実行委員会前日放課後
「はあ……」
明日から文化祭の実行委員会と考えるとため息が出てしまう。明日のこの時間は一ノ木と会議に参加しているはずだ。部室での穏やかな時間は奪われたと言っていい。
「男気を見せたの!」
樹木がニコニコと満面の笑みでコーラを飲んでいる。元を辿ればこいつが僕の名前を言ったのが原因でもある。
「気ままな放課後ライフを壊した自覚がないようだな。帰りが遅くなったら晩飯の支度は誰がやるんだ?」
「ぐ……。そ、そりゃあ誰が良いですか? と先生に聞かれてはお兄ちゃんの名前を答えないわけにはいかないじゃろ。私には他にこれと言った知り合いはおらん」
「うんうん! 私もレン君が適任だと思ってたよ! 夜のごはんは私も手伝うから心配しないでね」
市井さんが隣で力強く頷く。なんという優しい言葉。せっかくなら一緒に実行委員会をやりたかった。
「陰から実行委員会を操ってください……」
太田さんも同調しているが、陰からって、僕は刺客か何かだろうか。
「まあ、実行委員会に近い人間がいた方が私達もやりやすいし、色々無理も聞きそうだしーでいい人選だったよ」
クラスの出し物が演劇となり大満足な佐藤芳佳が続く。
「てか一ノ木さんと一緒なのは、お前的にはいいのか?」
僕は小声で佐藤芳佳に聞いた。
「ん…んんん……そこは後でゆっくり話そうねー。少し心配だし……」
少し歯切れが悪く答える。心配が少なくなったとは言え、やはり一ノ木達と急接近する可能性がある以上穏やかではいられないだろう。僕としては、市井さんが向こうのグループと仲良くなり、このグループから抜けることはないと思っている。
そのくらい今の市井さんは『ひまわりデイズ』の時より生き生きしているように見える。
「俺も手を上げればよかったなあ」
低い声の突然のボヤキはアルファだった。この流れで男の声が混じるところが日常系作品ではありえないと思う。
「なんでよ?」
「だって一ノ木さんと一緒なんだろ? めちゃかわいいし,
羨ましいわ」
アルファが鼻息を荒くして答える。女性陣はいつもの事なので軽くスルーをしてそれぞれ別の話を始めている。唯一、太田さんだけ少し不満げに見える。太田さんにアルファは『気になる異性ムーヴ』をしているだけに、この態度は流石に気になるのであろう。
あとでアルファは説教だ!
「まあ確かにかわいいよね」
それはそれで、アルファへの返答また別だ。正直に答えなくてはならない。確かに一ノ木さんはとてもかわいいのだ。
それもそうだろう。『ひまわりデイズ』の主人公であり作品の顔なのだから。彼女がこの漫画とアニメの中心であり、放課後に彼女たちが集まる理由だったからだ。連載雑誌で単独キャラで表紙も務める。もちろん僕も大好きなキャラだ。
そんなの彼女と文化祭実行委員会をやっていく。これは、よくよく考えればとてつもなく幸運なことではないか? やばいやばい。喜びが顔に出始めてる気がするし、何やら一部女性陣からの目線がきつい様な……。
どうやら佐藤芳佳から個別にスマホに連絡が届いでるようだ……。今日の夜は荒れそうな気がする。
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