マジで! キュートな女の子 7 最終話
こんにちは。
雛仲 まひるです。
先ず最初に本作品に出会ってくださり、ここまでお付き合いくださいました読者様に御礼申し上げます。
アリガタウ。
さて、本作品もいよいよ最終話となりました。
最後までお楽しみいただけると嬉しいですよ^^
ではどうぞ><
どれだけの時間、気を失ったのか気が付けば城内のどこかの部屋に寝かされていた。傍らには心配そうに綾乃が顔を覗き込んでいる。
「知ちゃん気が付いた?」
「あ、やの……」
「ごめんね? 私嫉妬してたんだ。ずっとずっと知ちゃんとみくちゃんに、みくちゃんの才能に、知ちゃんに好いてもらっえてるみくちゃんに……」
「違がう、あいつは、何時も一生懸命だ。だれ、っ……よりも、努力、して、頑張ってたん、だ。あいつは、泣き虫、で……その、くせ負けず嫌い、だからな」
「酷い事しちゃったね私……、許してなんて貰るはずないよね。えへへ」
……。
「いいぜ許してやる」
「と、知ちゃん……」
「きっとあいつ、もこう言うさ「はぁ? そんなの当たり前じゃん。ウチら幼馴染でしょ」ってな」
「知、ちゃん……ありがとう。うっ、ううっ……」
「バカ、泣くんじゃねぇーよ。っつーか外がやけに騒がしいな」
「うん、きっと今、みくちゃんが戦ってるから」
大地が悲鳴をあげている音が聞こえ、痛む体を無理やり起こそうとしたが動けず、綾乃に支えてもらい外の様子を窺った。
城外では美九音と鬼の死闘は既に始まっていて、何処かしら戦う美九音が楽しそうに見えた。
鬼の野郎はもうボロボロになってるのに美九音の奴は容赦する様子はなく、弄んでいる様にも半妖形態とはいえ、久しぶりにそこそこ満たされた九尾の妖力に歓喜し小躍りしている様にも見える。
でも……。
「……あいつ。行ってやらなきゃな。あいつが泣いてる。――っ」
はっ!? 俺は美九音の言葉を思い出す「でも約束は果たしてね? ウチはきっと知泰を忘れちゃうから……」約束を果たせ。
つまりは“殺せ”と言う事かよ美九音。
あんのっ馬鹿野郎が、俺がそんな事するかよ。それに忘れさせたりはしねぇーよ、絶対に俺の事を。
っつーか勝手に忘れやがったら、お前の貧相な乳揉みしだいて思い出させてやっから覚悟しとけっ美九音。
てか俺、一度もあいつのおっぱいさわったことも揉んだことないんけど……。
「なぁ綾乃。頼みがある」
「なに? 知ちゃん」
「俺を、美九音のところまで連れて行ってくれ」
「嫌っ。……そんな体で戦いに巻き込まれでもしたら知ちゃんが死んじゃう。だから嫌だよ。みくちゃんなら大丈夫、そうでしょ? 知ちゃん」
「頼む綾乃っ。俺はあいつを――美九音を殺したくねぇんだ。連れ戻してやりてぇーんだ。あいつの今の生活に」
いや違うか俺はあいつを……。
「はぁ、もう……。ほんと知ちゃんは昔と変わってないね。優しくて自分の事より他人の事ばかり優先して、そして無茶ばかりして……、昔からそう。そして最後には自分が傷付いちゃうのになにも言わなくて……。でも私、きっとそんな知ちゃんを好きになった、そんな知ちゃんだから好きだったし今でも好きなのかもね。そうだね、みくちゃんもきっとそうだと思う。……いいよ分かった連れて行ってあげる。その代わり約束して? 生きて帰って来るって、みくちゃんを連れ戻して来るって、私、みくちゃんにもちゃんと謝りたいから」
「応うよ、任せろ」
「あはははっ様ぁないわね? いくしま童子。流石は四天王に入れなかったゴミだけの事はあるわね」
