九尾な女の子 7
こんばんは
雛仲 まひるです^^
さて、いよいよ鬼ともバトル開始っ!
って……知泰っ! Σ(┘□゜└)
果たして知泰は美九音を守りきれるのか? (´・ω・`)
鬼野郎が俺に向かってゆっくり歩みを進め間合いを詰めだした。
よし挑発に乗って来た。俺は鬼との距離を保ちながら更に煽って広い校庭に出、そこから一気に校庭の真ん中までダッシュし距離を取った。
そして美九音に訊いた通り御守りの口を紐解いた。
紐を解いた開いた御守りの口から金色の光が溢れ出す。そして御守りの中から美九音の金毛を摘まみ引出した金毛が俺の手の平の中で刀の姿に変化し、溢れ出し続ける光が俺の全身を包み込んで行く。
金色のオーラの如く身体に纏わり付いた光から感じるというか流れ込んでくる力を唐突に理解する。
これが美九音の、大妖怪九尾の狐の妖力なのか? 初めて知った。そうかこれが本当のお前なんだな……。
俺は全身に美九音を感じながら、後を追って来ているはずの鬼に向き直った。
「さぁ始めようか鬼さんよ……ってあれ? 鬼が居な―― !?」
追って来ていたはずの鬼の姿が消えていた。何処に行きやがったんだあの鬼の野郎は……。
――刹那。
俺を中心とした辺りに歪な影が広って行く。
「上かっ」
見上げると得物を振り降ろしながら、頭上から俺目掛けて落下して来る鬼の姿があった。
咄嗟に身を翻し転がる様に避けた。
先ほどまで立っていた方向から、轟音とほぼ同時に舞い上がった砂埃を含んだザラついた風を感じ、無意識に風の来る方向に視線を向けた先に陥没した地面が視界に映り込んだ。
鬼の動きが思った以上に素早い。目で追掛けられない程じゃないが……、こんなに俊敏だったのかよっ。
俺は見誤っていた。っつーか俺の思考がはなっから間違えていたんだ。そうだ相手は妖だってことを本当の意味で理解してなかったんだ。
人間の常識なんて、人間の考える定石や戦術が当て嵌まるだなんて考える方がどうかしてたぜ。
どうこう考えている内に二撃目の攻撃が飛んで来る。
転がりながら地面を這い辛うじて躱して、そのまま転がり勢いが付いたところで反動を利用し跳ね起きる。
(構えなきゃ)
思考と同時に刀を構えるが、刀ってのは案外重い得物で鍛錬不足の俺に扱えるかどうか不安になって来た。
だけど……。
迷っている暇はない。こいつを倒さなきゃ何れもっと強くて多くの妖が集まって来る。数が増えれば美九音を戦わせる事になっちまう。
「……覚悟決めたぜ? おっさん」
躱しながら目を慣らし、幼い頃から習って来た闘術の勘を徐々に取り戻していく。
間合いを計り若干腰を落とし胸元で止めた太刀先は、やや下がり気味で前のめりの――そうこれだこの感覚だ。
俺は刀を“平晴眼”に構え直し鬼と対峙した。
鬼の動きがピタリと止まる。
戦いの流れを感じ取ったのか不用意な攻撃を止めた様だ。
まぁなんだな? ブランクはあるけどもガキの頃から嫌と言うほどやらされて来た事って、頭より身体が覚えてるもんだな? 望んでやってたわけじゃねぇけどよ今日だけは七霧の家に生まれた事を感謝してやんよ。
「さて仕切り直しといこうぜ」
今の間合いは鬼の距離。
俺の距離まで詰めるには、あの糞デカイ得物を躱して鬼の懐に踏み込むしかない。
時間は掛けられないが焦りは禁物、震える身体と心を落ち付かせる様に、俺は息を大きく吸い込み長く息を吐いた。
逐一微妙に変化する間合いに合わせ、呼吸を変化させて間合いに合うリズムを作り出していく。
“一撃で決める”なんてこたぁ無理だ。……だったら先ず鬼の動きを止めるまで。
無駄な打ち合いを避けリスクを最低限まで持って行く。狙いはそうだな――アキレス腱なんてどうだ? 体格差があっても届く急所。正確に狙えるかどうかなんて考えるだけ無駄。
俺には三年のブランクがあるんだし、相手は手合せしていた頃の人間じゃない。そもそも妖は愚か人間相手にだって実戦なんてもん、俺には経験がないからな。
季節は心地良い春だというのに額には汗がべったり張り付いている。けど拭うなんて野暮な事はしないぜ。
ジリッ。
微妙に保って来た距離を僅かに詰める。
妖にどれだけの知恵があるかなんて図れねぇけど、恐らく今対峙している奴は動物的感覚に近いと考える。奴は本能で間合いを知り自分の距離を本能で測って、いや、知っていて攻撃に転じるはず。
だったら……こっちからお前の距離に入ってやんよ! 虎穴にいらずんば虎児を得ずってな。
「こっちからあんたの距離に入ってやるぜ、おっさん。……だから感謝しなさいよねっ! うりゃぁ!」
ツン一発気合を入れて大きく一歩踏み出し懐に飛び込んだ。
来いっ! 得物を振り下ろせっ。
鬼の奴は誘いに乗って来た。人間の身の丈程もある鉄の塊が俺に目掛けて振り下ろされた。
