得てして余りにも近くに居過ぎるって、遠くに居るのと案外変わらねぇーよな? 1
今回は狐っ子ヒロイン美九音ちゃんの扉絵、挿絵が入りますよ!
お楽しみにっ!
ではどうぞ! ><b
美九音……お前も俺から遠ざかって行ってしまうのか? また俺はひとりぼっちになってしまうのか?
……違うか。離れようとしたのは、いつも俺の方だ。
成績優秀でスポーツ万能、それに誰から見ても器量良しで誰からも好かれていて、妖界では姫様で強くて同族の妖狐一族や他の妖なんかからも慕われ求められている、そんなお前が今の俺には眩し過ぎるんだ。
目が眩んでなにも見えなくなってしまうくらいに……、目を背けてしまいたくなるくらいに……。
美九音、お前が眩し過ぎるんだ。
近くに居過ぎてお前のこと、このままじゃ見失ってしまいそうなんだよ……。
第二章 エピローグというか第三章プロローグ。
得てして余りにも近くに居過ぎるって、遠くに居るのと案外変わらねぇーよな? 1
イラスト:TOTO様
「さあみんなっ! ちょっと? 九尾が始まるわよっ。ウチの前に跪きなさい」
強まってきた雨を凌ぐために、俺たちは七霧本家の玄関を潜った。俺はというと現在、当主である兄貴を始め、親父にお袋、そして姉さん、そして俺という主だった七霧の血筋が皆それぞれの事情で留守にしている屋敷の中へ通された。
通したのは七霧の留守を預かっている源柳斎・S・与田だ。与田は代々七霧に使えてきた一族だと聞いている。
源柳斎はじいさんの代から七霧に仕えている人物で、七霧流古神道術、格闘術の最高師範大にして兄貴や姉さんに俺の師範であり、俺つきの執事でもある。
俺はというと七霧の玄関で倒れて意識を失ったそうで、暫くの間の記憶が飛んでいる。気が付けば姉さんや波音ちゃん、真冬さんに紅葉と未美、枢は濡れた服を着替えていた。
既に風呂も入り終わっているようで我が家のリビングで使用人が淹れた温かい茶を飲みながら、雨に打たれ冷え切った体を温めていた。
美九音の奴は大丈夫なのか? あいつも今頃は家に帰って風呂にでも浸かって体を温めているのかな?
それと未美の奴の姿も見ねぇーな、トイレにでもいっているのか?
「ところで波音先輩?」
「はっ! はいっ。なんでしょうか飛鳥ちゃん。アイハブノットマネーですぅ! お魚さんたちには本当に悪いことをしてしまいましたっ! ごめんなさいですぅ」
「もう良いのですよ? 鯉のことは知の言葉に免じて許して差し上げますわ」
「ありがとですぅ、飛鳥ちゃん」
「あの鯉たちは高かったのですが仕方ありません。知にあのように言われたら、わたくしは何も言えませんもの」
「……飛鳥ちゃん」
「ありがとね、君のお蔭で助かりました弟きゅ~ん、私も君に恋しそうだよ~ん♡」
「真冬先輩?」
「飛鳥ちゃんっ! 眼が怖いよ、そんなに睨まないでっ」
「……あの、飛鳥ちゃん? 話を逸らした私が言うのもなんなのですが、私になにか聞きたかったことでもあるのですよね?」
おどおどしながら姉さんを窺がいながら波音ちゃんが尋ねた。
「ええまあ。知の成績のことを少しお聞きしておきたくて」
……不味いな。
今度こそ殺されるかも知れねぇーな俺。
逃げ出したいところではあるのだけれども、体中が痛くて起き上がることすら出来やしねぇーのに逃げられるはずもねぇーか。
まあ重度のブラコンっていう不治の病を患っている姉さんは俺には優しいんだけれども、そこに一縷の希望を持つねぇーな? 期待はことごとく空振りしている俺だけれども……。
「波音先輩? 知の学業成績はどうなのです? わたくしは知のお嫁さんとしてあなたの将来を案じて聞いているのですよ?」
姉さん……。どさくさに紛れてうっかりお嫁さんっつーて言わなかったか? 今。
先程から頻繁に波音ちゃんが俺の方をチラチラと見ながら目配せを送って来ている。
【本当のことを言ってもいいですか? 嘘がバレるとあとで私が飛鳥ちゃんに虐められるんですぅ】
いいえ、そこをなんとかここは一つ水増し報告をお願いします。
【わ、分りました……。頑張ってみますぅ】
俺ってば、そんなに成績良くないんだよな……いつもテストでは赤点をギリギリ免れる程度だし……。こんな成績だと姉さんに知られれば……報告は両親や兄貴にも行くだろうな? ここは一つ頼みましたよ、波音ちゃん。
「え、えとっ! と、ととと、知泰さんの学業の成績は……えと、ですね?」
「嘘は許しませんよ? 波音先輩」
姉さんは眼光鋭く波音ちゃんにプレッシャーを与え始めている。
「……えと、ですね? 知泰さんの成績は……ちゅ、中の……じょ、じょじょじょ……」
「中の? どの辺りなのですか?」
「じょじょじょ……ぐすんっ」
今度は涙目になって波音ちゃんが目配せを送ってきている。
【と、知泰さ~んっ無理ですぅ無理。私、飛鳥ちゃんのプレッシャーに耐えられませんっ】
波音ちゃんを見れば、可愛らしい顔から冷や汗を拭き出していた。ごめん波音ちゃん、ここは可愛い生徒のために頑張ってください、お願いしますっ!