「っ、やめ、ろ、やめてくれ九尾。これ以上、は俺が死んでしまう――」
「はぁ? なに言ってるの今更。ほんと情けないわねぇー。あんたそれでも鬼の一族? 馬鹿言ってんじゃないわよ。ウチを、九尾の狐を殺そうとしたくせに命乞い? 寝言は寝て言いなさい」
「ひっ」
「破壊してやるわあんたを。そして全てを、人間界も妖界もみんな、みんな壊す。恐怖に震える者達の顔は蜜の味、嘆く悲鳴は最高のメインディッシュだからね。ウチがこの白面金毛九尾の狐の気の向くまま、そして気が済むまで、ウチの体の中心から、心の底からどうしようもなく湧き上がってくる破壊衝動を満たすまで飽きるまで治まるまでね。あははははっ、もうお前を甚振るのには飽きたわね。もうあんたは消えなさい。いくしま童子」
「ゆ、許してくれ、殺さないでくれ。九尾」
「あん? 九尾? 随分舐めたよう呼び方してくれるじゃない?」
「九尾様、玉藻前と呼べばいいのか?」
「うーん。なんか違う? 最近までもっと違う呼ばれ方をしていた様な……。なんだろ?」
「なんでもする。九尾様の為に、なんでもするから、許してくれ殺さないでくれ頼む」
「はぁ? 却下に決まってんでs――なっ!?」
「美九音っ!」
俺は痛みを堪えて美九音を後ろから抱きしめた。
「誰だお前はっ」
「美九音っもういい、もういいから止めろっ」
「貴様っ……は、誰だっ。――ウチは九尾、妖の王九尾の狐だ気安く触るな人間風情がっ。!? ……っ」
「七霧貴様っ! よくも俺の腕をっ。そして九尾様に抱きつくとはなんという無礼者。九尾様。こいつは俺が殺す」
「うがぁっ!」
いくしま童子に引き剥がされ、地面を転がる。
「ぐはっ!?」
継いで腹を蹴られ、更に転がる。そして踏み付けられ動きを封じられた。
「み、美九音っ。……もういいもういいんだ。そんなに壊したければお前の気が済むまで壊せ、好きなだけ気の済むまで暴れてもいい。美九音、お前が満足したその時、俺がお前を止めてやる約束通りに。だけどな俺を忘れちまう事だけは許さねぇー」
「うるさいぞ人間めっ。九尾様の御前だ。喋るな」
「……人間よ。よくもこのウチ、九尾の狐を気安く抱いてくれたものね? ウチをギュってしていいのは知泰だけなんだからね。 ……? あれ? ウチ……今なんて?」
ふっ。良かった今ならまだ間に合うかも知れねぇー。
「貴様っなにを笑んでいる」
「……っせーよ。鬼っころ。足どけろやーっ」
いくしま童子の足を掴み、出せるだけの力を振る絞って持ち上げ払い除ける。
そして立ち上がり、九尾の妖力に翻弄され人間として育ってきた自我を忘れ、我を失い暴れ回っていた美九音をギュッと抱き締める。
「は、離せっこんのっ人間め」
「美九音っ。俺を、俺を忘れてんじゃねぇーよ」
強く強く抱き締める。
「離せ人間、――っ、離、しなさい、とも、ひろ……」
「っつーかなんだよお前安心したぜ? 何時もの美九音と変わりねぇーじゃん。身勝手で傲慢で我が儘で傍若無人なお前は、世界の代わりに何時も俺の精神と体を破壊しようとしてたもんな? 俺はそんなお前が嫌いで嫌いで仕方ねぇーよ。お前なんてさ、嫌いだけど大っ嫌いだけど、でも俺を勝手に忘れちまうことだけは絶対に許さねぇーからなっ」
美九音の眼を見詰めて俺は本心を言ってやった。
「と、と、もひろ……」
「お前ってばさ、俺の事なんて大っ嫌いだろ?」
「それは……、そ、それ……ち、違、くて。ウ、チは、ウチは……」
「俺はお前なんて大っ嫌いだぜ?」
