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悪役令嬢は、国外逃亡したい

途中、シリアス混じります。

起承転結の承どこいったんでしょうか。

「今日という今日こそは、国外逃亡致します。 探さないでくださいませ」


運命の断罪、そして王命を下された日から半月、私は五度目の逃亡計画を企てた。

もちろん父である宰相を始め、家族は皆賛成している。全ては、王族と身内になってたまるかと言う目標のため。


「姉さま、お元気で。 今度こそ逃げ切って下さい、本気で」


弟のフィリップは、私の手を握り声をかける。

ちなみに、フィリップは第三王子の筆頭側近だ。ここには居ないが、兄のカインは第一王子の筆頭側近で次期宰相とも言われている。

他の貴族からは、バルテス家ばかり重用していると声が上がっていたが、逆に王家からカインやフィリップ以上に有能な奴を連れてこいと言われて、現在に至る。

もっと頑張ろうよ!本気出してよ貴族の皆さん!


そんな訳で、下町庶民の格好をした、私ミラーナこと商人の娘ミナは、悠々と街を急ぐ。


「ミナちゃんこれ美味しいから食べていきな!」

「新作パン完成したから味見してってくれミナちゃん」

「ミナおねーちゃん!遊ぼう」


連れ戻される前に逃亡しなければならないのに、私の腕には土産が次々と渡される。


「あーもう! 皆さん嬉しいですが、私は用事があるんですよっ」

「また逃亡計画かい? そんな事するなら、皆で王城詰めかけて攻撃するのに」

「お? ついにやるか! 腕がなるなぁ」

「俺、他の地域の奴らにも声かけてくる」

「ま、まって下さい!」


1回目の逃亡計画を知られ、城下町の人々は一致団結して蜂起している。

王城の門を破壊したのに焦り戻ってきた私は、責任を取れと王太子に押し倒されたのだ。

嫁入り前の娘に手を出したら話は破談で、国王とは金輪際絶交!とキレた父に焦った国王が全力で止めたため、その時は事なきを得た。だから、正直勘弁して欲しい。

というか、国王大丈夫ですか?貴方の将来が心配です。


「今度こそ襲われるから勘弁してください!」


すでに民衆を掌握している実力、まさに王妃に相応しいと、評価が上がったので、なんとか下げたかった。

私が叫ぶと、人々は矛を下ろす。


「とにかく、早く町馬車に乗らないと」

「いいね、そのまま高原デートにいこうかミナ?」


いつの間に背後を取られたのか。私が振り返ろうとすると、肩を抱かれて引き寄せられた。ふわりと、シトラス系の匂いが鼻をくすぐる。


「……………っ!!」

「それとも湖デートにしようか。 はしゃぎすぎて濡れないように気を付けないとな……でないと俺の理性が持つ自信がない」


ふ、と耳に吐息がかかり、背筋がゾワッとする。

反射的に私は拳を相手の顔に向けるが、相手はあっさり避けて、後ろから抱きつく。

瞬時、私は固定されるまでの間に腰を低くして、投げた。


「柔術なめんなぁ!」


完全に投げ技が決まったと思ったが、受け身を取った相手は、涼やかな表情て立ち上がる。


「手厳しいな。 だが、そこがいい。 いつか俺しか見えなくなると思うと、ゾクゾクするよ」

「変態はお帰り下さいませ」

「いいね。 簡単には手に入らない高嶺の花を手折れるなら、このやり取りも悪くない」

「騎士の皆さん、変態がおりますわよー」


意味はないが、つい声に出してしまう。前世で言う「お巡りさーん」と似たような感覚だ。

さて、第五回国外逃亡計画も頓挫したのだが、どうしようか。あと1ヶ月半で、なんとかしなくてはならない。


「少し、お話しませんこと?」


仕方ないから、今日は情報収集に切り替えるとしますか。

私が声をかけると、王太子はフッと笑った。これは外面猫かぶり第一王子だ。

案の定、周りの若い女性はキラキラ王子に目を輝かせ、心を奪われている。



第一王子、クラウド・エルドランド。私の2つ上で兄と同級生、一方的に親友。兄カインは宰相業より、医師になりたいのだが、クラウドの命令で側近に置かれている。

性格は、次期王に相応しい風格と実力を持つ。だからこそ、王太子妃候補には孤独な王太子を癒せ、多産家系のフローレン侯爵令嬢レイネさまが選ばれていた。

物静かで麗しい、数多あまたを包み込む王太子妃候補に、宮廷が沸いた。特に父が喜んだ。

少なくとも、似た性格の私が選ばれてしまえば、明らかな政略結婚で、互いに愛人でも見つけそうなスキャンダル確実な夫婦になるだろう。

そもそも、私の好みではない。以前に話したと思うけれど、私の好みは主夫。

バリバリ働かせてくれて自由にさせてくれて、帰宅したら暖かいご飯ときれいな部屋を用意してくれる男性だ。

旦那より嫁が欲しいといい続けていた私が、主夫たる愛しい旦那を見つけた時は、全力でアタックした。壁ドンも顎クイも床ドンもした。押し倒した時の、旦那の可愛さって言ったら。

