ちょっと? 九尾な女の子(裏) 5
目を閉じても瞼の裏に映る優しい知泰の顔がある。
素直な気持ちになれば、何時もは苛立ち憎ったらしく思う幼馴染みのことが、素直になればこんなにも愛しく思えてきちゃう。
「ほら、こっち来い」
「う、うん」
目を閉じたまま……声の方に向かって歩き出す。
見えない恐怖。
でも平気、ちょっと歩けば知泰がいるんだから……ウチ、怖くない。
でもやっぱり上手く歩けないや、緊張してるのかな?
あっ……この感触、知泰の手だ。
手を握って導いてくれる知泰に身を任せちゃおう。そうすれば知泰の胸に行き当たるはずだから……。
「美九音。顔、上げて」
普段はヘタレだけど、ウチは知ってる知泰の鍛えられた胸板は固い……でも温かくて頼もしい。
不思議ね? 今日のウチはとっても素直な女の子だ。
「……うん。こ、こう?」
知泰の手がウチの肩を掴む。
緊張で肩を小さく窄んで狐耳と尻尾がピンと立つ。
知泰の手が顎にそっと添えらる。
「ひゃぁ!? なっ、なにするの?」
ちょっと不安になって眉間を寄せる。なに? なにをするの?
「動くなよ絶対に」
知泰の息を近くに感じる。
もしかして――ちゅーしてくれるの?
「……!? ど、どど、どうぞ知泰。や、やや、優しく……しれっ」
コクリと小さく頷いて「んんー」と唇を突き出す。
次の瞬間を待つ時間が長く感じる。早く早く……。
優しくちゅーしれっ。
知泰がウチを焦らす。
少し息が荒くなってるよ? 焦らさないで……。
「と、知くん? は、早くしれっ? ウ、ウチ、こんなことしているところ、誰かに見られたら恥ずかしい、かも……」
心が――落ち着かない。
期待と尻尾を膨らませて大きく揺らしながら瞬間を待つ。
時折、不安と緊張で体に触れられると尻尾は止まりピンと立ち、根本から先っぽへと電流が奔る。
逸る気持ちを落ち着かせるために、また大きくゆっくりと揺らして暴れる心臓を落ち着かせる。
カチャカチャ、シュルシュル。
金属が接触し合う音、衣擦れの音が聞こえる? えっ! なに? なにをしているの知泰。
!? ///// こ、こんなところで? 恥ずかしいよウチ……。
そ、それにウチ、……そんなことあんたの本で見たことあるけど、……ここガッコだよ? そてにウチ、し、したことないし……ウチ、上手に出来ないよ?
で、でもでも上手に出来ないかも知れないけど、ウチ頑張ってみるから上手に出来たら、頭なでなでしてよね? あとニコニコおはよー∠(#`Д´)/プリン1ダースくらいはご褒美ちょうだいね。
「知くんてばぁー、まぁーだぁー? な、なにしてんの? まあいいけど早くしれっ?」
知泰の手の平がウチの両手首を掴んで空の方へと上げる。
そして知泰がウチの手を縛る?
あれ? ここは“知泰のもう片方の手が胸に”ってシチュエーションでしょ?
「よしでけた。もう目開いてもいいぞ」
言われて身体の不自由さに漸く気付いた。
なにこれ? なにプレイ? あんたの本で見たことあるけど……。ってこんなところで!? まぁいいっか……今日は素直なウチ。
そして知泰が背中を向けて歩きだす……っておい。
「こ、こらっあんたこれどう言うつもり? こんな可愛い女の子を木に縛りつけて、こんな自由の利かない無防備なところを、お、おお、雄に襲われちゃったらどうしてくれんのよっ! あんたウチが他の雄に襲われっちゃても本当にいいの? ちょっと聞いてんの? 変態っ」
ウチの呼び掛けに知泰が足を止めた。
「聞いてんのかっつてんのっ! 知泰」
あっ! 戻って来た。
「美九音っ今お前なんっつーた? 知泰って書いて“へんたい”って読んだろ?」
だぁーって……あんたがウチを放って行こうとするから、つい。
でもでも酷いのは知泰だよ? ウチに期待させておいて、ウチにエッチな覚悟までさせておいて、あんた逃げたじゃない。このヘタレ。
ギュッと瞼を絞って知泰を睨み付た。
「なぁ美九音? お前今の状況分かってんの」
ほえ? なに? 怒ったの? 悪いのはあんたの方じゃん。
っつーて、えぇええええええええええええええええええええ!?
