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狐の嫁入りっ ちょっと? 九尾な女の子  作者: 雛仲 まひる
ちょっと? 九尾な女の子 連載1周年記念
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~ 眠り姫 ~ その5

 紅葉? お前はいったいなにに気付いたというんだ。


 もし美九音が妖たちによるトラブルに巻き込まれていたら……、いや、それだけじゃねぇーっ、あいつがもし事故かなんかに遭ってたりしたら……俺はどうすればいいんだ。


「大抵は御主人様にしか素直じゃない御姉様が、あんなにも甘えた仕草を私たちが居るにも関わらずに見せたから、御姉様が今夜のお泊りを決めた理由が分かった」


 ……えっ? なんだって?


 俺に対してだけ素直? あの美九音が? あいつの俺に対する暴言や暴力の数々を認めちまったら、イジメ問題も体罰問題も無くなっちまうわっ!


 それと美九音が今夜のお泊りを決めた理由になんてなりゃしねぇーよ、そんなの。


「もしかして狐の奴、焦ってるのかなぁ? あたしたちが狐の目の前で知くんにキスしたり告白? あたしたちの気持ちっていうか覚悟みたいなものを伝えて宣戦布告しちゃったしね」


「そ、御姉様は柄に無く焦っている」


 いったいお前らはなんの話をしているんだ? あいつが、美九音の奴が俺なんかにヤキモチなんて妬くもんかよ。


 それにだな、あいつは基本的に自分の物は自分の物、俺の物も自分の物っていう、何処かのガキ大将みたいなジャイアニズム崇拝者であってだな、お前らの言葉を聞いたくらいでは、あいつの神経は揺れたりはしないんだって、だからあいつがする嫉妬って言ったら精々子供がおもちゃを横取りされたくらいの嫉妬心しか湧いてねぇーよ。


「それで? 狼、あんたが言う今夜のお泊りを狐が決めたって根拠はなに?」


「私たちに御主人様を取られるんじゃないかと焦った御姉様は、今夜……」


「こ、今夜……? なんなの?」


「勝負に出る」


「紅葉、その勝負ってなんだよ」


「御姉様は今夜のお泊りで……」


「「お、お泊りで?」」


 俺と未美がゴクリと唾を呑み込んで紅葉の次に出す言葉を待った。


「御姉様は今夜のお泊りで……御主人様の赤ちゃんを孕む気満々」


 ……はい?


「なにゃにゃにゃにゃ……にゃに言ってんの? 狼っ! あの狐だよ? 見た目は派手派手しい容姿をしてるし、一見ではビッチに見える狐だけど、あの娘に限ってそれは、無い無い。だってあの娘って初心もいいところじゃん? そもそも行為自体考えてないわよ、絶対」


「そ? でも御姉様が既成事実を作るには今夜からがベスト」


「なんでよ? 知くんと時折、いい雰囲気になったりしてても、あの娘は常々「ウ、ウチね? ま、ままま、まだママになる覚悟が出来てないかも……だからね? そ、そそそ、そんなウ、ウウウ、ウチがママになるようなことはしちゃダメ……かも」って言ってるじゃん。だからあたしたちがいくしま童子事件のときに、一時は知くんのことは狐に任せるって諦めたけど、結局あの娘の態度が幼稚で曖昧だったから、諦め切れなかったんじゃない」


 未美が美九音を真似た。凄げぇーっ超そっくりじゃん。


「でも間違いない。今夜、御姉様は孕む気でいる」


 あの……紅葉さん? それはいったいどういうことなんでしょうか?


「そうよ。意味が分からないわ」


「猫、良く思い出して考えてみて」


「な、なにをよ……」


「今月、御姉様に月の使者が訪れたのは何時だったか覚えてる?」


 美九音に月の使者……だって? あいつまさかセーラー〇ーンにでもなるのか?


「えと……確か今月の月初めの方だったかしら? あの娘ってほら結構重いじゃん? だからその時期は超不機嫌になるから、あっ……始まったな、って分かるし」


「そ。今月御姉様に月の使者が訪れたのは、12月6日、午前9時12分24秒よ。その時、月の使者の導きで降った」


 えと……紅葉さん? 未美さん? いったいなんの話をしているんだ? 俺を除け者にしてさ?


「あ、あんた……やたら詳しいわね? もしかしてあたしのも知っているんじゃないでしょうね?」


「順調に月の使者が猫に訪れるとすれば、24日、25日、クリスマスに訪れるはず、御主人様へのクリスマスプレゼントには無理」


「なっ……な、なんであんたがそんなの知ってんのよっ!」


「ちなみに私は、もうすぐ訪れる。あと2.3日すればおっぱいが張り出す頃よ。私も御姉様もギリギリ、クリスマスベイビーも可能」


「あたしはニューイヤーベイビーなら可能だもん!」


 まさかと思うが……月の使者ってもしかして、男の子が苦手とする月に一度女の子に訪れるという〔ぱきゅ~ん〕のことだったのかよっ!


