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悪役令嬢は、最高の舞台を迎える

キーワードに入れたとおり、だんだんシリアスが行方不明になります。

かるーく読んでいただけると有難いです。


BL,GLではありませんが、読み手によりちょっと度が過ぎた友情表現と思われる個所がありますので、断固ダメですって方は、お戻りいただけると安全かと存じます。

これは、とあるシンデレラストーリー。

辺境に領を構える子爵の娘リーシャが、王宮の舞踏会で第二王子リカルドと出逢い恋に落ちる。

しかしリカルドには、暗黙の了解で婚約者が決められていた。宰相の娘ミラーナとの間には政略結婚という考えしかなかったが、ミラーナはリカルドに恋をして、割り込むリーシャに悪意を抱く。

ミラーナを筆頭に二人に立ちはだかる逆境にも負けず、二人は愛を深め、そしてミラーナの失脚から始まる反撃の末、無事婚約、結婚へ至るのだ。

それが、『王宮は愛の嵐に吹かれて』という少女漫画だ。内容もタイトルもベタで王道。しかし、脇役がいい味出しすぎて主役より目立った挙げ句、ミラーナの断罪には同情のメールが殺到したという異色の人気作だった。


そんな世界で、私はライバル令嬢ミラーナ・バルテスという配役を充てられた。

充てられたと思ったのは、私がこの頃流行りの前世持ちだからだ。

私も正直ミラーナになるとは思わなくて、かなり焦った。ミラーナと言えば、未来の王妃にと教育された凛々しく潔い、むしろ女帝なれるだろ!?みたいな令嬢だ。

だが、日本の最高学府を卒業し、キャリアウーマンに生き愛する主夫と結婚した私には、やってのける自信があった。

女帝?ばっちこい!完璧にミラーナを演じきって、読者が同情し涙する散り様を見せてあげましょう!







それから私は、頑張った。

家事も作法も外交術も完璧。暇だったので帝王学まで手を伸ばしてみた。

容姿は当然ながら完璧。濡れ羽色の艶やかな髪、凛とした目元、思わず口づけしたくなるような潤んだ唇、爆弾級の胸、細い腰に細いながらも肉付きのいい太もも!きっと最高のミラーナになっている事でしょう。

早く散りたい!

このミラーナが完成する散り様を、ありありと見せつけたい!

前世持ちあるあるでの、ヒロイン苛めへの躊躇など、私にはなかった。

むしろ、残忍な位にやってのけた。

しかし、切り刻まれた制服から見えるヒロインの生足、悲しみに濡れる涙などなど、胸キュンハァハァしすぎて心臓に悪すぎるから、こっそり予備制服や新しい白いハンカチなど用意しておいた。もちろん足は付かないようにだ。さすが私、完璧すぎる。

それにしても、リアルで見た生リーシャは超絶美少女だ。

さらさらふわふわの栗色の髪の毛、マスカラ無しでこのボリュームは神!なまつ毛と、くりくりうるうるな瞳、小さく高い鼻筋に、ナチュラルピンクのぷるぷる唇、鈴の音のような声、小さく細い肩、小ぶりに見えて結構な胸、細い腰にツンと上がった尻にカモシカのような足!!!!…………これは女でも惚れるわ。

路線変更して百合でもと思ったのだが、やはりそれはミラーナではない。

いっそ第三王子の婚約者に変更されませんかね?私。

まぁ、そんな上手いこと行かない訳で。







そして!やっと来ました断罪の時間。

ミラーナの際骨頂です。

婚約披露パーティーにて、第二王子リカルドはミラーナの目の前で、リーシャの手を取り婚約を宣言する。ついで、リカルドはミラーナがリーシャにしてきた事や帝王学を学び王弟妃になった挙げ句乗っ取りを企てるつもりだと、予想以上の罪状を連ねてきた。

私の心は最高に高鳴った。

原作以上の罪状は、ミラーナが原作以上に残忍で完璧なライバル悪役令嬢であれた証明なのだ。

表情は冷ややかに、しかし心中はガッツポーズをし、踊り狂っていた。

原作では国外追放だったが、いっそギロチン公開処刑とかくるかしら。某バラのアント〇ネットは凛々しかったわ。

さあこい、どんな散り舞台を用意してくれるのかしら!







