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狐の嫁入りっ ちょっと? 九尾な女の子  作者: 雛仲 まひる
ちょっと? 九尾な女の子 連載1周年記念
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~ 眠り姫 ~ その6

 なんだ? どうして……外の様子がおかしいことに今更気付くなんて、俺がどうかしてたのか? ほんと今更だぜ。


 冬場の17:43分、この時間帯だとこの通りは駅に向かう陽麟学園の生徒達がまだ多く通り掛ったり、買い物に出た若奥さんや仕事を終えたOLさんたちなどの家路を急ぐ人たちで賑わう通りなんだ。


【あいす・ありす】もアフターを楽しむ、女子高校生やママ友さんなどで賑わってる時間だろ?


「知くん……なぜ女子限定で例えたの?」


 未美よ。小さなことは気にするな、今はそんな考察をしている暇はねぇーだろ。


「御主人様は女好き。それに天然タラシ、気をつけないと直ぐに女の子にモテる」


 紅葉よ。確かに俺は女の子が好きだぞ? 男の子同士萌えのお前には悪いがな。


 それとひとつ、お前は重大な誤解をしている。


 俺はモテねぇーーーーよっ! ちくしょう!


 からっ、から~ん。


 突如、人波が途切れていた通りから、軽やかなカウベルの音と共に現れたのは……。


「真冬ちゃんっ、大変ですぅ」


 赤みの強い桃色の腰まで伸びた髪の毛を毛先で結わえた水無月みなづき 波音はのんちゃん。24歳、彼氏いない歴イコール年齢の合法ロリ教師と……。


「なんだお前たち、ここに居たのか? 登下校中の喫茶店への出入りは校則で禁止されているはずだろ? まあいい今はそれどころではない」


 陽麟学園学年主任を務める、そろそろ行き遅れが気になるお年頃になってきた南雲なぐも 姫子ひめこ先生、レモン色のセミロングの髪の毛をアップに纏め、34歳が俺たちを見付けるなり茶色の瞳を釣り上げた。