「そ、そんなのャダ……ウチ、ウチはね? ……ウチが知泰の一番じゃなきゃヤダっ! ウチしか見ちゃヤなのっ」
禍々しい光彩を放っていた美九音の眼が、何時もの愛くるしい赤い眼に戻り始め、その眼からは涙の雫が流出している。
「俺はお前を決して忘れたりはしねぇーよ。例えお前が九尾の狐そのものに目覚めようとも、どんなになろうがなにも違がわねぇー。美九音は美九音、俺の幼馴染に違いねぇんだからな」
そうこいつは、ムカつくほど可愛くて憎々しいほど愛らしい俺の幼馴染の女の子だ。
もう一度、美九音を強く抱き締めてやる。
「……ともひろ? 知泰はウチのこと大事?」
「バーカ言えるかよそんなこと」
恥ずかしい。
「うぇ~ん。そんなにウチを苛めないでよ知泰~ぅ」
霧が晴れた様に禍々しさが消え、胸元で泣き咽ぶ美九音は時折見せる甘えた時の美九音だった。
お帰り美九音。
我を取り戻してくれた美九音は腕の中で縋る様に項垂れ、何時も凛々しく立てている耳をへこたらせて、御自慢の尻尾立て緊張させながら、上目遣いで俺を見詰め不安気に尋ねる。
「知泰? ウチのこと……、大っ嫌いってほんと?」
「さぁな、でもお前って俺のこと嫌いだろ? それも大っ嫌いだろ。何時も我が儘ばっか言うし殴るし蹴るし悪態ばかり吐くし」
「そ、それはっ……それはっ、ね――、違くて、うぅ……もう知泰のバカっ! あんまり苛めちゃャダ……。ねぇ? ウ、ウチのこと、ほんとにほんとに嫌いそれとも大事?」
「教えてやらんっ」
そう言って美九音の顔を覗き込み――。
「!? ……ぅうん、ぅん…ふわぁ、あっ」
そのまま愛らしい小さな唇を奪ってやった。後が怖いから軽く触れて離すへたれな俺だけど。
「バ、バカっ。ば、ばば、場所を考えなさいよ、ね……。も、もも、もっと雰囲気のある場所が良かった、かも……」
なに言ってんの? お前だってここで俺の唇を奪いやがったくせによっ。
ザマァァーバーロー。
「あのぅ……、九尾様? 俺は助けて貰えるのか? 逃げていいのか?」
美九音に散々に痛めつけられたいくしま童子が、美九音とイチャイチャしているところを邪魔してきやがった。
「はぁ? あんたまだ居たの。どうでもいいけど邪魔しないでよねっ、今取り込み中なんだからっ」
「では、このまま逃げても?」
「ウチの気が変わらない内に、さっさとどっか行っちゃいなさいよっ」
「はいっ。仰せのままに九尾のお嬢さん」
「はぁ……。いくしま童子?」
「はいっ」
「いい? よく聞きいてなさい」
「はいっ。九尾のお嬢さん」
「さっきから九尾九尾ってうっさいのよっ! あんたにウチの事を教えたげる。ウチのパパは久遠寺 環。赴任中の大学講師兼家業の久遠寺稲荷神社の神主さん。ママは久遠寺 小五音。スーパー安得のパート兼久遠寺稲荷神社の巫女さん。久遠寺 来八音はウチの可愛い妹で今は赴任中のパパと一緒に上京している中学2年生」
「……は、はい?」
「そしてウチの名前は久遠寺 美九音。小学校の卒業文集に書いた将来の夢は七霧 知泰君のお嫁さんになること。現在16歳の現役女子高生兼巫女さん見習いのちょっと九尾な女の子よっ! 分ったかっ? よーく覚えておきなさいよねっ。分ったらさっさと消えなさいっ」
「はいっ」
こいつこんな状況でなに自己紹介なんてしてんの? ぅんとにお前って奴は面白い奴だよ、お前と居ると飽きねぇーわ。
ボロボロの体を引き摺っていくしま童子は去って行った。
「さってと……。俺達も帰るか美九音」
「うん」
さっきまでのへこたれ、甘えていた美九音は何処へやら、なんだか分からんが元気一杯の返事が返ってきた。
