出会い
柊 海都は絶望していた。
画面に写った血まみれになった自分の姿を見て、初めて自分のしたことを知ったのだ。
さらに殺人に使った道具はなく、素手、いや理解不能な力、科学や計算では導き出せないような超能力で殺したと画面に現れた偉い専門家はいう。
「今の日本はおかしいわね。犯罪は頻繁に起こるし人が死ぬところをテレビで放送するなんてね」
それどころではない。確かに一年前に起きた殺人事件で、そのときの死体の写真がネットに公開され、その写真を見せたどこかの中学校の職員が訴えられ捕まったというのがあったくらいなのに、テレビの全国放送で放送するのはおかしい。
だが、そんなことよりも驚いたのは、そこにいたのは自分だということだ。
コートやジーンズや靴、推定身長や歳は完全に柊を示していた。
柊はそれを見ると、すぐに部屋に戻った。柊が見た感じ、柊の母は気付いていないようだ。
柊はその犯罪よりも映っていたあの手の甲から生えた大きな爪が気になっていた。柊は机の横にある少しほこりをかぶっているパソコンの電源をつけるとあることを調べた。
超能力専門学校という学校についてだ。
すごい昔にある先生から聞いたことがあった。
ロシアには超能力者を育てるための学校があり、そしてそれは日本のどこかにも存在する、と。
柊は隅々まで調べるとある一つの学校が見つかった。
『Red Blood超能力専門学校』というところだ。
その下には住所や電話番号が書かれていた。そこには柊の住む町から離れた場所ではなく、案外近かった。
柊はそこに入学すると決めた。
そして一ヶ月後、柊は家を出た。
家から出て徒歩で八時間。夜に出たはずが気がついたら朝日が昇っていた。着替えを詰めた大きめのスーツケースに腰かけると背中に背負ったリュックから夜中に買っておいたパンを出した。
俺は周りを見るとパンの包みを開けた。
「うまそうですね~」
開ける音と共に横から女の子の声が聞こえた。横を向くとそこには小さな金髪の女の子がパンを見てよだれをたらしていた。
「だ、誰だ、お前は!?」
「それくれたら話します」
金髪の女の子は所々泥で汚れた白いワンピースを着て小さなバッグを肩から提げていた。体躯からして小学生だろうか。
俺は仕方なく、パンを半分千切りそいつに渡した。
そいつは目を輝かせると、まるで獣のように俺の手ごとそれに噛みついた。
「はりがとうごじゃいましゅ、おいひいでふゅね。このファン」
「飲み込んでから話せ」
そいつは飲み込むと、近くの切り株に座り、話始めた。
「私はルナ・レッドネイサーといいます。ここには超能力の専門学校を探しに来ました」
「お前もか?」
「お前って言わないでください。ルナと呼んでください」
「ごめんごめん。俺は柊 海都。よろしくな」
「柊ですか。吸血鬼の私にはつらいですね。何たって鬼ですから」
一ヶ所、何かが引っ掛かった。
「お前・・・今なんて?」
「何たって鬼ですから」
「違う、その前・・・吸血鬼って」
「はい、そうですよ」
俺は冗談だと思い、笑いがこぼれた。
「んなバカな。吸血鬼だったら日光浴びて死んでるだろうし」
「吸血鬼って言っても日光下吸血鬼と月光下吸血鬼ってのがありまして。まぁそう言っても信じないでしょう」
ルナは切り株から立ち上がると、両手を広げた。
「まぁ見ていてください。私が本当の吸血鬼だということを」
するとルナの足元にゲームで見たことあるようなルナの瞳の色と同じ真紅の魔法陣が現れた。
「これで吸血鬼ってことがわかったでしょう?」
「で、その魔法陣。何が起こるんだ?」
「えっとですね・・・確か・・・」
魔法陣はどんどん光を放つ。そして何事もなく消えた。
「何があったんだ?」
「効果なし?」
何も変わりないと思い、辺りを見回すと風景が変わっていた。
上が見えなかった階段の向こうには大きな学校が見え、下にはさっきまで田畑しか見えなかった風景が一変、広大な町が広がっていた。
「これがお前の能力か?」
「いや、こんな魔法ないと思うけど・・・」
「これは私の能力です」
俺らが今の現状に混乱するなか、そこに新たな人がスラッと現れた。
スーツを身に纏った女性はそれを見て少し笑っていた。
「ようこそ、超能力者のみが入学を許された学校、私立Red Blood高等学校へ」
「えっと・・・あなたは」
「私はこの学校でO組、またの名をチームOの担任けん監督をしているリアだ。よろしく」
「「よろしく・・・お願いします」」
俺らはとりあえず一礼した。
「まぁ緊張しないで。とりあえず私についてきて」
階段を登るとさっきまでうっすらと見えていた学校ははっきりと目に映った。
真っ白の校舎は太陽の光を浴びて輝き、校門付近で散る桜の花びらは幻想的だった。
「ついたわ。ここが超能力を競って高め合う戦場よ」
目の前にはドームのような形をしていて、入ってすぐの廊下のホワイトボードにはチーム成績表と個人成績表と書かれていた。
「これは?」
「これはその名の通りよ。これは上から現在の順位、上にいくほど強く、下にいくほど弱いってこと。その横は個人のもの。ここは強さこその学校だから」
「えっと・・・ほぼ気づいてしまったのですが、俺たちは他のチームと殺しあいをしろということですか?」
「まぁそこまでハードな戦闘はしないは・・・指揮によるけどね。それよりも次々」
リアは何かを隠すかのように次々と場所を案内した。
そしてついに俺が入るチームの教室に着いた。
「ここがチームOの教室。ここで普通高校と同じ教科や他の学校には絶対にない戦闘書記っていう授業をするわ。入って」
リアはそう言うと教室のドアを開けた。
ここから俺の『償いは』始まった。