主導権を握ろうとしたら、逆にやり込められて、可愛い旦那の強引な部分に惚れ直したのは言うまでもない。


「先に言っておきます。 もし貴方さまと結婚したら、私は即座に愛人を作る事でしょう。 認めて下さいます?」


まず騎士団あたりから探す予定だ。忠誠心篤い騎士なら、私好みがいるかもしれない。

現に、目星はつけていたりする。仮に断罪キャンセルされたら、お近づきになるつもりだった。ちなみに、侯爵家次男だから釣り合いも取れる。

そんな訳で、互いに政略結婚ならば愛人を作るくらい構わないだろうと思った。

だが、王太子は表情を変えない。


「それは却下だ。 誤解しているようだが、俺は政略結婚と思っていない」


どの口で言うのでしょう。


「私は、貴方を愛しておりません。 そもそも私の好きなタイプと貴方は真逆ですもの。 気疲れで、神経をすり減らすような生活は嫌ですわ」 


ふわりと笑う顔と、優しい暖かい声。つい強気になってしまう私を包む、力強い腕。有能だったのに、私を大事に思うあまり仕事を辞めた旦那。


「誰を思っている」


冷えた声で、私は意識下から浮上した。目の前の王太子は、外面猫かぶりを捨てて怒りを秘めた目で私をみている。


「…………好いた方ですわ」


嘘はついていない。


「リカルドか?」

「違いますわ」


リカルドは、好みに近かった。だが、ミラーナがミラーナであるために、好いてはいけない相手だった。禁止にすると欲しくなるから、いずれ現れるリーシャとの恋愛を思った。


どうやら、ミラーナの散り様の事しかなかった私は、どこか穴が空いているようだ。散れないのなら、好きな相手すら選べないのなら、どうすればいいのだろう。


「政略結婚と割りきれないのなら、互いに不幸になるだけです。 私は、貴方の思うような人間ではありません」


王太子の好みは、屈せず強い、女帝ミラーナだ。このように、己の弱さをひけらかし頭を下げる者ではない。だから、どうか、私に幻滅してください。


「ミラーナ」


王太子の声が冷たい。幻滅してくれただろうか?それとも、私の意志など関係なく女帝ミラーナを傍に置きたいのだろうか?


「ミナ」


ふわり、と暖かい腕に包まれてから、立ち上がらされる。

助けてくれた人物を見ると、私は目を丸くした。


「カインお兄さま」

「助けに来たよ、私の姫」


兄は、昔から私を「姫」と呼ぶ。目いっぱい可愛がってくれる。

それは、断罪以前も、以後も変わらない。

目の前の王太子が国王夫妻以外に逆らえない唯一の存在が、兄カインだ。


「クラウド」

「…………カイン」


一瞬、二人の間で剣戟が交わされたような錯覚を覚える。

実際二人とも剣を抜いておらず、おしゃれなカフェは荒れていない。

おそらく、ここが外であれば交わされていたのだろう。それくらいに、二人の間の空気は緊迫していた。


「二度はない」

「俺は…っ」

「王命であろうと、ここまで妹を蒼白にさせる男に、バルテス家は嫁にはやらない」


言われて、私は顔を上げる。そんなに、今の私はひどい顔をしているのだろうか。

だが、それ以上に王太子の表情の方がひどく思えた。

威厳も何もない、目に浮かぶのは『絶望』。

それを見据えてから、兄は私の手を引いて店を出た。


「お兄さま」


王太子を、お兄さまの親友を、そのままにしておいてよろしいのですか?

こちらを見ない兄は、私の質問に答えない。

だが、だんだんと早くなる足の速度に、何か引っかかりを感じた。


「あのバカ。 何をごまかしてやり方間違ってんだか…」


王太子の一方通行と言われる親友とは思えない、兄の言動に首をかしげる。

兄の考えはわからず、きっとあの王太子にも考えがあるのだと、少し思いをはせてみた。







それから数日後、6回目の計画を立てた私は、あっさりと国外逃亡に成功した。



あ~、疲れた、旦那より嫁が欲しいよ、嫁みたいな旦那。と思っていて実際に見つけてしまった前世の主人公です。


「承」の部分がないのがモヤリときたので、活動報告にSSとして書かせていただきました。合わせてお読みいただけたら嬉しいです。

砂糖過多警報ですが。


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