私は、名前を呼ばれ顔を上げた。だが、声が原作と異なり首を傾げる。

原作では第二王子が裁きを言い渡すのだが、今裁きを言い渡しているのは国王だ。

まぁそれだけの事をしたと言うことで、むしろ嬉しいのだが。


「ミラーナ・バルテス、そなたは」


キターー!!


「第二王子リカルドの婚約者から外し、王太子クラウドと2ヶ月後に結婚し王太子妃になることを命ずる。 これは王命である」


why?


「……………はい?」

「宜しくお願い致しますわ、お義姉さま!」


ふわり、と甘い香りに抱き締められる。近くに、ベリキューツなリーシャの満面の笑みがあった。


「断罪で凛々しさ際骨頂のミラーナさまを見られないのも残念ですが、やはりこれからもずっとミラーナさまを拝見できるほうが嬉しいもの」

「あの……リーシャさん? 私は、貴女を、ずっと、苛めてきたんですよ?」


状況に付いていけず、錆びたロボットのように私は返す。

しかし、リーシャはふふっと甘い笑顔で私を見つめた。やばい、マジ可愛い。


「だって、婚約者を奪われるんですもの。 嫌みや苛めて当然です。 でも、ミラーナさまはユミア経由で色々用意してくださいましたでしょう?」

「…………なん、で、それを?」

「ユミアをゲロらせました!」


笑顔なのに、語尾にハートすら見えるのに、こんなにも究極美少女なのに……


「天使の唇からゲロるなんて聞きたくありませんわ!!」

「ミラーナさまから頂いたうるうるリップ、大事に使ってますよ! でもどうして切らしたタイミングが分かるのかしらって疑問だったんです」


そりゃ、超絶美少女リーシャに隙を作らせたくないから、彼女の親友ユミアを懐柔していたに決まっているでしょう!


「さ……さあ、どうかしら?」

「ミラーナさまに苛められた後、どんな素敵グッズがみられるか楽しみだったんです。 あ、すみません、物乞いみたいですよね」


そりゃあ、超絶美少女リーシャに以下略!


「リーシャ、少しこちらも話をさせてくれないか?」


二人の世界に入りきっていた私たちに、キラキラが近付いてくる。

第二王子リカルドと、王太子クラウドだ。

ダブルイケメン眩しいです。

優しげで王道王子のリカルド、次期王の威厳を持ち人心を掌握しつつある俺様王子のクラウド。どちらも輝かしい王子である。


「実は、昔から兄上から『ミラーナは俺の嫁だから手を出すな』って言われてたんだよね」

「これほど俺に相応しく、次期王妃に相応しい令嬢は居ないからな。 むしろ俺の婚約者じゃないのが不思議なくらいだ」


そういいながら、クラウドは私の手を取り甲に口付けしてきた。手が早すぎる!


「そこで俺はリカルドと父上に交渉した。 より次期王として励むからミラーナを嫁に欲しいと」

「まぁ…俺はミラーナ嬢に好意もなかったし、今はリーシャが好きだから構わない。 でもミラーナ嬢はリーシャを苛めていたし義姉には……と思ったんだけど、リーシャはむしろキラキラ綺麗になっていくし、不思議だと思ってユミアをゲロらせたんだ」


王子もゲロる言うな。


「そしたら、リーシャが苛められるたび、持ち物がグレードアップさせているのはミラーナ嬢って言うじゃないか。 そしてやっと、ミラーナ嬢が断罪を望んでいると気付いたんだ。 で、礼を込めて最高の舞台を用意したわけだよ」

「ミラーナは、王妃に足る人物と周りに証明して現在に至る。 元々の俺の婚約者は、完璧すぎるミラーナが義理の妹になるのが嫌で逃げたよ。 少しは発破かけられて『王妃がね』たる婚約者になるかなと思ったんだがな」


段々と、周りに上手いこと誘導されていたと気付き、気持ちが落ち着いていく。

そこで、私はハッと気付き宰相である父を見た。

キラキラ王子が渋く年を重ねたダンディー国王に肩を組まれ、眉を寄せている。


「ほら、俺の勝ちだろ? 約束通り大人しく息子の嫁にくれ」

「……………よりによって王太子妃なるなんて最悪だ………」


思い切り凹んだ父が、困ったように私を見る。


「だから止めろと言ったのだ」

「だったら、理由を説明してから止めてくださいませお父さま!!」

「せっかくリーシャ嬢の家に揺さぶりかけて婚約者に仕立てようと後押ししたのに……王太子がミラーナに興味を持つとは……せっかくアランの義娘にならずに済むと思ったのに」


お父さま、リーシャさんの実家に何してるんです!?

