表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/16

悪役令嬢は、隣国で男装の麗人になったようだ

日刊ランキング52位ですか…っ!?

ありがたや恥ずかしやでございます。

急にブクマとか増えたので、びっくりしました。

みなさんこんにちは。

ミラーナ・バルテス侯爵令嬢です!

今、私は隣国ローランドにいます。目の前には色鮮やかな田園風景が広がり、土と太陽の恵みを実感しております。

今日のオススメはキュウリ……っぽいもの。ウリキっていいます。まんまキュウリです。

トマトっぽいマトン……なんだか名前が急に肉っぽくなりました、と一緒にサラサラ行く小川にさらして冷やすと、最高に美味しい!

あぁ、土と太陽の恵みに感謝!


「…………って違う!」


はしたなく、ウリキをかじって私は心の中でツッコミをいれる。

え?声に出てました?

そこは見てみないふりがマナーですわ。

とにかく、あの怒涛の半月が嘘のように、私は隣国の親戚の家でゆったりスローライフしています。

家族には手紙で居場所を知らせているので、当然独自の情報網を持つ王太子もご存知のはずですが。

まぁ、私より兄が大事でしたのね。別に悲しくありませんが。むしろ兄の貞操が心配です。

あらいやだ、ミラーナってばハシタナイ。


「しっかし、平和よねぇ」


小瓶に詰めた味噌をウリキにつけると、格別な美味しさです。

ここに来てから一月、私は土壌改良から始めました。転生あるあるですわね。

経理の書類も、簡潔になるよう変えました。

領内のみ適応される条例を制定しました。

結果、親戚の持ち領の一部を任されました。

いまや私は、ミラン・ヴォルトロール子爵です。男装の麗人ですよ。アントワ〇ットではなく、オ〇カルになりました。


「ミランさま」

「アン〇レ」

「アドレーです。 ……当主さまがお呼びです」


こちらはアン〇レ。ヴォルトロール家に仕える筆頭執事の長男。見た目色気漂ういい男ですが、頭が切れ、18という若さで国際執事検定上級を取得しております。

ショタ当主だったら完璧と思い、眼帯を着けたら止められました。


「おじ様が? 何のご用でしょう」

「恐らく、次期当主として王宮デビューかと」

「んん?」


ローランドは女当主が認められている国です。

しかし、おじ様には私より年上のご子息や令嬢が四人います。年下は二人。全ておば様が母親です。最終的にはおば様が「もう夜の相手は嫌です!」と引き込もってしまうくらいラブラブだったそうで。

折角逃亡できたのですから、私もそんなラブラブな夫婦になりたいものです。

元々おじ様のご子息もみな優秀です。しかし、私が前世バリキャリで培った知識には敵わず、執務の合間を縫って私に教えを乞いに来られます。

それもそのはず、この世界と前世では生活基準のレベルが違いすぎます。つまり、私がチートすぎるということですわ。

結果、斬新な発想で改革を進める私が次期当主になり、優秀なご子息を補佐役として領地を発展させていこう……そういう話が出てきているらしいのです。

ご子息もご子息で、あっさり引き下がらないでいただきたいですわ。


「ねぇアン〇レ」

「…………はい」


いい加減訂正するのが面倒になってきたのだろう。アン〇レがため息と共に返事をする。


「結婚しましょう?」

「お断りします」

「私はバリバリ働ける。 貴方は貴族になる。 良くない?」


絶世の美少女ミラーナの、計算尽くされた角度で誘惑。だが、アン〇レは白けた表情で、額にデコピンをした。ミラーナは地味に痛がっている。


「恋愛年齢一桁が、そんなこと言うんじゃありません」

「出会った中で、アン〇レが一番いいんだもの」


そういうと、盛大にため息をつかれた。


「そんな事言うと……どうなるか判りませんよ?」


この色男は、わざと男の表情を見せて脅すから、好きだ。きっと16の小娘にしか見えてないのだろう。こうして情欲を込めて脅して逃げるように仕向ける。

現に、目を細めて顔を近づけても、私が受け入れ体制に入ると気づくや、デコピンを連打する。


「いい加減学習なさいませ!」

「アン〇レなら構わないって言ったじゃないっ!」


涙目で、額を押さえながら私は叫ぶ。


「そもそも、ミランさまは私の名前を覚える気さらさらないんでしょう?」


ああ、困ったお嬢さまを見るような顔。

こんなに優しい人だとは思わなかった。さりげなく野心を煽るようにして試したけれど、全く動じない。むしろ興味がないのかもしれない。







いっそ断罪されたかった。マンガは断罪された後のミラーナは回想でしか出てこない。

主人公はリーシャであり、リカルドとの恋愛が主軸であるからだ。

前述したとおり、この少女漫画でミラーナは読者人気上位だった。

幼いころに婚約者として、次期王弟妃、もしくは王妃を補佐できるよう徹底的に教育され、ほかの誰かに目を向けることも許されずにいた日々。

そんなミラーナを根本から打ち砕き、婚約者を奪い、断罪したリーシャ。

ミラーナへの同情、リカルドへの批判で人気急降下したこの少女漫画は、意外な最終回で幕を閉じる。

皆の祝福の中、結婚式を迎えるリカルドとリーシャ。

そんな二人に、一通の手紙が送られる。

差出人から、従者が差し出すのをためらったが、構わず二人は開封した。

差出人の名は、ミラーナ。断罪されて国外追放された悪役令嬢だ。

手紙には、結婚を迎える二人への祝辞、そして現状が書かれていた。

その背景に書かれていたのは、この国にいた時と違い、男性に寄り添い幸せそうに微笑むミラーナ。

妖艶な体だった彼女のおなかは膨らんでいて、数か月したら子供が生まれるのだという。

もし許されるのならば、子供を拝謁させたい。

願わくば、子供をあなた方の王子の側近にしたい。

リーシャがいたから、結果私は愛する夫と添い遂げ、幸せに暮らしているのだと。

そして、二人は涙し、結婚式開演で終わる。

実際、変な方向に行ってしまったが、私は断罪された。

国外追放にはならなくて、王太子の婚約者になってしまったのだけれど、隣国に行けばやはり、本来幸せになるはずの相手はちゃんと存在していた。


「ミランさま、早くしないとご使者が参られます」

「好きよ、大好き! 私は、貴方が…っ!」


アン○レは、困ったように笑い、私に手を差し出す。


「アドレー・コントラート!!」


アドレーは、断罪されたミラーナの、夫になるはずの男性だった。

この気持ちは、漫画の修復能力…つまり補正というものなのだろうか。

私は、アドレーに淡い初恋をした。

はい、浅井はご都合主義大好きです。

人生ほとんどを婚約者に沿うように教育され、好きな人も作っちゃいけない青春時代を送った挙句、婚約者かっさらわれて、底辺に行くとか不憫すぎるだろ…と。

なので、マンガのミラーナは初恋をして恋を実らせて幸せになりました。


…………というのを考えてしまったばっかりに、結末どうすんだよっと焦っております。短編のスピンオフなので、クラウドエンドというのは決まっているんですが、アドレーエンドの方がミラーナ幸せそうだよな、好みピンポイントだしと思ってきたりします。主従大好物なんです、すみません。


あ、時々出てくる名称は、ご存じ「フランス題材の某バラ」と、「悪魔な執事」です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