表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/130

エピローグ 前編

こんばんは

雛仲 まひるです。


エピローグ前編です。

いくしま童子に向かって今の自分のことを解いた美九音。

小学校卒業文集にかいた将来の夢。

しれっと嫁入り宣言していた美九音ちゃんの想いは知泰につたわったのでしょうか?(´・ω・`)←おい作者っ!


ではどうぞ><

 あれからまた気を失った俺が次に目覚めたのは何処かの山中で、見晴らしの良い高台に建てられた昔話の挿絵で見る藁葺わらぶき屋根の家が窓から所々に見えた。


 吹き抜けの天井に太い剥き出しの柱が見え、古めかしい造りには到底ミスマッチなベッドの上だった。


 傷は以前の様に消えていてはいるが、今回も痛みはまだ残っている。


「知泰起きた?」


 また泣き腫らしたのか幾分腫れ上がった瞼と涙の乾いた跡が、頬に残った美九音も目を覚ました様だ。


 寝起きで小さな頭に乗っている狐耳も元気なくへこたれている。


「ここは?」


「波音ちゃんと姫子先生達の隠れ里だって」


「俺、生きてる」


「うん、生きてるよ。でもあれからまた気を失っちゃうし、怪我も想像以上に酷くて今度こそ本当に死んじゃうんじゃないかって心配したんだかんねっ。だってなかなか目覚めないんだもん」


「心配掛けちまったな。ところで綾乃は無事なのか」


「うん、まぁ無事かな。間崎君が連れて行った。組織の施設でしゅを施して鬼の手から受ける浸食を押さえてくれるってゆってた。助かるかどうかは五分五分みたいだけど経過を観察して人間界に復帰させるってさ」


「もしダメだったら?」


「その時は腕を斬り落とすって、それでもダメなら排除するってゆってた」


 排除……か。つまりは殺すって事だよな。


「自業自得ってやつなのかな。綾乃は自分の弱さから憎しみから鬼に力を借りちまったあいつの咎だ。でも助かるといいな俺達の幼馴染」


「うん……」


 一度頷いた後、美九音は立ち上がり窓際に立って外を眺めている。部屋に置かれた行燈の灯りと差し込む月明りに照らし出された美九音の蜂蜜色の髪の毛が淡い光を反射して輝いて見える。


「ねぇ知泰、見て」


 外を見ながら興奮気味に声を弾ませた美九音が振り向くと窓から入り込む、弱い風に乗って美九音が何時も漂わせている甘ったるい匂いを運んで来る。


 振り向いた美九音は浚われた時に着ていたちょっと派手目の服装ではなく、薄手の白い清楚なワンピースを着ていた。


 淡い月明りが薄く白い布を透かした中に、スレンダーな美九音の肢体が浮かび上がった。


「起き上がれる?」


「なんとか、な」


 窓までは然程距離は無く、ベッドから起き上がれば直ぐそこにあるのだけれど、美九音の差し出してくれた手を掴んで起き上がり窓際に近付いた。


「あれなんだ?」


 向かいの山に小さな灯りが列を成して見える。


「あれは狐火って言うんだよ」


「聞いた事はある」


「狐火が見える時はね。……き、狐の嫁入りがあるんだよ」


「ふ~ん。何処かの狐が嫁入りでもするんかねぇ~」


「さ、さぁ~どうかな? も、もしかしたら何処かの狐が嫁ぎ先を決めたんじゃない? な~んてね……」


「そんなのもあるんだな」


「さ、さぁね? あはっ」


「騙しやがったなこの狐、痛っ……」


 不意に痛んだ足を咄嗟に庇った所為でバランスを崩して倒れそうになる。


「知泰っだいじょう――きゃっ」


 俺の体を支え様としてくれた美九音共々ベッドに倒れ込んだ。


「痛てぇ……大丈夫か美九音」


「う、うん……ウチは大丈夫。と、知泰の方こそ」


 俺を庇って咄嗟に細い体を入れ替え、クッションになってくれた美九音の体が下になっていた。


 暫く重なり合ったまま互いの顔を見詰め合った。


「と、知泰。痛いよ……」


 薄暗くてよく分からないけど美九音の顔が赤らんで見える。


 自分の顔が赤くなっていることに気付いたのか、恥ずかしそうに目を細めた美九音は、ついっと顔ごと視線を逸らしてしまった。


「悪い、直ぐ退く」


「ぅん……」


 体を起こそうとした時、美九音の体がピクンと跳ねた。


「手。……そんなに強く押さえちゃ痛いよ」


「へぇ?」


 言われて気付いた手の平に感じる布越しの柔らかい感触。……ってまさかな。


「ぁん。そ、そんなに強く押えられると痛いってゆった……」


 そのまさかだった。


「わ、悪い」


「ぅん、ちょっとくらいなら触ってもいいよ。でも恥ずかしい、かも」


「そ、そう?」


「でも凄く恥ずかしいよ……ウチの大っきくないし」


 布越しにでも分かるスベスベした感触と柔らかい感触。これって……。


 こいつブラしてねぇーじゃねーかチクショウ! って、んん? さっきいいよって言ったよなこいつ?