「いらっしゃい~波音に姫子さん」


「真冬、なにを呑気に皿など数えている、貴様、雪女のくせに呑気に万丈皿屋敷のお岩さんの真似事でもしているのか」


「真冬ちゃんっ! 外の様子やこの嫌な感じに気付かなかったのですかっ?」


「気付いていたんだけどね、この子たちが居たから騒がなかっただけなんだけど? ほら……」


 俺たちが座っているテーブルの方へと姫子先生に目配せをして、真冬さんが無言で意図を伝えた様だった。


「……久遠寺が居ない。そうだな賢明な判断だった、真冬。礼を言っておく」


 真冬さんは、姫子先生の言葉にやんわりと笑顔で答えた。


「……あの、ところで久遠寺さんは?」


「さあ? 店内に入って来たのはこの子たちだけだったけど?」


「美九音なら一旦家に帰ったぜ。俺たちはここで美九音が来るのを待っているんだが、あいつやたらと遅せぇーんだよ」


 波音ちゃんと姫子先生が顔を見合わせ頷きあって意思の確認を取りあった。


「室内に居た知泰さんたちが外の異常に気付けなかったことは仕方のないですぅ」


「私も波音先生も学園を出て、漸く気付けたのだからな」


「いったい外では何が起こっているんだよ? 姫子先生、波音ちゃん」


「事態は火急である。端的に話すが、これは異相空間に作られた偽装世界だ」


 異相空間? 偽装世界? なんなんだそれ……てか美九音は? 美九音は無事なのかよっ。


 俺は既に腰を上げて立ち上がって出入り口へと向かって歩き出していた。


「待て七霧」


「なんだよ? 姫子先生。先生、俺はあんたがなんと言おうが止めようが美九音を探しに行くぜ? それに小五音おばさんや他の皆も気掛かりだからな」


「だから待て。最後まで話を聞け、と言っている。本来、偽装世界というのは妖界そのものなんだ。しかしこの偽装世界はなんだかおかしい」


  姫子先生の話によれば何者かの手によって異相空間にある妖界あちら人間界こちらと繋げた時に、人間界こちらに出現する仮初の世界が偽装世界なんだという。


 妖界と人間界を繋げることの出来るのは、強い妖力を持った妖か、修行や鍛錬を重ねて術を得た強力な陰陽師か退魔師なんだそうだ。


 しかし大抵の場合に置いて妖が闊歩かっぽしていたといわれている昔、室町時代などでは人間界も妖界も並行した同じ世界であったらしいのだが、現在に置いて棲み分けされた人間界と妖界は異なる平行世界にあり、異相空間を開くのは妖の方で人間界に食事、つまりは捕食しにくる場合が殆どだそうだ。


 人間が異相空間を開くには1人の術者では敵わず何十名、何百名の術者たちが集い、日本の地下を流れる龍脈の力を持って印を結び、異相空間を開かねばならないらしい。


 何分、人間の力は到底妖一匹に対抗出来得るものではなく、人間は妖に対抗するために霊的な力、それも龍脈という地球自身が持つ力を引出し、龍脈から地上に吹き出す龍穴とも風穴とも云われる霊王穴を見付け出して、それを利用できるように法則によって術と成した陰陽道、または退魔術を身につけたのだという。


 しかしそれら陰陽師や退魔師の中に、規格外の発想を持って妖力を得た人間もいた。


 ある物は狐のあやかしの力を得た者、それがかの有名な陰陽師、安倍清明であり、また八百万の神々の力を得た、または自らが神そのものになった、はたまた元々が神だったのが七霧の始祖であったらしい。


「七霧、状況が分からない以上、軽率な行動は控えた方がいい。それに妙だこの偽装世界は。何者かの罠かも知れない、だから私が張り巡らせた蜘蛛の糸よりもたらされる情報を待て」


「待ってられっかよっ! 美九音がこんな訳の分からない空間に1人でいるんだぞっ」


 あいつは寂しがり屋さんなんだ。見掛けに寄らず。だから今頃、あいつは寂しがっているはずなんだよ。


 姫子先生たちの制止を振り切って出入り口のノブに手を掛けた。


「知くん! 待って」


 未美、お前まで俺に行くなって言うんじゃねぇーだろうな?


 未美は首をふるふる横に振った。


「あたしも行く、知くんだけをひとりで行かせないよ」


 未美……。


「御主人様」


 紅葉、お前はどうなんだ? 俺を止めたりはしないよな?


 紅葉は首を縦に振って俺に向って答えた。


「御主人様だけを1人でイカせたりしないイク時は私も一緒。御主人様は外に出さない、精子は中に出して」


 紅葉ーーーーっさん! あなたいろいろ間違ってますよっ!