最悪すぎる、とぼやいて絶望している場合じゃありませんわ!


「バカめ、お前が俺から逃げられるわけがなかろう? なぁ、ハルト」

「クッ……」

「組み敷かないだけ感謝しろよ?」

「その時点で、俺の全力を持ってして縁を切ってやる。 このクソ国王」

「今は、縁を切るまでに至らないって事だな。 ちなみに、ハルトに限って不敬罪は適用されねぇから喜べ?」

「不敬罪になりたいのに喜ぶか!!」


こちらはこちらで、原作にはない展開になっているのは何故でしょう?


「ミラーナ」


はい?


呆気に取られたまま、私は声の方向を振り返る。

すると、不意に唇に柔らかいものが触れた。

周りが、ワッとざわめく。近くでリーシャの感極まる声がした。


「何をなさいますの!?」


令嬢のように頬を叩くなどしない。一撃必殺、鳩尾に鍛えたグーパンを叩き込む!

しかし、硬い腹筋によりダメージゼロだ。


「残念だったな、頬ならダメージ加えられたのに。 現近衛騎士団長官を舐めるな。 ああ、身体ならいくら舐めても構わないが」

「なんてセクハラ野郎ですのっ!?」

「まぁ、宜しくな、俺の嫁」


手首を捕まれ、頬に口付けを落とされる。

今度は頬を叩いて、私は距離を取った。

王太子の、愉悦な笑みがこの上なく憎らしい。


「断固拒否しますわ!」


すると、王太子は笑みを深めた。


「父上が言っただろう? これは王命だ、と」


私は、不意に足元が崩れた感覚に陥る。

身体を支えるように、腰に手を回された。

こんなの、最高最悪の令嬢ミラーナ・バルテスじゃない!こんなの絶対認めないんだから!!


お読みいただきありがとうございます!


他の拙作をお読みいただいた方には、キャラ名に見覚えがあると思います。

そうです、先日書いた「これもラブコメですか?(仮)」で朱美が読んで、麻生が声に出したアレです。

そのノリだと全20話以上は行きそうなんですが、あっさりざっくり進めて数話完結予定です。

思いつきで書いたものなのでストックなどなく、長くすると大分お待たせすると思うので…。

よろしければ、このまま完結までお付き合いいただけると、幸いです。



以下、登場人物。


ミラーナ・バルテス:悪役。侯爵令嬢。

前世もち。全力で滅びに向かう。文武両道、婚約者がいなければ王室護衛官にもなれる腕。それで滅びを目指すのだから、色々残念。


リーシャ・エンリュ:『王宮は愛の嵐に吹かれて』ヒロイン。子爵令嬢。

スルーされているが、一応前世もち。全力でポジティブ。か弱い見た目に反して、悪意に鈍感、好意に敏感。

センスのいいミラーナをこっそり尊敬している。むしろ敬愛している。


リカルド・エルドランド:エルドランド国第二王子。

優男で気のいい王道王子。周りの謀略についていけない。リーシャが好き。


クラウド・エルドランド:エルドランド国第一王子にて王太子。

腹黒、権謀術数、俺様etcすでに王の貫録を見せる。ミラーナの断罪以前は、外面さわやか好青年。内面は上層部のみぞ知る。以前よりミラーナの才覚に目をつけていた。政略結婚なのか、恋愛結婚なのかは不明。


ユミア・ナタリー:リーシャの親友。

気が付けば、色々な人物の術中にはまっている、作品一不憫な少女。どんまい!


ハルトウィン・バルテス:ミラーナの父親。エルドランド国宰相。

権謀術数に長け、有能な臣下不動のトップ。正直宰相なんて辞めたい。学生時代からの親友である国王から離れたいと願って100回は辞職届を出したが、却下される。だんだん周りから生暖かい目で見られるようになってきた。


アークライ・エルドランド:エルドランド国王。

一見人のよさそうなチャラさを持つが、舐めてかかると数倍返しされる。「アラン」というニックネームは宰相限定で呼ばせている。王妃にも呼ばせない。BLというより依存。



そんな感じです。

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