「でもでもその前に優しくギュってしれっー。優しくチューしれっ?」


 横を向いたまま小声で呟いた美九音は襟元に添えた小さな手をキュっと握り締め、恥ずかしさに耐えるかの様な表情と、へこたれた狐耳がなんだかとても可愛いと思った。


 そして露わになっている金色の髪が流れる綺麗な美九音のうなじを見て思わず唾を呑み込んだ。


 こ、これはっ……。


 あれ、ですよね? 大人の階段昇っちゃう18禁的なイベント発生ですよね? ここで選択肢を間違うと……。


「ねぇ早くチューしれっ」


 かっ、かか、可愛いい。 


 ちょっと皆さん、こんな可愛い生き物が存在していいのでしょうか? あれですよ、こいつは俺限定で凶悪、凶暴、理不尽を振り撒くあの美九音なんですよ。




 拝啓母さん。


 七霧 知泰17歳は、ついにチェリー卒業の日を迎えそうです。大人の階段昇りそうです。


 敬具。




「知泰?」


「美九音、本当にいい、の?」


「バカっ。改めて聞かないでよねそんなこと、……恥ずかしいなぁもう」


 ヤベェ緊張して来た。


 こう言う時って、さりげにリードするのが男ってもんだよな? 落ち着け俺、落ち着くんだ。そうこんな時こそ……。


 ガッイちゃ駄目だガッイちゃ駄目だガッイちゃ駄目だガッイちゃ駄目だ。

 ガッイちゃ駄目だガッイちゃ駄目だガッイちゃ駄目だ。Y(>_<、)Y

 ガッイちゃ駄目だガッイちゃ駄目だガッイちゃ駄目だガッイちゃ駄目だ。

 ガッイちゃ駄目だガッイちゃ駄目だガッイちゃ駄目だ。Y(>_<、)Y

 

 よ、よし……では七霧 知泰行って参ります。( ̄^ ̄ゝ


「み、美九音」


「うん。……や、優しくして、ね」


 しばし見詰め合い、やがて目を閉じた美九音に近付き唇と唇が重なr……。


「知くん~目覚めた?」


 不意に開かれる扉に驚き、ふたりして大慌てで跳ね起きた。


「……あんた達なにしてんの? ベッドの上に正座なんかしちゃって」


 俺もだけど背筋を伸ばして綺麗な姿勢の正座をしている美九音は、おまけに耳と尻尾をピンと立て身体を強張らせている。


 なんちゅうタイミングで来やがんだよっ。ノックくらいしやがれっ未美。


「ほぇ? ウ、ウチらは、べ、別にまだキスもしてないよ? こ、こここれからエッチなことするのかなぁ~とか思って緊張してたわけじゃないんだからねっ。……あわわわわ」


「キスしてたんだ狐? それで知くんとその後もねぇ~」


 ジト目で俺達を見下ろす未美。


「キ、キス、はしたかも……でもおっぱい触られたってうっとり蕩けてなんてないんだからっ。……あわわわわ」


「……気持ち良かったんだ、おっぱい」


「薄暗い部屋に男と女が二人ベッドの上。興味津々の年頃の二人になにも起こらない方が不思議」


 未美の後ろから紅葉がひょっこり顔を出した。


「ウ、ウチは知泰と『エッチな事したいなぁ~、邪魔しに来るな、なんて思ってない事も』ないんだからねっ! って、えぇえええええっ! 違う、違くて、今の『』のところはお、おお、狼が声を被せたのっ」


「知泰さん、久遠寺さん。あなた達にはまだ早過ぎますっ。もし、もしも間違って赤ちゃんが出来ちゃったら育てられないでしょ? まだ社会的地位のない学生さんなんですからねっ」 


「ほぇ? あ、赤ちゃん? ウチと知泰の赤ちゃん……きゃぁーっ! 違う違う。ウチは、ちょっとキスして欲しかっただけ、だもん……あわわわわ」


「は~ぁ、つまんない。はいはい邪魔してごめんね子狐ちゃん。皆行こ行こ。あ~もうじれったいわね。そんなに顔赤くしちゃってさ、あんたがネンネ過ぎて白けちゃうわよ」


「知泰さんくれぐれも、くれぐれも気を付けてあげてくださいね。男の子なんですからっ」


「御主人様、これあげる。ガンバ」


 紅葉がそっと近寄り俺の手に何かを握らせた。これってまさか! アレですか? アレですよね? ってなんか違う様な気がする。てかいろいろ感触的に絶対違う。


 紅葉が目配せを送りって俺に合図した。そして拳を出して親指を……人指しと中指の間からにょきっと出してウインクした。


 私グ ッ ジ ョ ブ 

      _,,../⌒i

     /   {_ソ'_ヲ,

    /   `'(_t_,__〕

   /     {_i_,__〕

  /    ノ  {_i__〉

/      _,..-'"

