九尾な女の子 8
こんばんは 雛仲 まひるです。
いよいよ第一章の最終話となります。
前回、幼馴染、美九音のために鬼と対峙した知泰でしたが、負けそうです。てか死にそうなんだけど。
(´・ω・`)
彼が聞いた美九音の声は現かそれとも幻かっっっっっ……←ドップラー効果。
それではお楽しみくださいねっ!><b
知泰、ウチのために戦ってくれてありがと。ウチは、ウチはね――。
頭の中に響く幼馴染の声を聞きながら、視界に揺れる眩い金色の光を見詰めながら、膝から崩れ後ろに倒れていく。
徐々に広がる視界には金色の野に乗った嫌になるほど、見慣れたムカっくほど愛嬌のある三角の狐耳と憎ったらしいほど愛くるしいふさふさの尻尾が映り込んだ。
そして……。
短い制服のスカートの裾をそよ風に波打たせた美九音が駆け寄り、崩れ掛けた俺の身体を支えて抱き止めてくれようとした美九音共々地面に崩れ落ちた。
「……ご、めん美九音。俺……約束守れ、なかっ、た」
「もぅバカっ無茶ばっかしちゃって……。ほんとバカ、バカなんだからあんたは」
風に波打ち、しかも駆け寄って来きた美九音は派手に跳ね上がるスカートの乱れにも脇目も振らずに駆け寄って来てくれた幼馴染の姿が、その光景が、美九音の姿が俺の目に、瞼に、記憶に強く強く焼き付けられた。
腰の辺りで左右に細くリボン結びされた紐、見上げれば誰しもの気持ちを爽快にさせるだろう、空の様でもある水色のレース布地と、そのバックを彩る黒いスカートの裏地、雲の様にも見えなくもないスカートの中に仕舞われた白いシャツの裾とその奥に雪原を思わせるほどに白い肌とキュッと窄んだヘソがチラチラ見え隠れし、しなやかな足を包んでいる黒いニーソのゴムに締め付けられた美九音のスリムな太ももを肉肉しく魅せていた。
彼女のスカート内での主役は上品なレースが殆どを占有し、中に極々少スペースの厚手の部位。つまりは通常、人が足を動かすことで最も酷使される股間部分を補強する為に布が二重に張られている箇所である部分、クロッチが辛うじて美九音のプライバシーを死守していやがった。
チクショウっ。
レースに編み込まれた薔薇の花が幾つも咲き誇りヘソの下、下腹部に当たるラインの上部中央にはワンポイントのやや大きめのリボンがあしらわれ、扇情的なデザインにそぐわない可愛らしさを演出している。ちょっと前に全貌を目の当たりにした最近になって背伸びし始めた美九音のおぱんちゅが――否、獣耳の美少女達が魔法の力で起動する飛行ユニットで未知の生物と戦うアニメで言うところのズボンが死を目前にしている俺の瞼に焼き付いたのだった。
俺は幼馴染の、美九音のスカートの中に確かに見た。三途の川の手前に咲き誇るお花畑を……。その更に奥に咲く花びら……秘密の花園に咲く、お花畑、いや一輪の花、見た、かっ、た。
「とっ、知泰っ! 死に掛けてるのにウチのスカートの中身を詳しく解説しなくていいからっ! ……もうバカっ、ほんとエッチなんだからっ」
幼馴染みの声に三途の川、一歩手前で意識を繋いだ視界の先に顔を赤らめた美九音が俺を覗き込んでいた。
「知泰? 女の子のスカートの中身を三分の一ページにも及んで読者さんに解説しちゃう鬼より鬼畜で畜生にも劣る脳みそのあんたには、あとでおしおきなんだかんねっ! ウチに断りも無く勝手に死んじゃったら許さないんだからっ。っとその前に……。ちょっと? 低能鬼っウチの下僕になんっつーことしてくれてんのっ」
……なぁ美九音。なんつっかこう感動するはずの場面で罵倒って斬新だよ。っんとお前って奴はよ。
「美九音ってめぇー! 下僕ってなんだよ下僕って。そこは大事な幼馴染とかくらい言えんのかっ!」
思わず突っ込んでしまったじゃねぇか。お蔭で意識は戻って来たけどなっ! あっ痛みも戻って来た……。
「却下っ」
すくっと立ち上がり俺と鬼の間に割り込んだ美九音は普段の蜂蜜色の髪の毛より、輝きを増した黄金の髪の毛をなびかせて、何時もの様に手を腰に当て凛々しく狐耳と何時もより一本多い自慢の尻尾をゆらゆら動かしながら、ちょっぴり不憫な胸を目一杯突き出して胸を張った傲慢極まりないポーズを取っている。
普段より尻尾が一本多く出ているってのは、お前パワーアップでもしたの?
