プールに行こう③
長くて早い。
ウォータースライダーを見た率直な感想だ。シースルーで出来ているそのアトラクションは、まず、何回も何回も執拗に人間を回す。めっちゃ目が回るだろう。そして、待ってましたとばかりに突然急降下させる。ここでまず絶叫。『キャー1』だ『ウォー!』だ悲鳴がこだましている。
その後一旦昇りを体感させてホッと安心させた後急加速、そのままノンストップで到着のプールに叩き落とされるという感じだ。
「ちょっと、こわいね……すっごく早くて目で追えないよ」
流石に目で追えない事はないが、市井さんの感想はもっともだ。遠目で見たいた時はそうでもなかったが、近づいていみると高いし早いし長いし絶叫が凄いし、でちょいと怖い。あのままアルファと佐藤芳佳の寸劇を見てた方がマシだったかもしれない。
それ以上に、の胃袋が焼きそばを守り続ける自信がない。ゴールと共に胃袋の宝物までゴールしそうだ。
「いやいや、面白そうだの。ちょっとゲームをしてみないか?」
「いいですね……」
太田さんと樹木は乗り気だな。まあ言っても死神だし、たまに空も飛んでるし、この程度のスリルじゃビクともしないってか。太田さんは、意外と絶叫系が好きなのか?
「いいねー。やろうやろう」
ハハっ、乗り気に見せて脚が震ええてるじゃないか。佐藤芳佳はどうやらこの手のが苦手らしい。言いだしっぺなのに。間近で見て怖じ気付いたか。
ちなみに、アルファは黙って目を閉じている。ブツブツと独り言を言っているようだが、どうやら別れの言葉らしい。顔の青白さといい、死ぬほど怖いのだろう。それでもこのアトラクションに参加する当たりにアルファの男らしさを感じる。まあ、太田さんに情けない姿を見せたくないだけなのだろうが。
「で、どんなゲームなんだ?」
とりあえず樹木に聞いてみた。どうやらちゃんとした案があるようだった。
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ゲームの内容はいたってシンプルだった。
『出口のプールにおいて、どれだけ遠くまで水面を滑っていけるか』
勢い良く滑って来た勢いそのままに、水面を水切りの石の様に滑って行き、一番遠くまで滑って行った人が勝ちだ。ありがたい事に、このプールには何本ものラインが底に引いたあった。こういった遊びを想定しているのだろう。
さて、結果だけ言わせてもらおう。
『同着』全員、引き分け!勝ち負け付かず!
悲しいことに全員が、このウォータースライダーが持つスピードに飲み込まれ、プールの藻屑と消えていった。
市井さんは、お尻を水面に強打し沈んでいった。
太田さんは、なすすべなくそのまま沈んでいった。
佐藤芳佳は、絶叫と共に沈んでいった。
樹木は、途中で水着が外れ、胸を抑えながら沈んでいった。
アルファは、やはり同じように水着がずれ、尻を出しながら沈んでいった。
皆、悲惨な末路だった。だが、僕だけはそれに抗った。それは、想像を絶する抵抗だった。両手、両足がこれ以上ないほど筋肉を肥大させ、多くの人々をプールの藻屑と消し去ったその圧倒的なスピードと真正面からぶつかった。
そして――――僕は勝利した。
松本レン、スピード不足により飛び出し不能、静かに沈む。
こうして僕達の一日が幕を下ろした。次は花火でも行くか。
いつもありがとうございます。書き続けさせていただく事にしました。楽しんでいただければ幸いです。




