予定のない日②
『一緒にやりましょう』と言われてもメインはあくまで市井さんだ。ある程度自由に動ける場所に行くまでは見ているだけになる。ソファに深く腰掛け、二人のやり取りを眺めるていた。どうも髪型の選びが難航しているようだった。
僕はあまりキャラのカスタマイズにこだわるタイプではないので理解しにくい部分でもあった。どちらかというと適当なネタに走り、後々後悔して作り直すというという事をするタイプだった。
「この髪型は良いんじゃないか? カッコイイと思うぞ」
「う~んカッコイイですけど、可愛さが少し足りないかな。野良猫的な雰囲気を出したいんですよね」
「じゃあ、やっぱりこれだな。これは二つを兼ね備えていると思うぞ」
「うん、うん、そうだね! あ、でも次のも良いよね」
二人はなかなか決まりそうにないものの、後々後悔はしなさそうなタイプだ。微妙に違う髪型が選んでは吟味を繰り返している。
「途中にハゲ頭を挟むのは何かの儀式なのだろうか」
何度も見せられるハゲ頭が気になったのでちょっと聞いてみた。
「違うぞ。目をリセットしているのだ。味の濃い料理を食べた後に口直しをするのと同じだと思ってくれ」
「あと、純粋に顔のバランスを確かめてるんだよ」
樹木が言った『ハゲ頭箸休め理論』はイマイチ賛同しかねるが、市井さんが言った顔のバランス確認はなんとなく分かるような気がする。まあ、それでもなんとなくだが。
一度「これいいんじゃないか?」と言ってみたが、すぐさま却下された。自分にセンスが無い事は重々承知しているのでショックはない。
一つだけ言い訳をすれば、このFSO14のキャラデザがリアル寄りのため興味がわかないからだ。個人的にはアニメよりのキャラデザじゃないとあまり気合が入らない。そういう事にしていて欲しい。
全てのキャラメイキングが終わったのは、そろそろ昼飯をどうしようかと考え始めた頃だった。
出来上がったキャラは可愛い感じの猫耳の騎士で、こだわり抜いた髪型はポニーテールみたいなやつだった。編み込みをしているのは分かったが、僕にはその違いは分からない。かわいい髪型という感想しか出てこないのが駄目なところだと思う。
どうやらゲームが始まったようだ。舞台は中世のようでもあり、ちょっと機械が混じっているため、近未来的でもある。ダークな作風のようで、猫耳騎士が剣を振り下ろすたびに痛々しく魔物が死んでいく。
少々グロテスクな表現に市井さんは「きゃあ、きゃあ」と反応していた。たまに目を瞑って操作しているようで、意味不明な動きをした後、壁に突進をかましていた。チュートリアルでこれだと先が思いやられる。
樹木はこのゲームを既にやっている事もあるし、現役の死神でもある訳なので、この程度のグロテスクな表現は全く問題なさそうだった。魔物と言ってもゾンビのような人型多いため、ある意味ゲームの中でも魔物を死の世界に誘っているとも言える。仕事熱心なやつだ。
『グ~』と腹の音がなった。だが、残念ながらそれに対し恥ずかしがる女の子はいない。
僕の腹の音だ。朝から何も食べていない。ずっと画面を見ていて忘れていた。そろそろ樹木も市井さんもお腹が空いたに違いない。
「昼どうしよっか?」
「そうめん以外!」
樹木の素早い拒絶だった。昨日はプールに行ったため食べていないとはいえ、最近そうめんを酷使し続けたからだろう。
分かった。今日は冷やし中華にしよう。
「なんで麺を選択するかの~」
悔しそうな樹木の表情。どうやら他のが食べたいらしい。
ただ、残念ながら冷やし中華なのだ。僕が食べたいのが一番だが、何より市井さんがちょっと食べたそうにしているからだ。
いつもありがとうございます。現在、ゆっくりですが、一話から加筆修正を行っています。ぜひ読んでいただけたらと思います。よろしくお願いします。




