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ver1.02と下請け

 「ありがとう☆ じゃあこれ読んでおいてね」


 粉塵爆発のような笑顔の小鞠から2枚プリントを渡され、俺は生徒会室を後にした。生徒会の手伝いなんて面倒でしかないと分かっていた。しかし、小鞠と時流に押し切られた形となってしまった。まったくもって不覚である。


 二人の悲しげな横顔がうんたらかんたらという言い訳をしようとも思わない。


「はあ、良い匂いがしたな……」


 とりあえず感想を独り言として呟いておく。SNSでいうUwitter的な独り言の壁打ちだ。特に意味はない。


 プリント内容を一読し、仕事内容を確認することはもちろん大事なことである。


 しかし、それ以上に、この世界が『変化』したことに気付いた。


 そう、見覚えのないリンゴ社のタブレットが鞄の中に入っているのだ。なぜ高校生がタブレットを学校に持ってきいるのだろうか? 先生に没収されてしまうんではないかと、気が気ではない。


「よっ! お兄ちゃん。久しぶり」


 迎えに来たのは樹木じゅもくだった。


「久しぶり? さては、またこの世界をアップデートしたな?」


「おお、分かるのか! さじずめアニメ世界ver1.02じゃ」


「今度は何年後だ?」


「一年ちょっと時代を進めておる。他にも色々微調整しておるがの」


「タブレットはその微調整の一部か?」


「正解じゃ! 今の学校にはタブレットが必須じゃからな。リアリティは大事だからの」


「なん……だと……」


 タブレットを学校で使用できるなんて、エッチな動画を学校で見放題です言っているようなものだ。スマホのサイズではやはりもの足りなさがある。どうせ学校レベルのセキュリティなんぞたいしたことはない。今度アルファと部室で動画漁りをしよう。


「くだらないことを考えとるな」


「よく分かったな」


「顔に出てるからの」


 まあ、世界がアップデートされたからといって困ることは何一つない。俺は全力でこの『ひまわりでいず』の世界を楽しむだけである。


「ん? 樹木が背負ってるのはなんだ?」


「おお! これか! エレキギターじゃ!!!!!! 文化祭で芳佳がボーカル。私はギターじゃ!!!」


「え? ギター引けたの?」


「一日6時間練習すればなんとかなるはずじゃ!」


 その数字の根拠はどこから来るのだろうか。


「生徒会の仕事を手伝うことになっちゃったし、さすがにステージで素人芸は見せられないから真面目に練習はしないとな」


「そうじゃな。時代は『ひとりぼっちのロック』じゃ!」


「いや、そこはみんなでやろうぜ。一人で出んのかよ」


「分かってないの~。時代は『ひとり』なの」 


 ああ、いつも通りアニメか漫画の熱にやられてんのか。俺が知らないとなると、アップデート後に流行った何かなのだろう。


「どうせ最近の漫画かアニメだろ? あとで俺にも見せてくれよ」


「もちろんじゃ!」


 ニッコニコの樹木を見ていると、かなり期待できる作品なのだろう。楽しみだ。


 ちらと見たプリントには『ステージ設営』『出演者・出店取りまとめ』などの文字が見えた。これは面倒そうだ。クラスの実行委員の枠を超えた手伝いであることに間違いはない。


 あーやっぱり受けなきゃよかった。後悔先に立たずである。頭をかかえるしかない。

読んでいただきありがとうございます。連載の一つが無事完結してこの作品に戻ってくることができました。度々お待たせして申し訳ございませんでした。さすがにもう当初から読んでいらっしゃる方はいないような気がしますが……。再び定期更新を行っていく予定ですので、お付き合いいただければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

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