俺の可愛い嫁がネンネちゃん過ぎて生きるのが辛い 4
「御主人様。これを」
手に四角く中には円形のグニュグニュ、コリコリしたなにかを渡された。もしやこの中身がぬるぬるした感触は……“あれ”じゃねぇーか? 何方か存じませんがアリガタウ。
これで美九音を万が一にも傷つけることなく行為に勤しめますっ。
「おう、ありがとう」
んん? って誰? この声さては……紅葉っ!
「ささっ御主人様。私のことはお気になさらず続きを」
あっどうも。って出来るかーっ!
「紅葉っ、いつの間に忍び込んできやがったんだよっ」
美九音のおっぱいの感触を堪能していたことも忘れ余りの驚きにとび起きた。
「そんなことはどうでもいい。ささ早く続きを――」
ぱちっん☆
紅葉は叩かれた頭をさわさわ撫でながら、普段から無表情な紅葉はきょとんとした顔で後ろを振り返る、その後ろには見慣れた顔がまたひとり俺の視界に映り込んだ。
「ちょっと? あんたなにしてんのっ! 知くんと狐があたしより先に結ばれるのは、しゃくだけど、狐の初心でネンネが羞恥に震えるところを見たかったのにっ!」
悔しそうに歯軋りをしながら、またどこか期待に満ちた表情をした未美が紅葉の背後から頭をぺんぺん叩いていた。
ってお前もかっ!
「そうですよっ、大神さん。これからがいいところだったのですっ! 私の将来の玉の輿……、旦那様になる知泰さんの悪癖を知るチャンスだったのですよっ」
知泰さん? 浮気の一度や二度は許しますが三度目はないですよ? と頬を膨らませた波音ちゃんまでいた。
波音ちゃんとは生徒と教師という関係だけで特別な関係は無い。浮気もなにもないんだが……。
「七霧に久遠寺。私たちのことは気にするな。見ている者が多くて緊張しているなら私たちをかぼちゃだと思えばいい」
思えるわけがねぇーっ! 俺たちの営みはなんかの発表会かよっ。
「姫様っ。我らに遠慮せずに、お世継ぎを」
銀狐衆! てめぇーら妖狐の里に帰ったんじゃなかったのかよっ。
「七霧殿はバカですか」
俺はバカじゃねぇーよ。
「七霧殿に口八丁で懐柔され、姫様奪還に失敗した我らが妖狐一族の里に帰れるわけがないじゃないですか。今後、我ら銀狐衆は姫様のお傍を片時も離れず、姫様をお守りする所存」
四六時中見守って貰わなくていいっ! お傍から離れろよっ! お前らはもう国帰れっ!
「んん? 知泰、どうしたの」
どうやら美九音は緊張の余り、周囲の変化に気付いていないらしい。
「美九音、周り見てみろ」
目をしばたかせ、きょとんとして俺の顔を見ている美九音ちゃん。
そして周囲に視線を巡らせて――。
「ぎゃぁーーーーっ! あ、あああ、あんたたちっなにしてんのよっ」
「見学」 「撮影に決まってるじゃない」 「知泰さんの痴能測定ですっ」 「暇だったから」「姫、お世継ぎを」「鬼どもの襲撃を受けて家を失くしたと聞いて知の様子を見にきてみれば、あらびっくり」とそれぞれが答える。
「ぎ、銀狐衆までっ! あんたたち里に帰ったんじゃなかったの? なんで家に居んのよっ」
テヘペロ(o^-')ゞ♡ テヘペロ(o^-')ゞ♡ テヘペロ(o^-')ゞ♡ ←銀狐衆1から3。
「もっ! いったいなんなのよっ。皆して趣味悪いわよっ! 帰れっ! 今すぐウチの家から出て行けっ」
深夜だというのに元気な奴らだが、まったくもって美九音に同感である。
「仕方ないでしょ? 丑三つ時なんだから。あたしたち妖が一番活性化する時刻なんだもん」