まぁ……いいか。
美九音と綾乃の肩を借りて外に出る。そこにはいくしま童子一味との戦いを終えた知った顔があった。
「知くん生きてる?」
「大丈夫ですか知泰さんっ。しっかりしてくださいっ」
「御主人様、大丈夫?」
「知泰君お疲れ。大丈夫ですか?」
「知泰お兄ちゃん、美九お姉ちゃん。お帰りなさいです」
良かった皆無事で……。ってあれ? 景色が歪んで見える。
「と、知泰、大丈夫っ? 死んじゃヤダよぉー。ウチを置いてかないでよね? 知泰、ねぇ知泰ってばぁー」
耳元でぎゃぎゃー喚きやがってうるせぇーよ美九音。
俺は疲れてんだ、それに体もあちこち痛ぇーんだから、耳元であんまり騒ぐんじゃねぇーよ眠れやしねぇーじゃねぇか……。
「ウチを置いて勝手に死んじゃダメなんだからっ、絶対許さないかんねっ」
「……ああ、分か、ってるっ、て――」
「と、もひ、ろ? 知泰っー!」
幼馴染に怒鳴られる声が遠のいていく。美九音、もうお前の声、あんまり聞こえねぇーよ。
そして俺はゆっくりと静かに目を閉じた。
「知泰? ねぇ知泰ってば……。起きなさいよっ、目を開けて、よ。うぅ……」
「狐。……もう知くんをゆっくり休まさせてあげよ、ね?」
「七霧君」
「御主人様、安らかに」
「七霧……」
「知泰さん。うっ……」
「知泰お、兄ちゃん。うぇ~ん」
「知泰のバカ……。ウチを置いて死んじゃャダってゆったじゃん。帰って来なさい、帰って、来てよ……。バカーっ」
バシッ☆
……。
「おいっ! おまいら勝手に殺してんじゃねぇーよっ」
っつーか美九音よ。お前は何故に俺を起こすときは何時もビンタなんだっ。
「!? とも、ひろ?」
ズ、ズズズッ。
美九音、鼻水啜るのはいいがな、可愛い女の子が汚い音出してんじゃねぇーよ。お前はメインヒロインなんだぞ。
「ふぇ~ん。……知泰の、知泰のバカバカっ! ほんとに死んじゃったと思ったんだかねっ」
胸に飛び込んで泣いている美九音の頭を撫でてやる。
美九音はくすぐったそうに狐耳を忙しなく動かし、自慢のふわふわ尻尾を左右に振っている。俺は美九音が落ち着くまで頭を撫でてやった。
暫しイチャイチャしている内に、落ち着き泣き止んだ美九音が俺の胸から離れ、じっと俺の目を見詰めてこう言った。
「……お帰りなさい知泰」
心配して泣いてくれ、生きていることに「お帰りなさい」と言ってくれた俺のちょっと? キュートな九尾の幼馴染に俺はこう答えたのさ。
「ただいま美九音」ってな。
狐の嫁入りいちっ ちょっと? 九尾な女の子 おわり。
次回っ! おまけというかエピローグ前編。
御拝読ありがとうございました。><
おおよそ一月に渡っての御拝読ありがとうございました。^^
そしてお疲れ様でした。
至らない部分も多く、皆様にはご迷惑もお掛けしましたが、
最後まで付き合ってくださって、嬉しい限りです。f^^
本作品は一応の完結を迎えましたが、感謝を込めておまけというかエピローグを用意しておりますのであと2話ほど、お付き合いくださいね^^
ではでは。本作品をご愛読くださっ皆様、本当にありがとうございました。
応援くださった皆様のお陰で、作者も楽しく連載をすることができました。
本当にありがとうございます。><
今後の励みにまた向上に本作品へのご意見、ご感想、評価をお持ちしております。
そしてお気に入り登録くださった皆様、大変励みになりました。^^
ではでは。
エピローグをお楽しみにっ! ><b
雛仲 まひる。