「そ。女の子だけの生理現象よ。御姉様はタ〇ポン派よ」


 上手い事言ってんじゃねぇーよ! 誰も誰が何派とかそんなことは聞いてねぇーんだよっ!


「ちなみに私は絆創膏派よ」


 だから聞いてねぇーって……おい紅葉? 絆創膏は〔ぱきゅーん〕用品でもないからなっ!


 絆創膏に対してとんでもない認識を持っていた紅葉が、小首を傾げて不思議そうな顔をして俺を見て言った。


「……パンツ?」


 違げぇーよっ! 何度も言うが絆創膏はパンツでもねぇーよっ!


「御主人様は嘘を言っている。二次元の女の子の中には〔ぱきゅ~ん〕や〔ぱきゅ~ん〕に絆創膏を貼っている子が居たわ。でも御主人様が教えてくれた。絆創膏は血が出たところに貼る物よ」


 そう言えば未美の誕生日に教えたっけ? あの時は未美が包丁で指を切ってしまったんだよな。紅葉も分かってるじゃねぇーか、正しい絆創膏の使用方法をさ。だったらなんでそういう思考に至ったんだっ! 紅葉っ。


「血が出るわ。それにパックr――あぅ……」


 紅葉の野郎が危うく魅惑指定内の限度を超えた描写を口走ろうとしたところを、おでこをペチッっと叩いてなんとか阻止した。


 危なかったぜ? もう少し止めるのが遅かったら、この物語が魅惑指定専門の姉妹投稿サイトに移されるところだったわっ!


「だけどよ紅葉? いったい、そ、そそそ、その……女の子の、は、ははは、話がどう関係してくるんだ?」


「今日は12月19日。御姉様は既に15日辺りから恐らく24日辺りまで非常に受胎し易い時期に、有体にいえば受胎を極力避けたい者たちには危険日に入っている、ということよ」


 ……いやさ? もし仮にだが美九音と今夜結ばれることになったとしてだ、避妊はするよ俺? きちんと装着致しますっ! 


 まあそれ以前に美九音には魅惑表記的行為が起こるなんてことは期待はしてねぇーし、先ずそんなことになる事自体が無いからなっ!


「無理。もし御姉様にさっきみたいに可愛く甘えられれば、御主人様は御姉様のお願いに逆らえない」


 いやっ逆らうねっ! あいつをママになんかしてたまるかよっ、そんなこと出来るわけねぇーっ! そんなことにもしなったら、なったならば、俺の彼女作って楽しいリア充高校生ライフはどうなるんだ! もう半分以上過ぎてんだぞ、俺の夢見た高校生ライフが叶わぬままにだっ!


「無理ね、知くんには」


 未美まで言うの? 俺ってどんだけ信用ねぇーんだよ。


「だってエッチだもん、知くんって。……あたしは別に知くんがエッチでも変態でも別にいいよ? 全てを受け入れる(努力をする)覚悟はあるよ?」


「私はオールOk――」


 ペチッ。


「あぅ……」


 黙れ変態狼娘っ! 


 しかし……美九音の奴、遅くねぇーか? 


 店の窓は太陽の光が弱まりって薄暗くなって来ていて、街路樹に飾られたイルミネェーションの光の実が稔っていた。


 ふと店内の壁に掛けられた古めかしいアンテーク調の柱時計に目を移して時間を見た。


 ……もう17時を半刻ほど回っているじゃねぇーか、もうあいつが家に帰ってから一時間以上の時間が流れている。


 紅葉と未美は、特に気にした風は無く、おしゃべりをしている。といっても未美が

一方的に喋っているだけなんだが。


「なあ? 美九音の奴、遅くねぇーか?」


 俺が尋ねると未美が答えた。


「女の子はね、知くん? いろいろ時間が掛るんだよ、ちょっと遅くなってるくらい許してあげなよね」


「そ。女の子は大変よ、御主人様。御主人様好みの勝負下着も選ばなくちゃいけないもの」


 だからそんな心配はしてねぇーんだって! なんかさ? 最近、周囲が静かなんだよな? 夏休みが異常だったといえばそれまでなんだけれども、なんかこうさ、静けさが逆に気持ち悪りぃーんだよな……。


 そのことについてこいつらは、紅葉と未美は、どう考えてるんだ? 聞いてみたい気もするんだよな。


「ちなみに私は絆創膏よ、それも可愛い狼の絵がプリントされた絆創膏。それが私の勝負下着よ? 聞いてる御主人様? 可愛いやつよ? それが――」


 ペチッ。


「あぅ……」


 聞いてねぇーよっそんな事を聞きたいわけじゃないっ!


「……知くん? なんだか嫌な感じがするわ」


 未美が注意深く窓の外に目を移して観察をしている。


 ……薄暗い? なんでだ、もう17時を大きく回っているのに? まだ薄暗い・・・なんて有り得ない。


 冬なんだから17時を回ればもう外は真っ暗になっているはずだろ?



 つづく

御拝読アリガタウ。

次回もお楽しみにっ!

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