プロローグ
ある日のこと。VRMMORPGのゲーム世界の一つ「テイルズゲート」で俺達「アワープレース」は、とあるレイドボスを倒して、祝勝会を開いていた。
ギルドホームは、プレイヤーやら、NPCやらで埋まっていて、あちこちで笑い声やバカ騒ぎで溢れていた。
それを聞いていいなって思う。
そんな俺の名前は「ナレコ」。ギルド「アワープレース」の団員の一人で、その中でも第6班「トラベルバード」と呼ばれるチームメイトだった。
俺は一人、月のよく見える窓辺に立っていた。
「よー、ナレコ。なぁ~に一人で黄昏てんだ?」
「ん、ああ、お前か」
俺に話し掛けてくる奴なんてざらにいる。
例えばこの少年トリスタは、俺によく話し掛けてくる奴だ。
そして、古くからの腐れ縁で、リアルでもよく会っている。
気心知れた親友ではあったが、それ以上に悪友だということを忘れたりはしない。
そう、こいつは、悪戯魔王の称号を欲しいままにする俺達の「三大災厄人」の一人「トリックスター」ことトリスタなのだ。
俺と出会うときですら何かしらの悪戯を仕掛けてくるような奴だ。
こいつに気を許してはいけない。
とは言え、仲間内の中ではかなりの情報通の一人でもあるし、こいつの悪戯好きという性格だけに目をつぶれば、かなりいいやつなのだ。
気さくに誰とでも話し掛けてくれるし、けっこう面倒見がいいし、困っている人がいたら、手を差し伸べてくれるような実にいい奴だ。
……………………でも、悪戯好きなのは、勘弁願いたい。
あれが無ければ、超いい奴なのに…!
「お前は、悪戯さえなければかなりいい奴なんだがなぁ…」
「悪いなー。こいつは俺のアイデンティティーなんでなー。無理。諦めてくれ」
と言っていつもこの改善案は却下されている。
「ところで、お前は、こんなところで何してるんだ?あそこでなんかカラオケだのやってるみたいだが…行かなくていいのか?」
「いいよ。あれは、よくやることだし。それより、今日くらいお前も楽しめよ」
トリスタは、笑ってコーラを飲んだ。
「いや、いい。今日は、一人でいたい気分なんだ」
そう言うとトリスタは、寂しそうに返してくる。
「ん、そうか…。それなら、仕方ないな」
「悪いな。んじゃ、またな」
「ああ、またな」
そう言って別れる。
……………………いい月夜だな。
なんだかんだ言ってもここはいいギルドだ。
ギルドマスターがあんなんじゃなければ、ここにいる人はもっと増えていただろうと思う。
でも、これでいいとも思う。
ここは、俺達のホームなんだ。ゆっくりやって行けばいい。
そう思い、俺はグラスにあるジュースを飲み干した。
事態は、いきなり起こった。
ギルドホーム全体におかしなバグが走った。
それにいち早く気付いたのは誰だったか…。
気づけば、俺達は巨大な魔方陣の中にいて、どこかへと飛ばされてしまった。
そして、俺達はバラバラになってしまった。