知泰の手がウチに伸びてきた。
ヤダ! 初めてが学校の校舎裏なんて絶対に嫌だっ。しかも乱暴になんて絶対の絶対にヤダヤダ、ウチ初めてなんだから優しくしれー。><
自由に動かせる足でジタバタ抗議を試みた初撃で足の甲に“むにゅ”と気色悪い感触があった。
「ぎゃぁー!?」
と、知泰? あっ、しまった。 思いっきり足を蹴り上げちゃったよ、ウチ。
(´・ω・`)
人類が発する物とは思えない悲鳴を上げて悶絶する知泰の姿が目に映った。
いやぁーーーーっ!?
ど、どうしよう……ウチとしたことが男の子の大事なところを蹴り上げちゃった。
ウ、ウチは悪くないもん。悪いのはムードとかシチュを考えないあんたなんだかんねっ。
なんだか足の甲にむにゅって感覚があったけど、まさかピンポイントだったとは……しかも感触を思い出したら足の甲にむにゅって感触が残っているみたいでキモイし最悪だぁ!
暫くの間、地面を悶絶して転げ回る知泰を見ていると、少しだけ悪い気がしてきた。
あわわわわ、どうしよウチ、やらかしちゃったかも……。
だぁっーて――もし知泰の[自主規制]が使い物にならなくなったら、ウチってば一生知泰の赤ちゃんは産めないんだよ?
ああもうああもうっこんな事になるくらいなら、まだ怖くて覚悟は出来てないけど知泰が再起不能になる前に[自主規制]で[パキュ~ン]ぶち抜いてもらって[パキュ~ン]に[迸る欲望]を、そんでもって[パキュ~ン]を[パキュ~ン]に[要検閲]させてあげておけば良かったかも……。
でもでもウチまだ怖いから、たぶん無理ぽっ。(>_<)
いやいや、ごめんね。余りの衝撃映像に思わず思考回路が飛んじゃってたわ……。
てか、なんのためにダッシュで戻ったのよ、あんた? 悶えてないで早くウチを解きなさいよねっ。
なんとか気を静めようとしてるウチに、知泰が訊いておかなければならない事があると言った。
「美九音? ひとつだけ教えてくんないか?」
「あによっ」
ウチを木に縛り付けて放置プレイしようとしたあんたをまだ許したげないんだからっ。
犬歯剥き出しにして知泰を睨みつける。直ぐに許して甘い顔しちゃダメ。
「このお前がくれた御守り。気配を断つ事だけしか出来ないの?」
「……」
なにを訊くかと思えばそんなこと……そんなこと言えるわけないじゃん。
それを教えちゃったらあんた、自分の身も省みず鬼と戦おうとするじゃんバカ……。
「俺な……。お前が怯えて震えて泣いているところ見たくねぇんだ」
えっ? 今、なんて?
「……」
「今までありがとな。ずっと俺の事を守ってくれてたんだよな? だからプライドが高いお前が、九尾の狐であるお前は、あれからずっと自分の身を守るために戦う事も出来ず、堪えて堪えて気配だけを断ち続けてくれてたんだよな?」
…………。
「もういいんだ我慢しなくても戦わなくてもいい。今度は俺が美九音を守ってやるからよ」
……嬉しい。嬉しい嬉しいっ! 知泰の言葉が知泰の想いが嬉しい。
「……ほ、んと?」
揺らいじゃう……、ウチの決意が、あのときに誓った決意が揺らいじゃう。
だって知泰がウチのために頑張ろうとしてくれているんだもん。
命を掛けてまで……。
「本当だ。だから教えてくれ。この御守りは気配を断つためだけの物じゃないんだろ?」
ウチは小さく薄い唇をキュッと噛みしめ頭を縦に振った。
To Be Continued
ご拝読アリガタウ。
次回もお楽しみにっ!