      /



 紅葉っお前ってやっあぁー。それなんの合図だよっそこは親指立てるとこだ。


「ねぇ知泰。ウ、ウチまだその、ね。あ、赤ちゃんとかは、そ、その、困るかも……」


「お前までなに言ってんだっ」


 くっそっ紅葉の奴なにを手渡していきやがったんだ? 私 グ ッ ジ ョ ブみたいなドヤ顔しやがって。


「怒っちゃャダ。そんなに求めないでよ。ウチね? まだママになる覚悟とか出来てないし……、でもね? 知泰がどうしてもって言うならね、ウチはいいよ? ママになっても……。ねぇ聞いてる? そ、それでね? 名前とかどうしよっか。ウチはねもう――」


 なんだ、なんなんだ? この妙に肌触りの良い感触は……。


「それにしてもあいつらは、なにしに来たのかしらね?」


「知らねぇーよ! あいつら、お前が恥ずかしがって動揺して自爆してくの見て、面白がりに来ただけだからっ」


「怒んないでってゆったっ! でもどうするの? 名前」


「えっ? なに、なんのこと名前? 誰の? ごめん考え事してて良く聞こえてなかった」


「今の忘れてっ。てか忘れなさいっ」


「え? だからなにを」


 ってか、紅葉が渡していったブツが気になって途中から「まだウチ、その――」辺りから話を訊いて無かったぜ。


「もう何度も言わせないでって言ったでしょ? 知泰の意地悪っ」


 なんだ? この手触りは……柔らかい布? 布ってなにっ~? いかん恐ろしくて見れねぇー。


「ねぇ知泰? さっきからなに大事そうに握り締めてんの? ひゃぁー! それってまさか……アレ? あんた何時もそんなの持ち歩いてたの? 何時もウチのこんなイベントに期待しちゃってたのっ? それとも他の雌となのかしら? ちょっと貸しなさいっ」


「やめろバカっ」


 嫌な予感しかしないブツを必死で死守する俺。


 だって大神 紅葉が持ち歩いてたブツだぜ? なにが出るやら分かったもんじゃねぇー。あいつのことだからきっと初心者にはお勧め出来ないエロな物に違いねぇ。


「こら知泰見せなさいっ」


「嫌だっ」


 抱え込む様に体全体で死守する俺。けど確認しなくちゃならねぇ。


 ここで選択枝キター! 


 紅葉が手渡して行ったものだからな、軽~く想像の斜め上を行くとんでもなくやばいブツかも知れねぇし、もしかしてなんでもないものかも知れねぇし、もしそうだったとしたらここで選択枝を間違えて、これ以上美九音を怒らせるのは今後の展開に響き兼ねぇー、それは凄く勿体ない気がする。


 意を決して両手にしっかり握ったブツを確認してみた。


 な、なんだと……こ、これはっ!


「おい美九音? お、お前って今、パンツ履いてねぇーの?」


 ゴキッ。キラッ (o^-')ゞ☆


 殴られたグーで殴られた。


「な、ななな、なに言ってんのあんたっ! 履いてるっ! 履いてるに決まってんじゃん」


 じゃぁこれはなに? これは確かに見覚えのある――、最近背伸びし始めた美九音の、おぱんちゅ、ストライクウィ○チーズで言うところのズボンだよな?


「でもお前ブラしてねぇーじゃん」


「ほぇ? だってこ、これは、その……ね、寝る時はウチ、ブラしないし、それに……」


「それになんだよ」


「ほらウチ一週間も閉じ込められてたし? えと、お風呂やト、トイレは借りられたけど……。その、き、着替えとかなかったし汚れてるから? す、捨てた……。ここに来て姫子先生が新しいの買って来てた自分のをくれたからちゃんと履いてるよ。……でも、そのブラは……、ウチのおっぱいに合わなくて、小さ過ぎてブラが……」


「はいっそれ嘘っ」


 見栄張ってんじゃねぇーよ。


 はっ!? いかんいかん突っ込んでる場合じゃなかった。


 こ、これって、……確かに見覚えのあるこれは、もしかして美九音が捨てたって言ってたパンツじゃねぇーの? 紅葉の奴め、なんっつー手包みパンツ爆弾テロを仕掛けてくれやがるんだよっ。


 俺、初の甘ったるいイチャイチャイベントを吹き飛ばすつもりなのかっつーの。なんだよこれなんの嫌がらせだよ。


 っつーか紅葉の野郎、ついにやりやがった。


 美九音の使用済み脱ぎ立てパンツを堪能しやがったのなっ。あの変態エロ狼っ娘メイドめっ。



 エピローグ2につづく。

御拝読ありがとうございました。


本作品へのご意見、ご感想、評価などありましたら、お聞かせくださるとありがたいです。


最後まで完読してくださった皆様へ

ご面倒と思いますが、今後の作品向上になればと考えておりますので、宜しければご協力くださると嬉しいです。


次回っ! いよいよラスト1話となりましたが、お楽しみっ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