花火大会⑥
佐藤芳佳は「久しぶりだね!」「どうしたの?」とテンション高めな感じで一ノ木と会話をし始めた。
そして僕は会話から押し出された。女の子同士の会話とはこうも参加しにくいものなのかと感じる。最近は女の子に慣れてきたかなと思っていたが、どうも勘違いのようだ。
二人の様子を離れて見守る。事情を知らなければ、二人はただの友達にしか見えない。
一ノ木達から市井さんを引き離すことに成功したとはいえ、佐藤芳佳は一ノ木に対して警戒心はあるようだった。あからさまに態度に出さないが、僕達といる時より少し一生懸命に喋る。
きっと、市井さんを見せないようにしているのだろう。
その姿が少し微笑ましい。本人に言ったら本気で怒るだろうけど。
「遅いなあ。もっといい場所があるのに。花火終わるぞ」とやって来たのはアルファだった。
佐藤芳佳もアルファの存在に気付いたようで、
「ごめんねー、一ノ木さん。またね!」
と会話を切り上げた。
一ノ木が、
「またね」
と軽く手を振った。その姿はアニメでよく見た姿だった。
放課後で雑談をし終えた一ノ木はよく「またね」と手を振った。そして市井さんも、それに応えるように「またね」と言った。声が一緒というのは凄いことだ。アニメの中にいるという実感が久しぶりに湧いた。
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アルファの後について裏山を登った。ほんの5分くらい。すぐに開けた場所に出た。
そこはとても不思議な場所で、先ほどまでいた地元民的な人も、観光客と思わしき人達もいなかった。僕と佐藤芳佳と市井さんに樹木。アルファに太田さんだけ。
市井さん達は「凄い! 凄い!」と歓声を上げながら花火を見ていたが、こちらに気付いたようで「レン君と芳佳ちゃんも早く!」と手招きした。
特等席で見る花火は格別だった。
他に邪魔をするものがない、仲の良い友達グループだけで見る花火大会。正直、死んで良かったとすら思ってしまった。生きていた時、ここまでの幸せがあったのだろうか? いやない。
「ねえ」
ふと、佐藤芳佳が声をかけてきた。
「『ひまわりデイズ』の漫画の最終回って読んだ? アニメと一緒なのかな?」
自分も流石に「終わらずに社会人編に突入しているらしく、11巻まで出てるよ」とは言えなかった。樹木はサラッとネタバレしたが、そもそも『ひまわりデイズ』は6巻で最終回を迎えると予告されていたのだ。
アニメの爆死と共に終わった(予定だった)悲しい作品なのである。
そして―――その最終回の予定だった回が、市井さんの転校に変わったなんて。佐藤芳佳のーーー葵聖への別れの言葉が綴られているなんて。
とても言えない。
「最終回、読みたい?」
僕はそう聞いた。質問に対しての答えになってないが、許して欲しい。
「うーん……」
佐藤芳佳は少し迷っているようだった。
「よく分からないなー」
困ったような笑顔を見せながらそう言った。
「内容によっては見てもいいかもー!」
「そうか……わかった……。終わらずに社会人編に突入している。しかも11巻まで出てる」
僕はそう言った。
「え!!! ほんとに!!!」
「嘘だよ」
ここまで驚いた佐藤芳佳は初めて見た。目が飛び出る勢いで開いていた。思わず嘘だと言ってしまった。佐藤芳佳を傷つけてしまったと思ったからだ。
ポカポカと僕の頭を殴ってくるが、残念ながらダメージはない。痛くも痒くもない。
「でも……それなら読んでみたいかも」
と花火のような笑顔で佐藤芳佳は微笑んだ。その笑顔を見て、僕はホッと胸を撫で下ろした。
「分かった。後で渡すよ」
「うん、ありがとー」
巻末の別れの言葉を、佐藤芳佳はどう読むのだろうか。
僕の勝手な考えかもしれないが、巻末の別れの言葉は、葵聖にとって大事な言葉になると思った。
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