第2話 二人の会話
あれから、一人同行者が増えた。
俺の旅の同行者の名前はシルフィ。銀髪のエルフの女の子だ。
外見はエルフなので美少女に分類されるだろう。
……最初に言っておくが俺はナンパしたわけではない。
ただ、彼女に近くの町の案内を頼んだだけだ。
そこに他意などない。
軽く自己紹介などした後、しばらく並んで歩きながら会話をした。
「へー、シルフィは、鍛冶が専門なのか…………けっこう意外だな」
「そうでしょうか?…………でも、外の人の流瀬さんから言うのでしたら…私は意外…なのかもしれません」
「ふーん?」
エルフ的にシルフィは、珍しい部類なのか?
俺はあんまりエルフのこと知らないし、別に鍛冶師でもエルフは、違和感ないのかもしれないし、そうじゃないのかもしれない。
さっきのセリフは「こんな女の子が鍛冶やってるなんて意外だなー」くらいにしか思ってなかっただけなのに。
「やけにあっさり自分の主張を曲げるんだな?」
「ええ、私はあまりこの先の町から出たことがありませんから…」
シルフィは、箱入り娘か何かか?いや、箱入り娘なら、こんなところに一人でいるわけないか…。いや、それより前に鍛冶なんてやるわけないよな。
だから、何となく感じた違和感を話すことにした。
「この先の町には、何かあるのか?」
返答はないが、代わりにシルフィは、この質問を返すのに困ったとでも言うような苦笑いの表情を浮かべた。
……………………これは何かあるな。
返事しなくてもその表情で分かる。この表情を浮かべるということは、何か困ったことがあるのだろう。
でも、話すのは難しい…と。
ならば俺は無理に聞き出さない。そう思い、しばらく黙ることにした。
…………沈黙が痛い。
もうあれから10分は経つんじゃないだろうか。
ものの見事にコミュニケーションの壁…みたいなものを間近で感じるぞ…………。
なんというか、俺とシルフィの間にあるこの…………しゃべりにくくする無駄に緊張するプレッシャーの塊…みたいなのが見える…気がする。
何とかして、この雰囲気を払拭せねば…………と息を巻いたが…。
美少女が近くにいると…………なんか地味に話しにくいんだよな…。
なんというか、変に意識してしまう。
だから、より喋りにくい…。
コミュニケーション障害の俺じゃ…………太刀打ち出来ねぇ…。ここは、シルフィから破ってもらうことに期待しよう。
……………………なんかヘタレな考えな気がするがそこは、あまり考えないことにした。
二人きりとは言え、ここは異世界。それも魔物が普通にその辺の雑草くらいいるような世界なのだ。
会話に常に集中しているわけにはいかない。
だから、警戒しながら…………適当に息抜き程度に雑談をボチボチ語る…のが本当のフィールドを歩き方らしい…………。
とは言え、実感はない。ギルドの仲間達とフィールドを歩くときってなんかいっつも遠足ムードが漂うんだよなー…。
なんていうか、緊張感がない。
パーティー単位で団体行動してるときもそんな感じだし。
精々真面目にやってるのはダンジョンか2、3人でいるときくらいだ。
それ以外は…………もうソロでサバイバルやってるときくらいか。
何となく昔を思い出しながら、周囲の警戒をしていた俺にとうとうシルフィが耐えられなくなったのか、ついに話し掛けてきてくれた。
「あの…………流瀬さん、何か話しませんか?」
意外にも、どストレートな内容のセリフが飛んできた。
「えっと、じゃ、じゃあ、あとどのくらいで町に着くんだ?」
おい…………なぜどもった…俺。
「それなら、あともう少しですね。もう少しで、目的の町に着きますよ」
「そうか…………」
何となく安心した…。
…………そして、またもや沈黙が訪れた。
なぜ、こうなる?俺の悪友なら五分くらいそのまま続くというのに…。
って、よく考えたら、あいつまともじゃないや。比べるのも失礼だったな。そして、しばらくして、町が見えてきた。