うらうら
学校に行くという行為が昔ほど嫌ではなかった。当時は「つまらない授業だ、社会に出てお金を稼いだほうがよっぽど有意義に違いない」 なんて思っていた。
きっとそれは選ばれた才能ある一部の人間だけの特権で、普通の人間は、この学生時代こそ有意義にする努力をするべきだったと思う。
社会に出るというのは、それ程までにキツいことだった。楽しさなんてほとんどないと言って良い。現代の奴隷だ。
しかし、僕は今ここで、こうして、高校生活を送ることが出来ている。3年という期限付きではあるが、これ以上長く生きたいとは思わなかったし、ちょうど良い時間だと思った。奴隷のまま何年も生きたい人間なんてほとんどいないはずだ。
この『ひまわりでいず』の世界は、僕にとっては最高の世界と言って良かった、
しかし、ベータこと「佐藤 芳佳」はそうではなかった。
彼女は、僕の隣で静かに涙を流している。
朝も昼もおかしいところはなかったのに、僕が屋上に来た時から、既に彼女の目は真っ赤になっていた。
放課後の屋上で、僕たちは昨日の話の続きをするために待ち合わせをした。もちろん、昨日の市井さんと二人きりにされた件を話すためでもある。
「もっと生きたかったなー………。もっと、もっと勉強して、みんなに感動を与えられる声優になりたかった………」
僕と会った瞬間、ベータは悔しそうにそう呟いた。23歳という年齢なら当然なのかもしれない。いや、夢を追いかけてた人間だからこその悔しさなのかもしれない。
その言葉をキッカケに、ベータは泣き出してしまった。
僕は彼女が落ち着くまで静かに待った。10分程経った現在、ようやく落ち着き始めていた。
「ごめんねー……突然……」
「いや、別にいいよ」
「私ね……この作品大好きだったんだ。初めてのメインだし、それに、市井ゆうちゃんのキャラクターが可愛くて、とっても好きなの。それに、友達も好きだった」
「だった?」
「うん。実はね、私、あんまり現場ではみんなと仲良く出来なかったんだ。アニメの中ではあんなに仲良しなのに。それを演じている私は、誰とも仲良くなれなった」
「そう……だったんだ」
「でも、それだけなら別に良かったんだ。あくまで私は演じてるだけだから……。市井ゆうちゃんが楽しそうに日常生活を送れれば、そしてその声を当てられれば十分って思うようになったの」
「だったら一ノ木達と市井さんを遠ざける必要がないじゃないか。彼女達が楽しく日々過ごす事が一番なんだろ?」
「あのグループは仲良く見えるだけで、本当は仲良くないんだよね」
「なんだって?」
そんな設定聞いたことがない。初耳だ。
「作者さんに言われたことがあるんだよね。『聖さんは市井とそっくりでベストキャストだったよ。市井もあの中じゃ若干浮いてる設定で、無理してみんなと合わせてるだけなんだよ。その感じが演技から凄くよく出てて感動した』って。別にそんな演技してた訳じゃないのに………」
作者がそんな事を話をしていたという事実に、僕の心は折れそうになった。
どんな友達よりも強い絆を持っていると思っていた彼女達の実際は、『現実となんら変わらない上辺だけの付き合い』だったことに、只々落胆した。
そして、その設定をベータに話した作者に収まらない怒りを感じた。
読んでいただきありがとうございます。書く時間がなかなかとれなく投稿が遅れ気味になっていますが、頑張って投稿していきたいと思います。




