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狐の嫁入りっ ちょっと? 九尾な女の子  作者: 雛仲 まひる
season2 第二章 なんてこったっ! 嫁と姉ちゃんが修羅場ってるんですけどっ
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なんてこった! 嫁と姉ちゃんが修羅場ってるんですけどっ 8

 愛しのロリ教師であるところの水無月みなづき 波音はのんちゃんから愛の告白を受け取るべく、呼び出された生徒指導室に向かう途中、隣を歩く美九音といえば、ずっとムスッと頬を膨らませている。


 なんなのこいつ? なにを怒っているんだ? 俺にはさっぱり分からん。


 考えても美九音が怒る理由なんて有り過ぎて分かるはずもないんだよな? だってこいつってさ、普段から理不尽じゃん? 


 いつも怒っている奴の思考回路のロジックなんてものが常人の俺に分かるはずもねぇーんだよ。


 考えることを拒否した頃に生徒指導室に着きドアを開けた。さあっ! 波音ちゃん。俺になにか用なのかい? なぜかいち生徒である俺にベタベタ寄り添ってきてくれる波音ちゃんにはわるいけれども、誰だかは言えないんだけども俺には、その……まぁなんだ? 気は強ぇし理不尽で我が儘だけれども、放っておくとなにをやらかすか分からねぇー可愛くない幼馴染がいるんだよ。


 だからその……波音ちゃんは教師で俺は生徒だし、波音ちゃんは妖だし俺は人間だし……あっ!? 美九音も妖か。ってうっかり名前言っちゃったよ俺。


 え、えと……そのつまりは教師と生徒である立場の俺たちだから、えと……き、禁断の愛って言うのは世間が許さないわけで、その……、んん? 待てよ禁断の愛か……一度火が点いたら萌え、もとい燃えあがりそうだよな? でもそれって恋愛初心者の俺には刺激が強すぎね? だから波音ちゃん? もう少しおっぱいが膨らんだらにしようね。あっ! 間違えた、俺が卒業してから考えようね。


「知泰、あんたってほんとめでたい脳ミソ持っているわね? ときどきあんたのそのポジティブ思考が羨ましくなるわよ。波音ちゃんからの呼び出しなんてろくなことないに決まっているじゃない」


「久遠寺さんっ酷いですぅ! 本人の目の前で」


 目を潤ませて美九音に抗議の声を上げる波音ちゃん。美九音の読唇術かテレパシーだか分からないが俺の内心を読み取るの特技に驚いていたが、そういえばもう指導室に入っていたのだった。


「それで波音ちゃん。俺たちに用ってなに?」


「そうそう、そうでした。えとですね。七霧君と久遠寺さんには言って置かなければならない重要なお話がありました」


 なんだなんだ? 意外とまともな呼び出しだな。俺はまた妖どものいざこざに巻き込まれるフラグでも立つんじゃねぇーかと思っていたんだぜ?


 潤んだ目を擦って浮かんだ涙を拭き取った波音ちゃんが、先ほどまで弱弱しかった目に力を宿らせ強い眼差しを送ってきた。


 いよいよそれらしい話が出てくる気配がするなっ!


 しかしよく見ると小さな顔に乗る小ぶりの唇を尖らせて頬を膨らませているところを見ると、どうやら怒っているみたいだな?


「知泰さん? 久遠寺さん? あなたたちが2年生に進級したときにも進路調査表を出してもらったことを覚えていますか?」


 そういえば出したような気がするな。


「あなたたちはそれになんて書いたか覚えていますか? では久遠寺さん?」


「そうね、ウチは確か……そうね確か進路調査票に……ウチは…………」


 美九音が可愛い仕草をして小首を傾げた。


「あは♡」


 どうやら美九音の奴は自分が書いた進路を忘れたらしい。


「久遠寺さんは確かですね~。永久就職一択だったかな? “24歳で七霧知泰君のお嫁さんになって新婚から3年くらいは2人でイチャイチャしたあとで子供を生んでママになりたい。子供は3人くらい欲しいかも? でもでも最初の子供は女の子がいいなぁ~。子供たちが社会に出て就職したら隠居して知泰と2人でまた出るか出ないか分からない年金をあてにしながら、孫たちに囲まれた質素でも幸せな老後を送りたいかな?” ですよ久遠寺さん? あなたは子供ですかっ! もっと自分の将来なのですから具体的なビジョンを持ってくださいっ」


「な、ななな、なに言ってんの? めちゃくちゃ具体的じゃないっ! どこがいけないって言うのよっ!」


 美九音ちゃん? ぷりぷり怒っているようだけども、お前は幼稚園児かっ! 高校生にもなってそんな進路を書く奴がどこにいるんだよっ!


「ダメなものはダメなんですぅ! 知泰さんのお嫁さんって言うのがそもそもダメなんですぅ~。私の夢を奪わないでって! もう久遠寺さん夢、叶っていますよね? 知泰さんに嫁いだのですから、34歳独身の姫子先生を差し置いて」


「……」


 ぷりぷり顔から一転、可愛らしい顔をくしゃくしゃにして涙目になる美九音ちゃん。


 これ以上、波音ちゃんが地雷を踏む前に昨日、美九音との間にあった話のことを小声で耳打ちした。


「波音ちゃん? 今、その話はタブーなんですよ」


「えっ? 別れちゃったのですか?」


 違げぇーよ。もとの関係に戻ったんですっ! もともと意地張った美九音が勢いで挙げた式だったから、もっとこう~なんていえばいいんだろ? きちっと正式に式が挙げられるまで……違う違う。


「もっとお互いが大人になって責任を取れるようになってから、また考えようってことになったんですよ」


「そ、そうでしたか……そ、それより知泰さんはなんて書いたのか覚えていますか?」


「ちょっ!? あんたなに無視してくれちゃってるの? ウチの話を最後まで聞けってんのっ!」


 普段、人のは話なんて最後まで聞いたことなんてねぇーのに自分を棚上げして、ぷりぷり怒ってんじゃねぇーよ美九音っ。


「知泰さん? あなたも人の話を聞いてくださいね?」


 愛らしい波音ちゃんをフォローしたはずがとんだとばっちりがきたっ!