波音ちゃんは落ち着きを失くし内股をきつく閉じ、もじもじしながら涙目で訴え掛けてきた。
【む、無理無理ムリ~っ。漏らしてしまいそうですぅ! もう耐えられませんっ。ほら見て下さい知泰さん、あああ、飛鳥ちゃんからのプレッシャーで額から嫌な汁が出て来ましたっ! もう耐えられませんっ】
【波音ちゃんっ! なんか一本横線が足りてませんよっ!】
波音ちゃんはどうやら姉さんからの強烈なプレッシャーに耐え兼ねて、汗より画数が一画少ないなにかが出て来たらしい。
「波音先輩?」
「知泰さんっごめんなさいっ! 知泰さんの学業成績は下の中くらいですぅ。それも下に近いところでぅぅ」
おお神よ……。
「なに? 御主人様」
俺の嘆きの声に真っ先に反応したのは大神 紅葉だった。てか紅葉……お前のことじゃねぇーよ。
「知? それ本当なのですか? 七霧に生まれた以上、学業面くらいは頑張って貰わないとお母様になんとお伝えすれば良いのかわたくしも困ってしまいますわ。わたくしは知をこれ以上、七霧から遠ざけたくはないのですが……」
ちっ……また七霧かよっ! やってらんねぇーなっ。でも姉さんが俺のことをいつも庇ってくれていることは昔っから知ってる。
「姉さん……」
姉さんの顔が寂しげなものに変わった。きっと俺のことを心配してくれているんだとは思う。
「知? 今学期の中間、期末の学力テストの両方とは言いません。ですがどちらかで学年トップを取ってください。でないとお母様は知を七霧から追放しかねないのです」
「……今更、そんな成績残せるかよ、学年トップは美九音だぜ? それも入学して以来、一度だって学年トップの座を譲ったことがない、負けず嫌いで頑張り屋の美九音なんだぜ?」
「知、あなたもしかして美九音ちゃんに気を遣って?」
「あのっ! 飛鳥ちゃん? 失礼だと思いますが……知泰さんは普通に勉強しないから、現状の成績なんですぅ。授業中も居眠りばかりで……」
ヤベっ、要らぬ真実を伝えられちまった。これじゃもう姉さんにまで見放されちまっても仕方ねぇな……。
「それは本当なのですか知? あなたがそんなだから姉さんは……心配で心配で仕方がないのです。わたくしの知が七霧を追い出されたら……」
「姉さん?」
「って思うと悲しくて悲しくて、わたくしがですが」
……自分の心配だったのかよっ!
「ですがそこまで知がおバカさんだとは……姉さんはこれからどうしたらいいのでしょう」
「飛鳥っ! 知泰はそんなのバカじゃないわよ。あんた自分の弟のIQがどれだけかも知んないの? それで良くも姉面してるわねっ! 言っとくけど、前に一度お遊びでIQテストをやったことがあるんだけどね、そのときに出た知泰のIQって滅茶苦茶高かったんだからね」
美九音? お前、どこかに消えたんじゃなかったのか?
「うっさい! 黙れっ。ウチがどこに居ようが行こうがウチの勝手でしょうがっ」
「ほんと狐ってば素直じゃないわね? トイレなんかに隠れて居ないで知くんが心配ならあんたもここに来れば良かったじゃない、最初から」
「別に隠れてなんてないわよ。飛鳥と戦う前から我慢してたからトイレ借りてただけよ。超ヤバかったんだからね!」
「家が隣なんだから帰ればよかったのに、あんたってほんと素直じゃないわね。でもそれにしては随分、長時間トイレにいたじゃない?」
「隣とはいえ家まで我慢できそうもなかったし……ついでに2週間も御無沙汰だったものが出そうだったんだもん……。ってバ、バカ猫っ! それゆったらアカンことっ!」
「あんたが勝手に自爆してるだけじゃない。誰もあんたのトイレ事情なんて気にしてないわよ、大袈裟ね。どんな可愛いアイドルだって美少女だってトイレくらい行くわよ、生きてるんだから」
「ウ、ウチはそんなのしないもん! 萌えキャラだもん! 美少女だもん! 小さいのは勿論、大きいのなんてしないんだかんねっ」
美九音……もうやめろ、それ以上墓穴を掘るのはよせ。
「美九音ちゃん? 今言ったことは本当なんですか?」
「ええ、スッキリしたわ」
「いえ……あの、そっちじゃなくて知のIQのことを聞きなおしたのですけども……。良かったですね、美九音ちゃん? 女としてその気持ちは分からなくもありませんわ」
「…………」/////
「御姉様……可愛い」
「はぁ~……狐、あんたって本当はバカじゃないの? ほんと残念な美少女ね? あんたの可愛さとかほんとなにかの間違いじゃないの?」
「う、うっさい……」
「あたしなら好きな人の前で、とてもじゃないけどそんな乙女の事情は話せないわよ」
「…………」/////
「それで? 知くんのIQって幾つくらいあんのよ?」
「え、えとね? ……確か200は超えてた、と思うわよ」
「……」←未美「……」←波音「……」←真冬「……」←飛鳥「??」←紅葉。
「「「「えぇえええええっ!? IQ200以上!」」」」
「??」
なんだ? そんなに驚くことなのか? IQの数値が高いくらいで。そんなのなんの役にも立ちやしねぇーよ。
まあ夏休みとかに補習とか受けるのも面倒だし、赤点ギリギリの回答だけしてあとはやらなかっただけだし。
だってテストって面倒じゃん。まあテストなんだから答えを書かなきゃ点数なんて取れねぇ―よ。(笑)
To Be Continued
ご拝読アリガタウ。
次回もお楽しみにっ!




