悪役令嬢は、考えるのに疲れる
前回から1年半以上……(遠い目)
サブタイトルは思い浮かばないので適当です。
それからさらに数日が過ぎた。私はとにかくあらゆることにキレていた。キレるなど令嬢らしからぬ言い回しだけれど、怒っていると表現してしまえばなんだか軽い気がしたからだ。私とて貴族に生まれた侯爵令嬢、意に沿わぬ政略結婚を言い渡されても受け入れるつもりだったし、現にリカルド殿下との婚約は政略的なものだった。つまり、政略結婚の相手がリカルド殿下でもクラウド殿下でも変わりないのだ。
ぎゃふんの場で王太子妃候補にするつもりならはじめっからそうしていただけませんでしょうか!?何あのドヤ顔で俺様発言は。誰が俺の嫁ですって!?リカルド殿下も殿下だわ。兄上に気兼ねして距離を置いていたなど、必死で王弟妃になろうという表面上取り繕っていた私がピエロみたいじゃありませんか!そして、アドレー!もうアン○レなどと呼びません。あの方と並べるなど最早できませんわ。わた、私にキスしておきながら、クラウド殿下のために身を引くとか最低じゃありませんこと!?そして一番許せないのが私自身ですわ。そんな最低最悪な男がまだ………。
『まだ、好きなのですわ』
前世も今世も、好きなタイプは変わらず、笑って私を支えてくれる男性、だ。前世も今世も私は気が強くて意地っ張り、素直になれなくて一部の人から生意気だと言われる性格なので、そんな私がいいと言ってくれる人にころっと惹かれてしまう。クラウド殿下のように上から目線で「気に入った」と言われても「気に入られても困りますわ」とつっぱねてしまうけれど、アドレーのようにすぐ隣から寄り添うように「好きです」と言われると「私も好きです」と素直になれる。しかも生来の補佐気質なのだろう、とにかく持ち上げ方が巧妙で心地よい気持ちにさせてくれる。かといって甘やかすだけではなく、厳しい所は厳しい。
『顔も性格も所作も好み、そんなの好きになるしかありませんわよぉおおおおおお』
私は、ベッドの上を転がり叫ぶ。声が出ないので、何を叫んでも大丈夫なのは便利だ、と思えるくらいまで気持ちが回復してきた気がする。そして、ゴロゴロ転がった挙句、ベッドから転がり落ちた。ぐえっ、とカエルがぺったんこになったような声だけは出た。悲しい。
そんな声が聞こえたのか、誰かが来るような足音がしたので、私はすごすごとベッドの上にあがった。目が覚めてすぐ、私はスープなど軽食から食べ始め、今では以前と同じような食事ができるようになった。何事も腹を満たさなければ始まらない。もちろん悲しいし、私が悪い、あの人が悪い、どうしてどうしてと鬱々としたかった。けれど、すぐ疲れてしまった。答えのない自分の中の堂々巡りの討論は、何も生み出さないし、余計に心を傷つけるだけだと知った。
だから、食事をとり、室内をうろつくところから始めた。今では内庭を軽く散歩するくらいまで回復している。心も体も回復しているはずなのに、ただ声だけは出なかった。
「ミラーナ様、お目覚めになられましたか? 本日はお召変えなさいますか?」
侍女も家族も、私が寝巻のままでいいと言えば無理強いはしない。その優しさが、乾いた心に染みてくる。だから尚更、私は自分の足で立たなくちゃと思った。そのままずっと引きこもっていても、何も言われないかもしれない。けれど、そんな私は私が嫌だ。
私は、もう一度立ち上がって、傍に会ったベルを鳴らした。それが、入室許可の変わり。
扉の外から声がかかり、侍女が室内に入ってくる。
「今日はひときわいい天気ですわ」
侍女がカーテンを開くと、まぶしい光が部屋中に注ぎ込まれた。それだけで、心が沸き立つくらいには、元気に慣れた気がする。
『今日も一日、頑張りますわ』
お久しぶりでございます!
ようやく続きがかけました!話しでは数日になってますが、1年半近くも鬱々してたんだと思うと長いよミラーナさん!と突込みを入れたくなりました。
一応ご都合主義というわけでもなく、嫌なことがあった→もしかして相手にも事情があったんじゃ、気づかない私にも非があるんじゃ(前回)→考える→やっぱ相手が悪いんじゃん!ワタシ悪くないじゃんふざけんなマジで!!(←イマココ)な展開でした。
でもって、以前のを読み返すと、ミラーナの前世既婚者って設定忘れてない?と突込みを入れたくなるんですが。
とにかくなんとか完結はさせたいので、ぼちぼちではありますがお付き合いいただけると嬉しいです。
ていうか、ちゃんと思うような終着点にたどり着けるんかしら。