「そ」
「そうですよっ知泰さん」
「そうだぞ七霧。久遠寺も活性化しているではないか」
未美をはじめに口々に文句を垂れる妖ども。っつーか文句を言いたいのは俺たちの方だっ。
折角、ネンネの美九音がその気になったというのに、お邪魔虫にもほどがあるってもんだ。
「あんたたち――いい加減にしろっ! ウ、ウチが知泰の始めて結ばれるんだから邪魔すんなっ」
深夜に大声出すなよ美九音。環さんたちが起きるっ。
怒髪天の美九音は尻尾をいつもの3倍にも膨れ上がらせた。
「あんたたち? 帰らないと言うならウチもちょっと本気出さないといけなくなるかんねっ」
美九音の膨れ上がった尻尾が1本から2本、3本目が現れる。そして4本目が現れそうになると――。
「姫様っ! そ、それ以上は危険です。姫様自身も我らも……」
「あっそ! でも心配には及ばないわ。ウチってば既に怒りの余りに自我を忘れているから」
「な、なななんという妖気。これでは他の妖たちも目覚めてしまいますっ。姫様の妖気にあてられた妖どもが理性を失くしてしまい暴れます」
「知らないわよそんなこと。もし妖どもが日本中で暴れまわってもGEOや七霧が始末してくれるんじゃない? その前にウチが暴れてあんたたちを葬るけど」
美九音の妖気が増すに連れ、未美たち「しまった。やり過ぎた」的な顔をし出した。
「そんなに怒ることないでしょ? ほんの冷やかしまでに来ただけだし……か、帰るわよ……邪魔してごめんね。狐」
未美が消えると追うようにして紅葉や波音ちゃん、姫子先生、そして銀狐衆は去っていった。
「美九音? お前そんなにも俺と……」
「な、なによ……。別にそんなんじゃないわよ。ふぁわ~」
美九音は「久しぶりに妖気を解放したら眠くなっちゃったわ」と言って布団に横たわった。
「もう眠いから知泰。ウチをぎゅってして寝なさい」
そう言って横になるなり寝息を立て出す美九音ちゃん。
……こいつは当分の間、色気より眠気だな、ほんとにこいつはまだまだネンネちゃんだな、と嘆息して柔らかくて良い匂いのする美九音を抱き締めて俺も眠りに就こうとしたとき、まだ手に残る美九音のおっぱいの感触が残っ――な、なんじゃこりゃ? 未美や紅葉たちの乱入騒動もあってこの瞬間まで気付かなかったけども、美九音のおっぱいが急に大きくなっていた原因が手の平の中にあった。
パット? こいつ偽乳にまでして……。
隣では美九音がスヤスヤ寝息を立てている。
バカだな、俺は大きいおっぱいが好きだけど、小さくてもおっぱいはおっぱいなんだぞ? 生粋のおっぱい聖人である俺は、そこに乳あらば一片の悔いはない。
こんなもんまで付けて俺に触って貰えるように、喜んで貰えるように悩んだ末にこいつランジェリーショップで買っていたのか。
ネンネの癖に無理しやがって……。
美九音の寝顔を見ながら溜め息を吐く。周囲の邪魔は入るし、こいつとのどきどきときめきイベントは当分先になりそうだ。
おっぱい触っただけで「ママ……こ、怖いよ。た、助けて知泰……」だもん。
可愛い女の子が嫁になって傍にいるというのに……その女の子がネンネ過ぎて生きるのが辛い。
再び嘆息しつつび、美九音の寝顔を見ながらいつのまにか俺も夢の世界へと船を漕ぎ出した。
「起きなさい知っ」
あれ? どうして? まさかこの声は……。
「知っ? いったいこれはどういうことかしら? お姉ちゃんに説明してくれるかしら」
えっ? なんで飛鳥ちゃんがここに居るわけ?
