9月1日
「ようやく昼か」
大人になれば長期休み明けの授業に耐えられると思ってが、その目論見は甘かったようだ。辛い、辛すぎる。受験という目標がないこともありやる気が全く起きない。
「いきなり丸一日の授業は辛いのう」
樹木も机に突っ伏しグッタリとしている。
「午後の最初の授業はなんだっけ?」
「文化祭実行委員に出る人間とクラスの出し物を決めるらしいぞ」
「それなら寝れそうだな」
「寝るのか? せっかくの文化祭イベントなのに」
「その辺のイベントは昔から陽キャさんにお任せしてる」
「なるほど。それも賢明じゃな」
「どーん!」
そんな声と共に僕の肩が重くなる。
「佐藤芳佳か。重いんだけど」
「女性重いは禁句でしょー。文化祭やる気なしはいただけないなー」
「この手のイベント好きそうだな」
「まあねー。やっぱりみんなの歌いたいって欲求は強いよ」
「やっぱりバンドとかが出るようなステージあるんだ」
「確認済みです!」
佐藤芳佳はムンと胸を張る。ワクワクが伝わってくる。本当に楽しみにしているのだろう。
「私も出たいのー。カラオケは好きだ」
「出よう出よう! ゆうちゃんとオセロちゃんも出るよね」
「もちもちです……」
太田さんは二つ返事だ。控え目に見えて意外と積極的な部分も多い。
「どうしようかな?」
市井さんは少し迷っているようだ。
「やろうよー。間違いなく楽しいよ」
「そ、そうかな? やってみようかな?」
市井さんはキッチリ押し切られたようだ。
「決まり! あとはアルファだね」
「総合演出という形で」
どういう参加の仕方だ。
「はいはい決まりね」
もはや相手にしていない。
「で、レンはどうする?」
この状況で断れる奴はいない。
「わかったよ。僕も参加する」
「やったー」
イエーイと皆は手を取って喜んでいる。前に出るのはあまり好きではないのだが仕方がない。しかし、一つ気掛かりがあった。
「カラオケで出られるのか?軽音楽部とかちゃんとした音楽じゃないとダメとかないよな?」
「ん? ん~?」
佐藤芳佳が困惑している。そこは確認していなかったようだ。
「実行委員会が出来たら聞いてみよう。それに一応僕達は『地域研究部』という文系部活だし、何かしないと潰されそうだ」
「言われてみれば! そしたら歌う地域研究でいこー」
「なんだそれ」
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先生が黒板に大きく丸を書く。
「クラスの出し物は演劇で決定しました」
教室に拍手が響く。佐藤芳佳の強烈なプレゼンにより皆を納得させた形だった。歌うだけでなく演技もしたい。その強い気持ちがよく分かる。久しぶりに『葵 聖』としての佐藤芳佳を見れるのは楽しみでもあった。
続けて先生が大きく丸を書く。
「クラス代表の実行委員は『松本 レン君』と『一ノ木 青花君』に決まりまし
た。明日の放課後、早速第一回実行委員会があるからよろしくな」
より大きな拍手が教室に響く。「頑張ってこい!」「一ノ木さんよろしくね!」「さすがお兄ちゃん!」「ひかりちゃんの頼みじゃ断れないよなあ」という声も聞こえる。
まさかのクラス代表文化祭実行委員―――。どうしてこうなった―――。
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