十分だったりする。
「どこで食べようか?」
「どこでもよいぞ」
もちろん樹木も一緒だ。今日は転生者二人に死神一人、話の内容も内容なので、気兼ねなく話せるメンツだったりする。
「シャンゼリアでいいんじゃないかな? 安いしピザ食べたい気分だし」
俺の気分はイタリアンだった。ピザとパスタが食べたくてたまらない。
「あ、シャンゼリ『ヤ』なんだってさ! 『ア』じゃなくて『ヤ』」
「こ、細かいな……どっちでもいいよ。行くの? 行かないの?」
「いく~」
「よし、決まりな」
佐藤芳佳の振舞に変わったところはない。これなら心配いらないかなと思う。思い詰めると結構危うい子なので、油断はできないが。
読んでいただきありがとうございます。




