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大好きな日常系アニメの中に転生したようだが  作者: しんしん
はじまりと世界の秘密編
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ご注文はカメラですか?

 樹木の忠告通り僕は遅刻をした。先生の冷ややかな目線が辛かった。やはり入学式早々に遅刻はするべきじゃない。

 

 しかも『入学式当日から遅刻をする男』という事でクラス内で目立つ存在になっているそうで……。早く忘れて欲しい。校内で目立ってもロクな事がないはずだ。出来れば慎ましやかに生活したい。


 「どうせ一ノ木青家と高山羽希も遅刻したのだろうし、二人と一緒ならまあ良いか」なんて考えていたが、どうやら二人は先生が教室に到着する前に間に合っていたようで遅刻という事になっていないそうだ。


 作品内で語られていなかった部分を知れて嬉しい気持ちもあるが、それ以上に痛感しているのはこの『世界』の難しさだった。


 『ひまわりでいず』には入学式のエピソードがある。第一話の部分だ。ここからが本当の始まりだった。校門での件もあり、第一話の入学式での彼女達の会話のやり取りが実際に見れる事は確実だった。

 今の僕は未来が見えると同じだ。残念ながら限定されすぎているため、誰かをの命を救ったり、金銭的なメリットを得る事は出来ない。


 だが、その未来は僕にとって何よりも価値のある情報だった。その情報が『ひだまりでいず』の世界に連れて行ってくれる。

 だからこそ今回も楽しみで仕方がなかった。ワクワクが止まらなかった。

 

 だが、現実は厳しい。なぜに二次元の世界で現実の厳しさにぶち当たらなくてはいけないのか。なんと僕の席は彼女達から離れすぎていて、彼女達の声が全く聞こえなかったのだ。


 そして『竹下タケシタ 雪絵ユキエ』がグループに加わる事になる『教室に戻るシーン』も見れなかった。まさにダブルパンチとはこの事だ。


 楽しみにしていたアニメの第一話を見事に見逃したような喪失感を感じている。いや、実際見逃したと同じか。この世界にもネット配信的な物が欲しい。それとも死ねば時間戻ったりするのかな。そんな馬鹿な事を考えてしまう。


 アニメでは彼女らの動きのみ焦点が当てられるのが当然だ。要するに、近くにカメラがありマイクがある。


 僕はそれらの機器を通して作品を見ていた。彼女達の生活を見ていた。そのため何を喋っているのか、どんな表情をしているのかが細部までハッキリと分かる。


 実写ドラマでは理解しやすい感覚であるが、アニメだと希薄になりやすい部分だった。


 この世界でカメラやマイクを仕込んだらどうなるか。その手の物品は秋葉原に行けば売っているかもしれない。


 残念ながら犯罪だ。盗撮魔だ。変態だ。三年間という期限付きの世界だから気にしなくてもいいだろうという考えもあるかもしれないが、流石にその三年間を刑務所暮らしで終えたくない。便所飯よりもはるかに酷い。


 ならば僕自身が彼女達に近づき、追いかけ続ければ良いのではないか?


 僕の目がカメラになり、耳がマイクになる。


 そう、もちろんストーカーだ。犯罪だ。設置場所によっては変態と呼ばれる人種になってしまう。どうしたらいい。他に選択肢はないのか。変態道を突き進むしか道は開けないのか。


 これならアニメを見ていた時の方がよっぽど幸せだったかもしれない。


 どんなに近付いても犯罪にならないのだ。近くで見たければ画面を拡大すれば良いし、120インチくらいの大画面のプロジェクターを買ってもいい。耳元で囁いて欲しければヘッドホンを付ければいいし、可愛らしい声に包まれたければ音量を大きくすればいい。5.1だろうが7.1だろうがスピーカーを配置してやろう。きっと楽しい。そして、たくさん彼女達を感じたければモニターやウィンドウを増やして同時再生すればいい。


 なんでも出来る。そう、なんでも。

 

 薄い本を作っても、買いあさっても、結婚しても。


 もはや溜め息しか出ない。既に昼食の時間になっている事を忘れそうになる。周りではグループが着々と出来上がっているようだ。


 ぼっち飯だけは避けないといけない。仕方がない動こう。どこかにいいな人はいないかな……。


 ――――――と、一人の女の子がグループを作れず右往左往している事に気付いた。


 それは『ひまわりでいず』の四人目の少女、『市井いちい ゆう』だった。 

いつも読んでいただきありがとうございます。

※8/23加筆修正

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