 からっ、から~ん。


 乾いたカウベルの鐘の音と同時にノブに掛けていた手が突如として引っ張られた。


「知泰、何処に行くつもり、ウチ言ったよね? ここで待ってなさいって……」


「美九音……良かった、無事で」


「ほぇ? と、ととと、知泰……急になに? そんなに強く抱き締められたら痛いよ……」


 美九音の姿を見た途端、瞬時に安堵が胸の中に満ち溢れ、思わず美九音を抱き締めてしまった。


 冷えた美九音の体をぎゅっと背中に手を回して抱き寄せ、腕に力を込めた。


 抱き締めた手に感じる美九音の体温……あれ? なんだこれ。


「知泰、ウチね? お泊りが楽しみで……油断しちゃった……ご、め……ん、なさ……い」


 俺の腕の中で美九音は目を閉じ、細い体から力が抜けた。


「美九音ーーーーっ!」


「御姉様っ」


「狐っ?」


「久遠寺さん」


「久遠寺」


「九尾ちゃん?」




 気を失い眠ったままの美九音を抱き上げ、あいす・ありすの奥にある真冬さんの居住区へと連れて行かせてもらうことになった。


 着ていた服切り刻まれ美九音の小さな背中には無数の切り傷が付いていた。


 ちくしょうーーーーっっ! いったい誰が何の目的で美九音を襲いやがったんだっ! 許さねぇ―ぞ、絶対に許すもんかっ。


「落ち着け七霧。今、座敷童を呼び寄せた。あの子は結界に長けている、彼女が張った結界の中で休ませれば、久遠寺は直ぐに元気になる」


 くるる? 宇敷 枢がこの街に来ているのか?


「いいえ、呼び寄せたのですよ、知泰さん。彼女はまだ七霧の生家に住んでいます。火の車さんに連絡して七霧の生家まで枢ちゃんを迎えに行ってもらいました。それにしてもこの傷は……」


 鋭利な刃物で切られたような美九音の傷口を見た波音ちゃんと姫子先生が頷きあった。


「この切り口は鎌鼬かまいたちの仕業で間違いないだろう」


 鎌鼬? あの鎌鼬なのか?


「そうだ、七霧が思い浮かべた鎌鼬だ」


 かまいたち現象などは妖、鎌鼬の悪戯だったりすると言われている地方もあるとか……。そんなの作り話だと思う奴が現在には多いだろうな? だけど俺は信じた。


 だって俺の周りは妖だれけだしな。


「それに久遠寺さんは妖術を掛けられたみたいですね?」


 妖術? 呪とかじゃねぇーだろうなっ! このまま美九音が死んじまうなんてことねぇーよな? 波音ちゃん。


「……久遠寺さんは九尾の狐です。この程度の妖術のろいで死んでしまったりはしませんよ、知泰さん。九尾の狐のである久遠寺さんの妖力の方が他のどんな妖よりも段違いに強いです。久遠寺さんは規格外の妖なんですから大丈夫ですよ」


 現状の美九音は、本来の九尾の狐の力を発揮出来ない。


 だけども、夏休み明けから美九音は自身の中に眠っている、九尾の狐である久遠寺 美九音としてではなく、久遠寺 美九音という九尾の狐の力を目覚めさせ始めている。


 あの大陸から日ノ本へとやってきた大妖怪九尾の狐ではないんだぜ? だけれどもこいつは伝説の大妖怪九尾の狐をきっと超える九尾の狐に生まれ変われると俺は信じている。


 安堵の表情を浮かべた俺の顔を見ていた波音ちゃんが唇を噛んで目を伏せた。


「死ぬことはなくても、二度と目覚めないかも知れません」


「な、なんだって……」


「恐らく久遠寺さんが掛けられた呪は化け狸、火狸という妖の仕業です」


「火狸? そんな妖、聞いたことねぇーぞ」


文福茶釜ぶんぶくちゃがまを御存じですか、知泰さん?」


 知っているさ、有名な話だからな。


「文福とは文武火のことなんです。文火は緩火、武火は強火を意味するとされているんです、知泰さん」


「座敷童が到着すれば恐らくはっきりすると思うが、この異相空間を開き、偽装世界を作ったのは人間の陰陽師だ、たぶんだが……」


 なんで七霧以外の人間が美九音の正体に気付けるんだよっ! 姫子先生っ。


「それは久遠寺が九尾の狐の力を取戻しつつあるからだ。七霧、お前は知っているんだろ? 久遠寺の力が戻りつつあることを」


「まだまだ本来の、とはいかなくても妖の力が戻った久遠寺さんなら、陰陽師や退魔師なら見付けられます」


 ぽん、ぽんぽんぽん、ぽ~ん。


 深々と雪が降リ続いる中、腹筒みの音が外から不気味を運んでくるように聞こえて来出した。



つづく

毎度の御拝読アリガタウ。

次回もお楽しみにっ!><

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