ちょっと? 九尾な女の子(裏) 6
力強い知泰の眼差し、決意に満ちた知泰の声、こんなにもウチを信じているという意志を感じちゃったら、ウチにはもう知泰を止めることなんて出来やしないよ。
「方法は?」
知泰に渡した御守りの秘密をウチはぽつり、ぽつりと話し始めた。
「知くんに渡した御守りの中にはウチの金毛が、大事なお毛毛が入ってんのね」
ウチの、白面金毛九尾の体毛を納めた御守り。
それはウチの妖術で持つ者の人ならざる者が発する力の気配を完全に断ちきる。
でも今のウチは完全な九尾の狐じゃない。
昔のウチとは人格、別の九尾の狐だ。
遠い遠い昔に大陸から日の国に渡り、完全転生した室町時代に討ち取られ封印され、幾度となく時代の分け目に蘇ってくたけれど、封印された九尾の狐本来の妖力は解かれてない。
ウチにはどうして前世で蘇ったウチでないウチが封印を解かなかったのかは、記憶の蓄積がないから分からないけど、ひとつだけ言えることは今のウチには壊したくない物が、人たちがいる。
今持っているウチの妖力の全てを使ってでも守りたかった。
知泰が七霧の秘術を発現したことを切っ掛けに七霧の当主争いが始まったあの夏の終わりに見た知泰は、悲しみに暮れ今にも壊れそうで夏の終わりの夕陽に今にも溶けていきそうで消えてしまうんじゃないかと思うほどに儚かった。
そんな知泰を狙うだろう妖や陰陽師から、彼を隠すためにウチの当時持っていた妖力を座敷童の力を借りて、ウチの毛を入れた御守りを作り、毛を媒体に妖術を発揮し続ける術式と、万が一にもウチが妖力を使わなければならない状況になったときのために、一時的に知泰を守る結界とウチが持っている妖刀のどれかを状況に応じて知泰が得られるように身を守れるように術式を御守りに組み込んで知泰に渡した。
今のウチのままではそのために妖術も妖力の殆ども使えなくなる代償があったけど、転生した矢先に妖や陰陽師に追われ、人間の胎内に逃げ込んで生まれ直した当時の九尾の狐を幾度とない転生で初めて助けてくれた人を、それまで恐怖と恐れ、憎しみと怒り、苦しみと悲しみ、悲鳴と嘆き、絶望を喰いって力として破壊するだけだった九尾の狐が初めてなにかを守りたいと思った彼のために、代償なんて厭わないまでにあの頃の知泰をウチは守りたかったんだ。
悲しみに暮れ今にも壊れそうで夏の終わりの夕陽に今にも溶けていきそうで消えてしまうんじゃないかと思うほどに儚かった知泰を……ウチは守りたいって思ったんだよ。
「刀かぁ」
得物が刀と聞いて安堵を見せる知泰にウチは軽く頷いた。
「で、どんな刀なんだ?」
「相手は鬼。間違いなく知くんが手にするのは童子切安綱。人間が対妖のために鍛錬して拵えた銘刀だよ」
「そうか。ありがとな美九音。んじゃまぁ行って来る」
「待ってっ……」
「どうした?」
「これ解いてって」
「駄目だ。そんな事したらお前も戦うだろ?」
ウチは静かに頭を振った。
「ううん……ウチは見てる。だって知くんがウチのために戦ってくれるだもん。……それにね? 知くんの骨はウチが拾ってあげなくちゃね」
戒めを解いて貰ったあと、そう言ってウチのために、ウチのためだけに争いを避ける知泰がまた戦ってくれる。
嬉しくて感激してウチは知泰に笑い掛け彼の背中を戦う場所に送り出した。
妖力の流れが止まった。ウチから知泰が持つ御守りに流れていた妖力の流れが途絶えた。
知泰が御守りの頸木を解いたんだ。
これでウチには少しだけど妖力が戻って来きて、小規模な妖術なら使えるように成る。
知泰、死なないでね。ウチにはあんたの戦いを見守ってあげられない、やることがあるから。
先ず人払いをしなくちゃね。
戦いが激しくなれば他の人間に気付かれて騒ぎが大きくなっちゃう。
ウチが戻った妖力で人払いと妖術で異相空間を開いて仮装空間を作る。
仮装空間の中なら、仮装された建物は派手に壊れるけど現存する建物が壊されたりしないから、思いっきり戦ってね。
でも今のウチに異相空間を開くだけの妖力が扱えるのか、ちょっと心配だけど学園に限った異相空間なら、全国に散らばった殺生石の欠片の内、近くにある物だけを集めればそれくらいの空間は自在に操れる。
ウチもどうなっちゃうかは分かんないけどね。
そのときは知泰? あんたがウチの骨を拾ってよね。
To Be Continued
ご拝読アリガタウ。
次回もお楽しみにっ!