「そうだな、俺は確か……そうだな確か進路調査票に……俺は…………」


「俺は? なんですか知泰さん?」


「あは♡」


 どうやら俺も忘れてしまっているらしい。


「知泰さんはですね、確かですね? “眩しい太陽が沈む方角に、東に行って確かめてみたいと思う。そこにきっと俺の眩しく輝く未来があるはずだから” ですよ知泰さん? 中二病ですか! もっと現実を見てくださいっ」


 誰が中二病ですかっ! ちょっと夢見がちだっただけですよ!


「もっ! 少しはご自分の将来を真剣に考えてくださいねっ!」


「ねぇ波音ちゃん? ウチらに用はそれだけ」


「ええ、それだけですが……。あっ!? そうだった。えと御苦労様、久遠寺さんはもう帰ってもいいですよぅ。もう少し知泰さんには大事なお話が残っていますから時間をくださいね」


「ちょっとっ! 波音ちゃんっ。知泰になにしようてーの?」


「なにもしませんっ! ですが久遠寺さんは聞かない方が良いお話になるので、大人しく先に帰ってくれると嬉しいです」


 なんとなく美九音が言っていたように、妖絡みの話でもあるのか? 嫌な予感が的中しそうな雰囲気になっちまってるな?


 妖絡みの話になれば、俺としては美九音には是非、帰って貰いたくはないところなのだが、例え今の美九音にそれほどの力が無くても正真正銘の大妖怪、九尾の狐なんだからいざとなれば心強いんだよ、俺ってほら? チキンじゃん。


 いつもはおどおどして頼りない感じの波音ちゃんが珍しく、毅然とした態度で美九音を諭した。その瞬間、指導室の空気が一変した。


 なんと言えばいいのか分からねぇーけど、重くてジトっとしていて身体に絡みついてくる、といった感じの空気だ。


 鈍い俺でもこれは水無月 波音という蛇の化身、強い妖が出すプレッシャー、つまりは妖気なんだと悟った。


 でも俺としては……あとのことも心配なんだよ。


「は、波音ちゃん? あまり美九音を邪険にするとあとが厄介ですよ?」


 特に厄介なのは他でもない、あとで美九音の怒りを体で受けることになる俺がなんだが……。


「知泰さんは、そんなに久遠寺さんを悲しませたいのですか?」


 えっ!? そんなに重大な話になるのっ!


「知泰さんが良ければ、久遠寺さんの前でお話してもいいのですが、でもやはり私としては気が引けちゃいますぅ」


 なに? なんなの波音ちゃん。嫌な予感しかしねぇーんだけど。


「よしっ! 美九音は先に帰っていてくれ」


「知泰がそう言うなら……。わ、分かったわよっ! でも知泰はあげないんだからねっ! もっ! こんなところで本気だすなっての波音のバーカっ! ウチ、今あんたの本気を受け流せるほどの妖気を出せないんだからねっ。人間の姿を保つ妖気だけで精いっぱいで他に割けるほど無いんだから……こ、怖いじゃない」


「今はそんなこと言っている場合でもないので、心配しなくても知泰さんは取ったりしませんよ。今は、今だけはですが」


 その後も暫くの間、美九音はなにかを言おうとして口をパクつかせていたのだが、波音ちゃんの緊張した面持ちと俺でも分かる程の強い妖気を発している波音ちゃんの只ならぬ様子を察して大人しく引き帰っていった。




 美九音が指導室を退室して暫く、波音ちゃんは美九音の妖気を探っている様子だった。時折、顔を顰めて難しそうな表情を見せていた。


 美九音は今現在において、それほどの妖、九尾の狐としての妖気ちからが無い上にコントロールもままならないようだと波音ちゃんは言った。


 しかし、もともと気配を隠すのが抜群に上手く、調子さえ崩していなければ完全に気配を断ちきることが出来る美九音だけに、波音ちゃんといえども感知するのは難しいらしかった。


 やがて美九音の気配が遠ざかるのを確認したのか、緊張した表情を解いた波音ちゃんが静かに口を開いた。


「さて……知泰さん」


「なんでしょう。波音ちゃん」


 波音ちゃんが俺とふたりの状況を作ってしなければならないような話ってなんだ? いよいよ嫌な予感が増して来たぜ……。


 いや待てよ? これって……まさかの告白? いやいや、それはねぇーか? さっき美九音が俺を取るとか取らないとか拗ねていた時に波音ちゃん言ってたもんな。


 でもまだ可能性はある。と信じたい。妖絡みの話だったら俺はなんの力になれねぇーし。


「あのっ! と、知泰さんっ! こ、ここ、この間に久遠寺さんをストーキングしていた際、知泰さんが変態仮面になるお手伝いをしましたよね? そ、そそそ、その時に貸した私のパンツ返してくださいっ!」


 ……淡い期待空振り。


 で、でもセ、セーフ! 美九音が素直に帰ってくれて助かった! 


 波音ちゃんが俺とふたりになってまでの話っつーのは、まさかの重大要項だった。


 


 To Be Continued

ご拝読アリガタウ。

次回もお楽しみにっ!

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