「あんたはそこに座ってなさいっ。邪魔だから」
はいはい。
「後は……任せた」
美九音は唇の端を吊り上げてニヤリと笑んだ。
結局、お前に任せちまう事になっちまったから、最後まで見ててやるぜ美九音。
「ふんっ! ウチを誰だと思ってんの? 眉目秀麗、スタイル抜群、スポーツ万能、学業優秀で優しくて気立ても良くて、とってもキュートな美少女美九音ちゃんよ。この世で一番綺麗でこの世で一番可愛くて古今東西、右に出る者無しの美貌の持ち主のウチに後は任っせておけばいいのっ」
美九音はなんだかご機嫌麗しい御様子で何時もより一本増えた尻尾を振り振りして見せた。
ふっ……すっかり何時もの自信満々美九音ちゃんに戻ってやがんのな。
俺は美九音の傍若無人な振る舞いに安堵にも似たものを感じると、急に力が抜けてしまいその場に寝そべったまま美九音を見上げた。
よくよく美九音を見ると恐らくは俺達、目掛けて振り出した鬼の拳をか細い腕一本で受け止め、例のポーズを決めて唇の端を軽く歪ませ自信満々の小憎ったらしい微笑を浮かべていやがった。
「ねぇ鬼? このままあんたを放っておいたらあんたが垂れ流している妖気で他にも妖が集まっちゃうでしょうがっ! そんな事も分かんないわけ? 大人しくどっか行っちゃえば見逃してあげたものを……。ウチらはね、戦いたくなんてなかったのに、何時までもあんたがメタボ腹露出してうろついてるから、この白面金毛九尾の狐の逆鱗に触れる事になったの分かってる? ウチはね、出来れば御淑やかな女の子のままでいたかったのっ」
あのー? いろいろ突っ込んでいいですかねぇ美九音さん?
「却下っ」
うぃーい。
「さて、あんたはウチの下僕に怪我を負わせた。でもそんな事はちっぽけなことよ。どうでもいいわ」
おいっ! おまっーなぁーっ。
「あんたも分かってんでしょ? むかしむかしに人間と共存していくことを決めた妖 には 妖のルールってもんがあるでしょ大むかしと違ってっ。その低能な頭でも分かってるはずでしょ?」
「ぶぅうぉぁぁあ」
美九音の説教に首を傾げていた鬼が急に暴れ出し奇声を上げて襲い掛かった。
「ちっ、仕方がない。あんたはもう消えなさい」
鬼の一撃を受け止めた美九音の身体が、拳を受け止めている右手が一際強い輝きを放つと、鬼は断末魔さえ残すことなく放たれた輝きに呑み込まれた。
輝きが消滅した後に鬼の姿は無く恐らくは、一瞬にして消し飛んだのであろうか跡形も残っていなかった。
美九音? 尻尾が一本多かったけれども、まだ本調子には程遠いのだろうけど、これが白面金毛九尾の狐の力なんだな? どうやってお前が力を取り戻したのかは分からねぇけどさ。
……チクショウ。
頼むから完全復活するのは止めてくれよ美九音。俺、毎晩涙で枕濡らすのヤダからなっ。
っ……また痛みが戻ってきやがった……意識、がも、ぅ……。
俺の傍でしゃがみ込もうとしている美九音の姿が歪んで見えやがる。……ブ、サイクだ、なお前、ザマーァァー、バーロー。
「と、知泰? しっかりしてよっ……ねぇ知泰ってばぁ? 返事しなさいっ知泰……と、も…ひろ? ……っ、死んじゃ、ヤダぁー」
……ちっ。さっきまで快晴だったのに、雨、降ってきたじゃねぇか……。天気予報士の野郎、俺、きょ、う傘、持って、きて、ねぇ、じゃ、ん……。
「い、や……だ。嫌だよぉー知泰っっ」
美九音、ご、めん……な……。
それからっていうか、その後の話。
