エンドエイト
8月20日、夏休みも終盤となった。夏のイベントももう残ってはおらず、暑さ以外は秋の足音を感じさせてきた。
「終わったー」
もうすぐ昼になろうかという時刻、ついに夏休みの宿題が終わった。
大人になってからやる宿題も悪くない。
と、言いたいところであるが、正直その感想は最初だけで、後は面倒この上ない作業だった。
「今頃宿題を終わらせるとは怠け者じゃな」
ひょっこり部屋を覗いて来たのは樹木だった。
この世界をいくらでも改変できるなら宿題なんぞやらなくてもいいだろうに、そこはキッチリしているようで、夏休み早々終わらせてしまっていた。
「夏休みの宿題はな、毎日コツコツやるのが正しいんだよ」
「なるほど、そういう考えも一理ある。しかし、レンは1日でまとめてやってるから、その理屈は通用しないのう」
「よく見てるな」
「遊んでももらえず、カップ麺を放り投げられ昼夜と貧しい食事を強いられた理由じゃからな。知らない方がおかしいぞ」
「嫌なら代わりに作ってくれって頼んだじゃないか」
「作れないって言ったと思うがのう……」
樹木が不機嫌そうな顔で僕を顔をジッと見ている。食べ物の怨みは怖いという先人の知恵もある。まあ昨日のカップラーメン生活は僕もなのだが、ここは樹木のご機嫌を取ってやらないといけない。
「宿題終わった記念でどこかに食べにいこうか」
「おお! いいのう行こう行こう。さっそく着替えて来るぞ」
先程までの不機嫌さはどこへやら、満面の笑みで部屋を出て行った。分かりやすいやつだ。
「わたしも行っていい?」
時間差でひょっこり部屋を覗いて来たのは市井さんだった。実は彼女は僕の家に入り浸っている。こう言うといかがわしい関係のように聞こえるかもしれないが、ただ樹木とゲームをやりに来てるだけだったりする。上の階だしね。
ここに佐藤芳佳が加わってくるのが日常なのだが、今日は用事があるらしい。それでも午後に顔を出しそうな気もするが。
ちゃちゃっと着替えをして外に出る。
「早くしろよー」
「どこで食べようか?」
腹ペコ姉妹がお待ちかねだ。
3人グーグー腹を鳴らしなが駅前へと向かう。向かう先は有名イタリアンファミレス。安い、美味い、長居出来るの三拍子だ。勢いよくに店内に流れ込む。コレとコレとコレ。
「いただきます」
「ごちそうさま」
運ばれて来たパスタとピザは一瞬で消え去った。腹ペコ兄妹には容易いこと。デザートのアイスを突きながら、ドリンクバーから持って来たコーヒーを啜る。
「夏休み終わっちゃうね」
市井さんがオレンジジュースをチマチマと啜りながら言った。
「そうじゃのう。まあ学校は学校で面白いからいいがの」
「えー、樹木ちゃんスゴイね。私はずーっと夏休みがいいなあ」
終わらない夏休み。学生時代なら誰でも想像する願望だ。
「ずっと夏休みってのも辛いんだぞ」
「そうじゃそうじゃ。多分10週目くらいで飽きてくるはずじゃ」
樹木が楽しそうに同意する。樹木は僕が本当に言いたいことを汲み取ったようだ。もちろん名作アニメである『氷川ルイの焦燥』から引用している。二期の『繰り返す8月』。賛否両論あったが、この回を知らないアニメ好きはいない。
「あ、なんかのアニメだね?」
市井さんも付き合いが長くなってきたこともあり、どうやら感づいたようだ。
「どんな話しなの?」
興味津々の市井さんに樹木はネタバレを避けながら上手く説明している。死神とは思えない気の使い方だ。
「今度見てみるよ! 私が生まれた頃にそんなアニメがあったなんて知らなかった」
その言葉に少々心を抉られながら、僕達は喋り続けた。もう15年前の作品になってしまったのか。時の流れは残酷なものである。
いつも読んでいただきありがとうございます。