グッジョブ俺。
超怖えぇーけど逃げるな、逃げるな俺、そのまま突っ走って懐まで行くぜ。
ビビって逃げそうになる心と震える手足に言い聞かせ、恐怖を振り切り紙一重で得物を遣り過ごしたところで背後から地面を叩く轟音がした。
鬼の一撃を間一髪で躱し鬼の足元で急停止。
攻撃を躱され動きを止めた鬼の後ろに回り込み、刀を脹脛目掛けて力の限り振り下ろした。
「ぶぅぉぉおお」と鬼の野太い獣の咆哮と目の前に広がる血飛沫。返す刀でもう一撃お見舞いしてやりバックステップ宜しく距離を取る。
片膝を地面に着いて悶絶している鬼目掛けもう一度背後から仕掛ける。今度は下がって届く様になった首を狙うぜ。
俺の間合いに入った悪いがお前のその首、貰うぜ。
……刀を振り下ろそうとしたその瞬間、脳裏に眼前で頭を垂れている鬼の映像と刀を振り下ろした先に訪れる結末がリンクする。
あれ? 刀を振り下ろせない。
動きを止めた一瞬を突かれ、鬼が振り出した拳が俺の身体に直撃した。
ちっ……、裏拳喰らっちまった。
人知を絶する力をまともに喰らって紙切れの如くふっ飛ばされる俺。
危なかったぜ。美九音の結界がなきゃ一撃で死んでたわ。っつてもノーダメージなんて都合のいい様には行かないもんだな? 全身が痛てぇ……。
痛みを堪え顔を上げ鬼の居る方向に視線を向けると……。その視線の直ぐそこに鬼の姿があった。
何時の間に距離を詰めやがったんだ? こいつ。
脹脛にくれてやったさっきの一太刀は、気持ちの何処かでビビってただけ踏み込みが甘かったか? 腱まで刃は届かなかったみたいだ。
動きを止められなかった俺に向かい怒りを纏った手負いの鬼が、問答無用で馬鹿デカイ得物を俺目掛けてフルスイングしやがった。
「あぐぁ……」
ジャストミートかよ……。あんた……いい四番打者になれるぜ。
スタンド目掛け飛んでくボール宜しく、盛大にふっ飛ばされ校舎のガラスと冊子を突き破り、整頓された机をドミノの如く蹴散らして、廊下側の壁に激突し漸く停止した俺の身体。
超痛てぇーシャレにならねぇーぞ、これ。
それでも俺は立たなきゃいけねぇ。言っちまったからなぁ――あいつに……。
戦わなくていいって、今度は俺が守ってやるって。あんなんでもあいつは俺の幼馴染だからよ。
痛む身体を起こして引きずる様に窓に向かう。
あぁあ……これどうすんの? 教室ぐちゃぐちゃだし窓ガラス割っちまうし……、俺知らねぇかんな。先生が来たらあんた指差して「あの変なおじさんが割りました」ってチクってやる。
割れた窓から外に出て鬼の前に出る。
「おっさん――まだだ、まだだぜ。俺はまだ終わってない」
刀を構えようとして身体の異変に気付いた。
あれ? 左腕が上がらない。
自由にならない左腕に視線を落とすと腕が有り得ない方向に曲がっていた。
あははっ……。
痛みが酷いと脳が麻痺させるっつー話を聞いた事あるけど本当なんだなあれ。
使えない左腕を後ろに、やや斜に身構え右手一本、切っ先を鬼に向ける。
「さあ来い仕切り直しだ。腕一本は貰うぞ、おっさん。うりゃぁあ!」
力の限り踏込み懐に潜り込む。
「おい聞けっ童子切安綱 出来損ないでも折角、七霧が、古来より妖退治を生業にしてきた七霧の血筋が手にしてやってんだから、名前に見合う働きはしやがれよっなぁー!」
得物を持つ鬼の右腕目掛けて持てる力の限り斬り付けた。
「ぶぅわぉぉおおお」
獣の咆哮が耳に届く。血飛沫のカーテンの向こう側に悶絶する鬼の姿が見えた。
しかし……片手じゃやはり浅かったか、よ。
俺の力が尽きるのと同時に、全身を包んで俺を守ってくれていた金色の結界が消えたところに態勢を整えた鬼の拳が迫って来るのを俺はただ見詰めていた。
「ちっ。ごめん、な……美九音」
お前との約束は守れそうにねぇな、もう身体が動かねぇわ美九音。
全身に奔る重く鈍感な痛みで朦朧とし薄れていく意識の中、瞼がゆっくり塞いで行く。
まだ薄っすら開いている目に、歪んで映る大きな拳を見詰めながらブチ当たる瞬間を待った。
……あん時みてぇだ時間が止まって感じる。あん時見た金色の狐(美九音)綺麗、だったなぁー。
あの夏の美九音の姿を思い出してなのか、あの世への門が開いたのか、目の前に輝き出した金色の景色に視界を覆われた。
ふっ……お前って奴っぁ、最後まで俺につき纏うんだな? まぁ……幼馴染、だしいいかっ……。
「知泰っ」
美九音……お前なのか? 違うか……幻聴まで聞こえ出したぜ。
To Be Continued
御拝読ありがとうございました><
さて次回いよいよ第一章ラスト回っ!
果たして知泰は……
そして美九音はっ!
ちょっと? 九尾な女の子8を待てっ!
お楽しみにっ!
本作品へのご意見、ご感想をくれると嬉しいかな? 嬉しいかも////
評価もお待ちしております><b