気を失った俺が目覚めたのは学園近くにある病院のベッドの上で、あちこち激痛が走った身体も筋肉痛程度に痛みになっていた。
流石に折れた左腕はかなり痛んだけども、その他身体の至る所についた小さな傷の殆どは消えていた。
美九音が治してくれたかは定かではないけど、こんな事は人間には出来ない、出来るはずがないからな。大方お前か、お前が呼び寄せた妖の仕業だろうと思う。
病院まで付き添ってくれた学校医の先生に話を聞いてみたら、俺の他に怪我をした生徒は居らず、俺は新学期早々、浮かれてはしゃいでいて階段から転げ落ちて気を失ってここに運ばれた事になっていた。
聞きはしなかったが鬼の姿を見たものも居ない様子だった。なにがどうなったかなんてのは、俺には分かんねぇけど、きっとこれも美九音のお蔭なんだろうよ。
「私は学園に戻るけど、貴方に迎えが来るまで大人しく寝てなさいね」
「へーい。でも俺に迎えって? 家族は皆直ぐには来れないところに居るけど誰が迎えに? いったい何処から来るんです?」
「あの世からね」と言い残しカーテンを閉める学校医の先生。
……嫌じゃーそんなもんっ!
仕切りカーテン越しの先生に返事を返し、俺は既に治療を終えている折れた左腕に視線を移すとベッドの傍らに座って、俺の手をギュと握って眠りこける美九音の姿があった。
「御苦労さん」
美九音のちっちゃい頭に右手を乗せ、労いの言葉を掛けてやると美九音は狐耳とふさふさ尻尾を出してニヤリと顔を歪め「……ぅん」っと可愛い寝息を吐いた。
「ごめんな美九音」
そして守れなかった約束の詫びを入れ頭を撫でてやる。狐耳と何時もの数に戻った一本の太くてふさふさの尻尾を揺らした。
チクショウめっ。尻尾を振って返事しやがったよ、こいつ。
恐らくいろいろ後始末に頑張っただろう。妖の幼馴染にもう一度、気持ちを伝えておくとする。
「ごめんな美九音、守ってやれなくて。ごめんな美九音、お前を戦わせちまって。……ありがとな美九音、助けてくれて。御苦労様お前は大した奴だよ、ほんと……」
美九音は尻尾をパタパタ動かして「もっと褒めて」っと催促している様だ。
ほんと寝ている時だけは、こんなに可愛いのに……。
間違いなく、ぐっすり眠っていて俺の声なんて届いてないはずなのに、美九音は狐耳と尻尾を振って「もっと褒めて、もっと褒めて」とパタパタ嬉しそうに動かした。
……寝ているのに器用な奴だな、お前は。
第一章 ちょっと? 九尾な女の子 おわり。
御拝読ありがとうございました。^^
今回で章の区切りとなりまして、
次回はちょっと? 九尾な女の子 8.5 前後編。
第二章のプロローグというか幕間というか、繋ぎになる回となります。
美九音に加え新キャラも登場し知泰の周りは騒がしくなりそうですw
そしておまけというか、以前にブログのお友達が描いてくださったイラスト(ちびみくねちゃん)を挿絵代わりに挿入いたしますので、こちらもお楽しみに^^
この作品に関するご意見、ご感想をお待ちしております。
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美九音が――(ry (ノ・∀・)ノ =====┻━┻))゜Д゜)・∵.
作者が_○TZ
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美九n――(ry (ノ・∀・)ノ =====┻━┻))゜Д゜)・∵.
作者が_○TZ
では次回をお楽しみにっ!