暫く振りの声で目を覚ましと、暫く振りに見る俺の姉が枕元に立っていた。
「う、うっん……なーに? 知泰……うっさいなぁ~」
寝惚け眼を擦りながら目を覚ます美九音ちゃん。お前、髪の毛がボサボサだぞ。
「っつて! あ、飛鳥お姉ちゃんっ。なんで居るのっ」
「あら久しぶり美九音ちゃん。わたくしのことをお義姉ちゃんだなんて、わたくしは認めませんよ。まさかとは思っていたのだけれど妖どもぴーちくぱーちくツイートしていた噂は本当だったようですね」
「い、言ってないっ! むかし馴染みでお姉さんとは言ったこど、お義姉ちゃんだなんてウチ言ってないからっ! 噂についての説明をするから護符を構えるのは止めてっ」
怯える美九音の前で五指の間に破魔の護符を挟んでにこりと微笑んでいる飛鳥という女は俺の実姉だ。
「詳しく教えて貰いましょうか美九音ちゃん。それに……知にもいろいろ聞かなくっちゃね? うふふ」
「お、お姉たま……なんで? こんな早朝に人の家を訪問してんの? 空気読んでくれ! っつーか夜明けまじかに尋ねてくるなんて勝手知ったる久遠寺家であってもあまりにも非常識だっ」
「知?」
「な、なんだよ……」
「そんなにお姉ちゃんを叱ってはいけません。お姉ちゃんは知に叱られると泣きたくなっちゃいます」
「も、もしかして飛鳥お姉ちゃん、知泰を迎えに来たの?」
俺の下になっていた美九音が起き上がり、ぺたんと布団の上で座って尋ねた。
「そうですよ。わたくしのブラコンセンサーが知の(貞操の)危機を直感しましたから居ても立っても居られなくて東京から飛んできましたのよ。おほほっ」
きっと文字通り式鬼(式神)でも使って飛んできたんだろうな。
「知? 新学期から夏休みの間に知の周りで起こった出来事をお姉ちゃんは粗方の事情は知っています」
「姉さん……」
「ごめんね知。お姉ちゃん助けに来られなかったですね。怒ってますか知?」
「いや別に……姉ちゃんも忙しい身だし」
「お姉ちゃんは知が心配でなりません。ですから唐突ではありますが、私と一緒に東京に行きましょう」
唐突だな! 唐突過ぎるよっ!
「ちょ、ちょっと飛鳥お姉ちゃんっ! そんな急に知泰にだっていろいろ都合があるでしょ? ガッコとか? 高校2年生も半ば、そろそろ進路のことも真剣に考えなくっちゃだし……」
「その辺は心配無用です。七霧の財力をナメめてもらっちゃいけませんよ? 一流大学にだってお金を積めば簡単入れちゃいます」
世の中に誤解されるようなこと言うなよ姉ちゃんっ!
「あら? そうかしら? お金に目が眩まない人間なんていないでしょ? 地獄の沙汰も金次第って昔からの教訓も残っているのですし、間違いはないかと思いますよ」
教訓じゃねぇーよっ! それ。ダメだ、姉ちゃんはマネーパワーを使うことに躊躇がねぇーっ!
「そ、そうは言うけど知泰の気持ちも考えてあげないと……」
「それなら問題ありません。知はシスコンですから。ちなみに妹は居ないですが、幼い頃から知は来八音ちゃんを妹のように愛でてましたね? 家族愛に飢えている知は断りません」
確かにもし姉ちゃんに泣いて頼まれたら俺は……断れねぇーかも。当主争いが始まってからの七霧の家で唯一俺の味方でいてくれた姉ちゃん。
でもはたして美九音に泣かれたら、俺は美九音を置いて行けるのだろうか……。
エピローグというか第二章プロローグ おわり。
第二章 なんてこったっ! 俺の嫁と姉ちゃんが修羅場ってるんですけどっ。(仮)
ご拝読アリガタウ。
本作品へのご意見、ご感想、評価などお待ちしていますよっ!
ではでは、第二章もお楽しみにっ!




